森林(特に人工林)・木材関係者必携の書「不況の合間に光が見えた」・遠藤日雄著 平成22年7月1日(J-FIC・日本林業調査会の本)新規発売


森林問題・間伐・国産材住宅・地域木材の利用などに関心がある市民・消費者・学生さんにとって必読の書と考えます。
定価:2,000円(本体1,905円+税)



不況だ、不況だという声が巷に満ち満ちています。また、長年にわたり、スギやヒノキを植林し、大きくなったら世の中の役に立つことを夢見て来た人達は、折角育った木が売れなくなってしまった現実に愕然としてもう何年過ぎたでしょうか。
失われた20年は、日本の経済全体についてもいわれますが、日本の林業についてもそっくり当てはまるといえます。
では、今回刊行の本は、どこに特徴があるのでしょうか。著者は大学教授ですから、世間からみれば、いわゆる学者の一人ということになります。この本を通読して感じることは、著者が並々ならぬ決意を持って行動する学者として各地の現場に飛び込み、問題点を解明しようとしています。
その点にもっとも共感を覚えるものです。
著者が声を大にしていうように、霧が晴れるのを待っていてはいけないということであり、名状しがたい閉塞感が充満している育林や木材生産の現場に新風を吹き込むため、政治家も行政官も一般市民・消費者もマンネリ化した論評や政策から脱出し、皆が一体感を持ち、市民も舞台に登場可能な仕組みの実現、簡単にいえば、全員参加型のシステム作りを示唆しているものと読み取りました。
もう一言つけ加えるとすれば、この本には、林業・木材のプロを自認する人達や行政に携わる人たちが興味を持ち日頃議論の対象にしている事柄が盛りだくさんに並んでいますが、これからの日本社会において、特に森林や林業について、市民や消費者がプロレベルの域に到達することによってはじめて、ほんものの森林大国といえるようになるでしょう。先ず本書を熟読することが、新たな思考や行動の起点となると思います。

森林塾では、2010年の6月例会の際に、参加者の皆さんには7月、8月は夏休みとし、この間それぞれが、ちょっと昔風ですが、思い思いの武者修行をして、秋の例会には、成果を発表してもらいたいとお願いをしてあります。
現場に飛び込めなかった人には、新著『不況の合間に光が見えた!』を精読され、今後どのように活かせるかについて述べていただきたいと思っています。
(以上、森林塾代表 小澤普照 記)


書籍の内容(もくじ)
(注) 縦書きを横書きにするなどの変更を加えています。

はじめに  霧の合間に何が見えるのか?

1章 大手住宅メ−カ−の国産材シフトが始まった

タマちゃん・キムタク・国産材

構造材にはムクでなく集成材を採用

フル稼働に入った量産工場、中には4交代も

大手住宅メーカーが一斉に国産材を採用

国有林と大型量産工場が大きな役割

主人公と主人公の「影」

2章 「束の間の国産材時代」から見えたもの

国産材シフトの背景にあるもの

10年間で「国産材県」が倍増

2007年に「束の間の国産材時代」を実現

日本に責任はない!!

新たな変化は2006年秋に起こった

特定品目だけが値上がり、スギは蚊帳の外

ロシア材に依存してきた日本の合板・製材業

世界的資源インフレと膨大な木材需要の発生

強烈なチャイナ・インパクト

資源ナショナリズムの兆し

木材が第二次世界大戦の引き金に?

スギ立木価格が17年ぶりに上昇

3章 大型化する国産材製材工場

世界経済同時完全好況をもたらしたもの


世界レベルで製材規模拡大

日本と欧米の違い

欧米システムを導入した佐伯広域森林組合

製紙用チップに依存しないビジネスモデルが必要

ラミナ挽き量産工場の台頭

6万立米以上の国産材製材工場が3倍に

 
「スギ中目材問題」 の新しい解決方法

 規模拡大が進んだ背景は?

スギ芯持ち柱角のKD化にメド

4章 充実する森林資源を使いこなせるか

深刻化するスギ大径材問題


太くなっても価格は上がらない


大径材の需要拡大にチャレンジ


小径木利用の可能性

規模拡大でA材価格はアップしたのか?

合板・集成材用のB材丸太価格が倍に

東欧・ロシアが台頭してきた欧州産地

H・シュバイクホファー社の対日輸出戦略

集成野縁を日本に大量供給

スギのFlLVL野縁で対抗

中小規模製材業者が生き残る道は?

卜−センの「母船式木流システム」に注目

乾燥しやすいスギ、製品化に適しているスギが選ばれる

原木市売市場の新しい役割

丸太をトラックに積んだまま材積を測定


5章 山側が解決すべきこと

「見える手」と「見えざる手」


外材は上がってもスギは音なし

「見えざる手」を歪める再造林放棄

私有財産処分に追い込まれる現実

価格が下がるほど生産量は増える

15000円/立米が分岐点

だぶつく丸太と製材品

素材生産量の45割が「官製伐採」

長伐期とチョーバツキ

1980年で役物バブルが崩壊

再び外材依存時代に突入か?

「正義の法」としての森林法

市町村長に与えられた強い権限

本当のルールブックは市町村森林整備計画

普通林では100haの皆伐が許される?

大分県が独自に伐採面積の上限を決める

日本の林業は産業ではない

「需要と結びついた伐採特区」構想

山に金を返せる仕組み

がんばろう国産材 


6章 不況という霧の先にあるもの

丸太消費量5万立米以上は九州だけで12工場


スギ中目材丸太が15000円/立米に上昇

柱取りから中目丸太へ、プライスリーダーの交代


間柱とラミナの互換性が加速

国産材製材規模拡大が丸太価格上昇につながる

宮崎は生産性がアップ、秋田はダウン

高い丸太、安い製品を技術革新でカバー

新たなビジネスモデル形成の気運

素材増産体制の構築が急務

「束の間」から「真の国産材時代」 へ

あとがき


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