長南一夫さんの内蒙古ホロンバイル植林日記


報告者  長南一夫氏(NPO法人・呼(ホ)緑協、現地駐在員、森林塾同人)
                                                            
2002.5.27.〜7.5.(40日間)
中国 内蒙古 呼倫貝爾(ホロンバイル)市 海拉爾(ハイラル)区 林業局。宿舎:貝爾(バイル)ホテル。
会った人:市、区、政府関係者。林業局関係者。文化街小学校。呼倫貝爾大学。
カナダ政府評査団。ニュージランド政府調査団。アメリカ、イギリス、日本人旅行者。その他多くの友人。日本語を学ぶ多くの若者達。
新聞記者(作家、科学者)
見学、実習地:満州里、呼倫貝爾西部草原、呼倫湖、海拉爾西、東山造林地。呼倫貝爾大学。N.P.O.担当造林地、試験林。


5月27日(月) 晴 19℃
海拉爾 21:30着く。肖平局長(ハイラル林業局)ら6名迎えあり。

5月28日(火) 小雨 10〜25℃
事務室で会議、5名出席。当方の要望として協定書に則り、現状、実地の進捗状況の確認。小学校、大学訪問の協力要請。マスコミに対してN.P.OのPR要請。夕、林業局関係者の紹介を兼ねた食事会。今年は例年の3倍の造林作業がある。これは、党中央、国務院決議の国土緑化事業に当地も指定された。また内蒙古自治区の大会が8月にあり大変忙しい。可能な限り要望に答えたい。市が区になった理由は合理化、小さい政府、人員削減である。

5月29日(水) 晴 25℃
当方の希望により肖局長、パジェロを配車してくれる。有難い。自然水源地の呼倫湖。琵琶湖の4倍の面積、水量139億立方米、運河、用水路の人工利用無し、汚染、公害無し。
水深平均7〜12m。冬季凍結2〜3m。呼倫貝爾草原沙漠化急速に進行中。ここ2,3年周囲1,2kmの池、沼が干された。アルカリ性の土壌が白くなって露出している。動物の水飲み場は無くなった。470km草原走破。胡、孟氏に感謝する。いねむりの高橋を怒鳴る。

5月30日(木) 晴 20℃ 風大
午前中 事務所 高橋居眠り 注意す。FAX.あり。記者くる。日本大使館に電話したが参事官 不在。耕地、植付け、除草、散水,肥料、病虫害対策等管理状況について説明を受ける。夕会食あり。高橋氏のサヨナラパーテー、5名。

5月31日(金) 曇 20℃
昨夜 一睡も出来ず。 下痢、吐き気。午前中 苗場、造林地、試験林見学。
盗掘現場に出会う。女3、男1。男連行。
夕食 6名。全然食欲無し。尚、孟氏薬を届けてくれる。ありがとう。
18:30 高橋氏 離海。

6月1日 (土) 晴 20℃ 休み
朝食とらず。白さん来る。大学の先生より電話あり 講義内容の打ち合わせ。
市ホテルに挨拶に行く.春季造林協定書確認作業、資金の配分の確認。
ハイラル市報にて 気候、土壌、樹木、市民構成、平均年収を調べる。

6月2日 (日) 晴 15℃ 休み
9:00起床。朝食とらず。体調優れず。休日にも係わらず友人の電話、訪問あり。
半分迷惑、半分うれし。NPOの基本理念である草の根運動が異国の地ハイラルで少しずつ広がりつつある。これは現地駐在員の大事な仕事である。本音で語れる友を多く作りたい。
日中友好会館16:00訪問。生徒数4人、わびしい。1996年情熱、誠意、好意で種を蒔いた。しかし日本人駐在員がいない。管理がいかに大事か痛感する。

6月3日 (月) 晴 25〜30℃
春季、冬季造林。試験林、青少年基地、新苗場、新井戸の状況について孟氏より説明を受ける。区内いたるところ交通止め。車両進入禁止、徒歩で通う。事務所閉鎖、誰もいない。
午前中無理して開けてもらう。孟氏は区事務所へ。私一人。午後閉鎖。盆と正月一緒に来た。
ここ1ケ月雨なし、沙嵐舞う。校長に電話するも都合つかず。予定たたず。
午後 ホテルで 学校、大学の講演資料作り。 夕 考古学博士(36歳 鶴見区在住)に会う。了時代,キタン文字の解読研究、世界で数人,日本で一人。お互いに金にならないが夢があると語り合う。

6月4日 (火) 晴 27℃ 大風 沙嵐
地図,作図作成作業。新聞記事の整理。試験林の樹木の分析。国土資源部発行の資料解読。
事務所は私一人。時々電話あり,関係部署に日本人いること広まる。プレゼンス・パワー。

