大腿骨頚部の拡大率測定Magnificationy Of Femoral Neck
報告者 放射線科 桑原
目的
股関節の手術の一つであるTotal HIP Arthroplastyにおいて人工骨頭のサイズを決め
る際、股関節の一般撮影の写真が大きな決め手となる。
股関節からフィルムまでの間隔による拡大率を算出し、FCRの画像構成の機能を用いて
被写体と同じ大きさに近づける法を検討する。
 
原理及び概論
股関節撮影のIP(イメージングプレート)の設置は二通りある。
(1)IPを臥位の撮影台に挿入する場合(通常)
(2)IPを患者の下に直接敷く場合(Ope後・救急時・ポータブル)の二つである。
※以下の文章からは(1)をブッキー撮影、(2)をグリット撮影とする。
(1)の場合は(2)に比べて、被写体からIPまでの間隔が大きい分、拡大率が大きい。
(2)の場合でも被写体からIPまでの間隔があり、拡大している。
そこでCTで股関節を撮影した数例より、大腿骨頚部骨頭の中心までの距離を測定して
平均値を求めた。その結果9cmであり、この値を基礎的なデーターとして実験を進めていく。
 
方法
<1>針金により大腿骨頚部の模型を作成。測定線ABCを設定した。この模型図をFig.1とする。測定線の長さをTable.1とする。
<2>IPを撮影台に挿入。模型を高さ789101112cmの所に設置した。各高さでブッキー撮影し、測定線の長さを計測した。この結果をTable.2とする。高さの調整は厚さ1cmのアクリル板で行った。測定線の計測は、100%表示の写真で行った。
<3>IPの上に直接 模型を高さ789101112cmの所に設置した。各高さでグリット撮影し、測定線の長さを計測した。この結果をTable.3とする。高さの調整は厚さ1cmのアクリル板で行った。測定線の計測は、100%表示の写真で行った。
<4>12より縮小率を求め、等倍サイズと考えられる画像構成で写真表示を行い、測定線な長さを計測した。縮小率の表をTable.4とする。結果をTable.5とする。
※等倍サイズ=100%画像表示×Table.4の縮小率
 
使用機器
FUJI FCR systemFUJI MEDICAL)・FCR 3000(本体)・DMS画像表示装置HI-C654 IDターミナル
X線高電圧装置:UD150L-RU(SHIMADZU)
200kHU回転陽極X線管装置:サークレックス0.6/1.2P18DE&38DE-80 (SHIMADZU)
X線撮影テーブル:BK-100(SHIMADZU)
自動可動絞り:R-30
アクリル板(厚さ1cm 30cm定規
 
結果
Table.1各測定線の長さ
測定線
長さ(cm)
A
5.8
B
2.7
C
10

 
Table.2 ブッキー撮影における測定結果
高さ
(cm)
測定線 測定線の長さ
(cm)
実物との差
(cm)
拡大倍率
()
平均拡大倍率
()
7A6.4+0.61.11.12
B2.8+0.11.03
C11.4+1.41.14
8A6.4+0.61.121.14
B2.8+0.11.03
C11.6+1.61.16
9A6.5+0.71.141.16
B2.8+0.11.05
C11.8+1.81.18
10A6.6+0.81.14 1.17
B2.9+0.21.07
C11.9+1.91.19
11A6.7+0.91.161.18
B2.9+0.21.07
C12+21.2
12A6.8+11.171.19
B3.0+0.31.11
C12.1+2.11.21

Bの拡大率が小さいので、B1.1以下のときはACのみの平均値
 
Table.3グリット撮影の測定結果
高さ
(cm)
測定線 測定線の長さ
(cm)
実物との差
(cm)
拡大率
()
平均拡大率
()
7A6.1+0.31.051.07
B2.701.0
C 10.85+0.851.09
8A 6.15+0.351.061.08
B2.701.0
C11+1.01.1
9A6.2+0.41.071.09
B2.701.0
C11.1+1.11.1
10A6.3 +0.51.091.11
B2.8+0.11.03
C11.2+1.2 1.12
11A6.3+0.51.091.11
B2.8+0.11.03
C11.3+1.31.13
12 A6.4+0.61.11.12
B2.8 +0.11.03
C11.4+1.41.14

Bの拡大率が小さいので、B1.05以下のときはACのみ
 
Table.4 100%表示に対する実際の模型の縮小率
高さ

(cm)
ブッキー撮影(倍)
グリット撮影(倍)
7
0.89
0.93
8
0.88
0.93
9
0.86
0.92
10
0.85
0.9
11
0.85
0.9
12
0.84
0.89

 
Table.5 ブッキー撮影時の等倍サイズと考えられる写真表示と実物との比較
高さ
(cm)
測定線 測定線の長さ
(cm)
実物との差
(cm)
7A5.7 -0.1
B2.5-0.2
C10.2+0.2
8A5.7-0.1
B2.5-0.2
C10.2+0.2
9A5.65-0.15
B2.5-0.2
C10.1+0.1
10A5.7-0.1
B2.5-0.2
C100
11A5.7-0.1
B2.5 -0.2
C10.2+0.2
12A5.7-0.1
B2.5 -0.2
C10.1+0.1

 
Table.6 グリット撮影時の等倍サイズと考えられる写真表示と実物との比較
高さ
(cm)
測定線 測定線の長さ
(cm)
実物との差
(cm)
7A5.7 -0.1
B2.5-0.2
C10.2+0.2
8A5.7-0.1
B2.5-0.2
C10.2+0.2
9A5.65-0.15
B2.5-0.2
C10.1+0.1
10A5.7-0.1
B2.5-0.2
C100
11A5.7-0.1
B2.5 -0.2
C10.2+0.2
12A5.7-0.1
B2.5 -0.2
C10.1+0.1

 
 
結論及び検討
等倍サイズと考えられる写真表示を行っても、 Table.5.6に示したように実物との差が0の場合もあれば+・−の時もある。これには幾つかの点が考えられる。
X線束の広がりが有り、垂直に入射すれば拡大は少なく、斜入すれば大きくなる。
・被写体が大きい程、拡大が大きい
その為、各部分の拡大率が同等でないので画像処理をしても全く等倍の写真表示することは、困難である。しかし、Table.4における各高さにおける縮小率を用いた画像構成を行えばアナログ方式より、等倍に近い写真表示をすることが可能であるということが今回の実験で明らかとなった。
1998.1



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