イギリス便りNo4



御無沙汰しております。ロンドンの佐藤万理です。大都市ロンドンはイギリス内でももっとも気温が上がり、2年前にはほとんど知られていなかった「ヒート・アイランド」という言葉も一般に定着してきた昨今です。

しばしば小澤様のサイトにお邪魔させていただいていたのですが、なかなかメールを書く時間がとれず、貴サイトのWWWでの数々の受賞、また「木のすべて」の学校図書館出版賞受賞に対するお祝い(と申してははなはだ僭越ですが)のメールが遅れてしまいました。ここに謹んでお祝い申し上げます。

「木のすべて」は、貴サイトに掲載された表紙だけ拝見しても大変魅力的で、実家に頼んで送ってもらうつもりです。日本人と樹木・森林・林業との関わり合いについて理解を深め、機会あるごとにこちらの人々に説明できたらと思います。

当方、今年9月からArboriculture(日本語ですと何と訳すのでしょうか?樹木専門の園芸といった感じでしょうか?)の2年間のディプロマコースに通うことになり、イギリスでの生活の後半で、樹木のことを更に勉強したいと思っております。授業の内容にはチェーンソー講習や実際に木に登る講習も含まれていて、少々足がすくんでおりますが、笑顔で前向きに乗り切れればと思っております。

明日は、Woodland Trustという森林保護団体のローカルグループのミーティングに参加して、どのような形で自分が関われるかどうかを見つけてこようとおもいます(もっとも、9月からのArboricultureのコースはフルタイムなので、フリーになる時間がすくなくなるのですが)。

さて、廃校舎利用のコーナーで、伊津野様の「かけこみ寺」案、大野様の「フリースクール」案を拝見しました。イギリスでは日本の「サラリーマン」については残念ながらネガティブな印象がありますが、一方日本学校教育については公文式をはじめ平均レベルの質の高さが肯定的に受け止められています。

今後、日本の教育制度がますます多様化していくならば、フリースクールにある種の付加価値をつけると、「落ちこぼれの子どもたちが行くところ」という一般の印象が転じて羨望の対象になるかもしれない、と思いました。

たとえば、廃校の敷地内の一角をワイルドライフ・ガーデンにして、子供たちにレイアウトから植える植物の種類、製作およびその後のメンテナンスまでを任せれば、大変意義のあるプロジェクトになるのではないでしょうか。

ワイルドライフ・ガーデンを作るためには、どの虫がどの植物を食べ、どの鳥(哺乳類)がどの虫を食べるか、というような、その土地の動植物に対する深く広範囲な知識と理解が欠かせません。池を作成するかどうかも、その土地にどのような水棲生物が住んでいるかを知る必要があります。

また、たとえば当方もかかわりのあるイギリスのBTCV(British Trust for Conservation Volunteers)等の海外の保護団体と夏期などにボランティア・ツアー(エコ・ツアー)を企画し、たとえばイギリスからのボランティアを受け入れ、子供たちと一緒に校舎や周辺の里山の保全活動をしてもらえば、子供たちが(タダで)生の英語にふれ、海外に目を向ける貴重な機会となり、都市部やその他の地域から羨ましがられるとおもいます。

BTCVは実際に海外ボランティア・ツアーを行っており、日本にも毎年十数名のボランティアが訪れています(今年は北海道の釧路近郊で水路のメンテナンスなどをやるそうです)。

また、東京の都心には外資系企業の東京オフィスに赴任する海外からのビジネスマンとその家族、そして留学生がたくさん住んでいます。ロンドンの日本人社会と同様、異国でどうしても内輪でかたまりがちな彼ら(とくに駐在員家族)に呼びかける、というテもあるかもしれません。実際早稲田大では、留学生に東北地方の寒村の雪下ろしのボランティアを企画したところ大変好評で、留学生ばかりでなく村の活性化にもなっているという記事を日経で読みました。彼らにとっては生の日本語と日本人に触れることのできる絶好の機会、また、フリースクールの子供たちにとっては生の外国人に触れ、視野を広げるまたとないチャンスになるでしょう。そしてこれは元サラリーマンの人々にとっても等しく魅力的なプロジェクトだとおもいます。

上記は以前お送り致しました生涯学習の拠点としての活用策とはまた別の案ですが、両方を合わせることも可能だとおもいます。

たとえば、

(1)フリースクール(常設)の生徒が、生涯学習コースの参加者に地元の自然やワイルドライフ・ガーデンの説明をすることで、生徒が責任感と自信を育てることができる。コース参加者も、フリースクールの生徒たちに対する偏見を捨てるばかりか、「ウチの子どももこれくらい生き生きしていたらなぁ」としみじみするに違いありません。

(2)留学生や駐在員(家族)による外国語コース(たとえば樹木や自然関係の話題・語彙に重点を置く) → 外国語によるネイチャー・ウォークや環境保全活動。

(3)上記留学生など外国の人々への報酬として、禅の体験や、フリースクールの生徒や元サラリーマン、生涯学習コースの参加者等、生の日本人との交流(共同のボランティア活動や野歩き、地元のイベントへの参加など)。

いろいろと勝手に書いてしまいました。御笑覧いただければ幸いです。
9月に入りArboricultureのコースが始まりますと、日本の森林や林業の事情など、小澤様にお知恵拝借のお願いをさせていただくことがあるとおもいます。その際は御教示・御鞭撻をいただければ大変幸いに存じます。

日本は全国的に梅雨もあけ、夏の陽光降り注ぐ頃でしょうか。どうぞご健勝にてお過ごしくださいませ。

今後ともよろしくお願いいたします。

佐藤万理
mariko-konmari-sato@msn.com
GREEN TEA TIME http://www.asahi-net.or.jp/~fc8m-stu/


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