平成14年6月情報
Photo by Fusho Ozawa
中国の経済活動の発展ぶりについては周知のことであり、住宅建設についても正にブームという状況についても最近わが国に紹介されるようにようになってきています。
ここ15年ほどの間に10回ほど中国を訪問しましたが、個人住宅の建築状況の急激な変化に気づいたのは、昨年(平成13年)9月上海から浙江省にかけて旅をしたときでした。
上海から高速道路で南西に約3時間かけて、浙江省臨安市までのドライブで目に映ったのは、上海郊外から農村部にかけて軒を連ねる3階建ての大型住宅群でした。
たまたま今年の6月、国際モデル森林のワークショップが臨安市で開催され、再訪する機会を得たので、今度こそ詳しく見たいものと考えて旅をしました。
その結果、おおよその目的を達することが出来ましたので紹介します。
現在、中国の都市部、特に沿海部の都市ではアパート、マンションの新規建築が盛んですが、これらは既設のアパートに比べて格段にデザインも向上し、大型化が図られています。
戸建てを含む、年間新規着工数は明確ではありませんが、概ね500万戸といわれる数字について、尋ねると、それ以上ではないかとの答が中国人から返ってきます。
都市郊外から農村部にかけては戸建て3階建てが多くみられます。2階建てもあるが3階建てが好まれているようです。
先ず臨安市周辺の住宅の写真をご覧いただきます。
建築中の住宅、煉瓦造り、地震があるところでは鉄筋コンクリート造りとのこと
臨安市は人口50万人ほど、森林率は80パーセントを超える森林、林業都市です。
写真の住宅のすぐ後ろに山地林が見えるように完全な山村地帯です。
平地部の農村部でも基本的には同様の住宅ですが、ややデラックスな造りになっているようです。
以下の写真は市街地あるいは市街近接地域の住宅です。
3戸連結型です 2戸連結、4戸以上の連結もあります
市街地の新しい集合住宅
建築現場
臨安市で開催の中国森林風景博覧会(2002.6)での住宅のPR、2階建て、
延べ240平方メートル、建築費80万元(1280万円)との説明
次に上記写真の住宅と直接関係はありませんが、3階建て住宅の間取りなどはどうなっているかということに興味がある方のために平面図の一例を示すことにします。
このような大型住宅は、もちろんハイクラスではありますが、沿海部においては、全然珍しいものではないことを付け加えておきたいと思います。
1階平面図
2階平面図
3階平面図
この設計では、1階は客庁、接待室、餐庁(食堂)などで構成され、寝室(臥室)は2階に3寝室となっていますが、1階、3階にも寝室を配置し、4または5寝室とする場合もあります。
一人っ子政策の筈なのに何故かと思う人もおられるでしょうが、老夫婦同居のケースが多く、これに両親、子供1人の5人家族が標準といえるとのことです。
これからは一人っ子同志の結婚ということになってくると推測されますが、その場合はどんな家族構成になるのでしょうか。
ところで、3階部分は生活にゆとりをもたらす空間であることがわかります。
活動室は、カラオケ、麻雀などが楽しめます。
工作室はパソコンなどをおいて仕事部屋として使われます。
猛烈な経済発展の中国では夜も自宅で仕事という人も多いようです。
もちろん書斎を寝室とつないで設置するケースもあります。
健身庁はもちろん健康保持のための空間で太極拳などが行われるとのことです。
これで3階建てブームの謎が解けましたが、何故こんなに建築ブームが起きたかということです。
その答は、今や中国社会は完全なローン社会になったということです。
今まではお金を貯めてからいえをつくるということであったものが、将来の収入を当てにしてローンを組むことになったということです。
また外観は立派ですが、内装などはこれからという声が聞かれました。
内装等の経費は新築費と同等程度は必要といわれています。
木材需要との関係では、駆体には木材は使われませんが、床、家具等には木が好まれているので今後の膨大な需要が見込まれます。
ドア枠も当面はプラスチック製で我慢している人が多いとのことですが、今後木製に変わっていくものと思われます。
公務員のアパートも、ローンと補助金で、個人所有への移行が円滑に実施されたとの話もきかれました。