6月5日 (水) 晴 26℃
アメリカ人(3名)、カナダ政府調査団一行(7名)と会う。
樹木学(中国林業出版)にて約30種の内容を書き写す。帰国後 図書館通い思い憂鬱。

6月6日(木) 晴 26℃
カナダ政府調査団一行10名と会う(博士3.教授1.通訳2.)昨年と同じメンバー。
カナダ中部は気候,風土が似ている。土壌、牧畜の専門家。
東山造林地見学。当地 国家重点地域に指定される。退耕環林、防沙冶沙、防護林、封山育林、エコ・ツアー・ゾーン等の政策である。(小澤普照著 「エコヴィレッジへようこそ」、中国森林政策に詳しくのべられている)
今春 約3000ha 約500万株の造林。直接投資額 一億円 規模 金額とも通年の三倍。
ホテルからの電話,FAX料金3分単位。公衆電話、郵便局を利用。大事な資金節約。

6月7日 (金) 雨 9〜25℃
竹内さんからFAXあり。郵便局へ出かける。
快便、食欲、体調通常に戻る。30年前、インドネシア滞在中を思い出す。誰もが一度はかかるという気候、風土病、と体験者は言う。一度免疫ができると当分大丈夫と言われる。

6月8日 (土)晴 20℃
カナダ政府草原牧畜調査団(カナダ人3名、北京政府3名、現地4名)一行10名に会う。
ハイラル滞在10日間、昨年も会った。草原、牧畜、土壌、気候について話し合う。

6月9日 (日) 曇 20℃
朝,待望の油条、ミルクあり。久しぶりの食事。カナダ人一行と別れる。
ハイラルでサッカーを中国語で見るとは。
理髪5元、洗髪と言ったら、洗頭と訂正された。主人は同年輩。
伊敏河、ビニール袋、ゴミ、生活用水。汚染、悪臭、ひどい。

6月10日 (月) 雨 10℃
別のカナダ政府調査団に会う。農学博士2名、内蒙古大学教授など計7名。
多くの友人、知人から苗代として送られてきた古切手、約5000点を肖、孟両氏に渡す。
良い方法、生きた方法を考えてもらいたい、と話す。
ハイラル晩報によると、ロシア鉄道建設当時、日本占領時代、多くの木が伐採されたと報道あり。中国の報道は伝聞が多く、具体的、科学的数字なし。
大学教員より、ノルウェー草原学術調査団同行の話を聞く。

6月11日 (火) 曇10℃
前日の降雨量を気象庁に確認。6,6mm。22,0mm。
ハイラル晩報の沙漠現地調査取材班の報告1ケ月間の調査記事を読む。沙嵐、沙漠化、早ばつ、ひどい。
王校長、電話して強引に会いに行く。孟氏同行。10分間会う。花壇の写真を撮る。自然環境保護教育、週に2課学、月に8課学 実施されていると聞き出す。
講演の件、未定。現地造林参加教育、未定。
イギリス人2名と会う。バード・ワッチング世界を回っている。草原 セブンダイズ。環境問題等 約1時間。
ホロンパイル日報曙光記者来訪。単独インタービュ。Sunday Special トップ記事担当 副編集長。作家、科学者。環境問題に詳しい。

6月12日(水)曇15℃
肖平局長に久しぶりに会う。腰痛、疲れ、ここ1ケ月休みなし。
ホロンパイル大学講演原稿作り。ホロンパイル大学現在3年制、今年より4年制。
学生数5000人、教職員900名、外国語学科170名在籍。18:00時より約2時間詳演。
参加者140名。内容一日本語教科書 さくら、日本の教育、環境問題、沙漠緑化、NPOの使命。外国語の必要性、世界化。
英語の質問には英語で、中国語の質問には中国語で、日本語の質問には日本語で。
英語、日本語に堪能な学生、数名おりびっくりする。21:30ホテルに帰る。疲れた。

6月13日 (木) 晴15℃
ホロンパイルの水文学、気象学、国家林業局編の沙漠植林学について学ぶ。ハイラルにも法輪功広がっている。新聞は反対邪教キャンペーン。日没21時近く。最長日照時間16時間。
日の出03:00前。アラスカ、アンカレッジを思い出す。来海2回目の感冒。
ハイラルの−日の温度差最大15℃。かって真冬の北海道から赤道を越えて、−日の温度差最大50℃でも問題なかった。俺も老いた。体温調整機能、衰える。
                 
6月14日 (金) 晴 18℃
ハイラル市農業報告書。気象、水資源、地下水、土壌、主要樹木について学ぶ。
内蒙古日報 牧区生産経営方式の変革の記事を訳す。詳細は別紙。
2大中国自動車会社、合併。対世界戦略。 早九晩五(9時〜5時)工作運動広がる。

6月15日 (土) 晴 25℃
ホテルの部屋で日本語教室。孟氏の大学同期、夫妻。30歳前。午後、2名の教師。孟さん。それぞれがちまき持参食べきれず。ちまきの山。5名来訪。越来、越好。
新暦の日本、3月桃の節句 桃の花なし。端午の節句菖蒲なし。旧暦の中国に季節感あり。
夕 大学の先生と打ち合わせ。
テレビ、新聞、イナゴ(虫皇虫)大群発生。黄河地帯、異常気象による。150万ha、1平方米 4000〜5000匹。空中薬剤散布、大量のニワトリを放す、人間が食べる。
(北京、天津市)
大河一帯 洪水、水害。一省で損害30億元。内蒙古  ある地域 早魅対策7億元投入 77万人、家畜200万頭救う。中国は広い。

6月16日 (日) 曇 25℃
日本語教室 2名。周氏 地方公務員。午後 雨、雷鳴あり。ホロンパイルは雨の季節。
ホロンパイル大学 日本語科 20名 2時間講義。

6月17日 (月) 晴 25℃
文化街小学校訪問 孟氏同行。文化祭。市、区政府関係者らと一緒に紹介される。
校長より NPO現地駐在、日本の資金、善意により花壇、樹木、青少年基地植林、環境保護 教育等多いに貢献ありとの話あり。後日 新聞 TVにて報道された。孟氏の協力、陰にあり。感謝する。参加者、父兄もいれて1000名。押しかけ参加 結果良し。
スコップ 300本の確認作業、保管場所 林業局倉庫。約50本確認。残りは別の倉庫確認出来ず。
青少年基地、春の花灌木植栽は林業局担当。散水作業学校担当 未実施。
新聞 10部受け取る。トップ記事。「又見長南」。科学文献も併せて。
午後雨あり、キツネの嫁入り。約15分。

6月18日 (火) 晴 18〜30℃
孟氏 事務所に1時間いる。直ぐに市政府へ移動。

6月19日(水) 雨 10〜20℃
ジープで現場へ。6月 雨 4日あり。
春 小苗 2mx3m(うね)  1665株   2mx4m 1245株/ha
2000年冬  松 500株 補植なし。
ポプラと浪交林。これは肖局長の見事なアイデア。代表作となろう。
2001年春 補植 5000株。100年来の早魅 重点散水 他所を犠牲にしてNPOを守る。その実績あり。畝によって 良し悪しあり。活着率 60〜70% 局の見解。私の見解 50%。
2002年春 良好。 
青少年基地(2001,2002) 松 活着率 70% 私の見解。灌木植えたばかり。
試験林 進捗状況 良好。
尚、正式報告は局の責任にてなされる。
成長率 大苗松 5〜8cm、 小苗松 2〜3cm/年。
午後 曙光記者と二人 沙漠、環境間題、人類学、民俗学、いろいろ話し合う。
農家の出、内蒙古民族大学卒。教員数年勤務後、記者、作家となる。環境問題協会所属。
論文あり、博学である。
ホロンパイル市 人口260万、面積北海道の2倍。今春、約4万haの造林が行われた。

6月20日 (木) 晴 15℃
試験林 リラ3種について調査、書き取りする。
環境問題会議ハイラルで開催、約600人参加。事務所に電話あり。日本人駐在大分知れ渡る。北京人民代表報記者より2回電話あり。環境問題担当記者日本語は挨拶程度話せる。
よろしく、とPRする。NPOの予算配分、協定書にて再度確認。

6月21日 (金) 晴 20℃
夏至。風あり、涼しい。局長チチハル出張。
3月5日 日経新聞、中国国防費 1660億元、国土緑化費 1200億元現地新聞 2001内蒙古GDP 1545億元、防護林学を東北林業大学資料について学習、ここ40年中国の10代の若者 身長7,5cm伸びる。水不足、特に飲み水不足が中国全土に広がってる。生活様式の変化、人工集中化、都市化が原因。女性向け肥満防止美容体操あり。中国も変わった。

6月22日 (土) 曇 20℃
ここ1ケ月朝5時から工事の槌音あり。ホテルの改築。株式会社となる。
周夫妻、伊敬三姉妹(元大地主、貴族の出)日本語教室 外国語の必要性、世界化を話す。
中国の若者外に目が向き始める。


6月23日(日) 晴 18℃
午前中日本語教室4名。午後文化街小学校、守衛の許可を受け、花壇見学。女教師一人来る。10mほどのタイル張りの細道あり。散水装置あり。杉17本中2本格れ。
松20本中1本枯れ。花は今盛り。ごみ少々散らばっている。管理責任体制はどうなっているのだろう。何も聞かずに帰る。ごみ捨て場にならないよう祈るのみ。
駅に行く。石炭、木材の貨車多し。当所の輸出前年比7%上昇。
中小企業より民営化、成長している。

6月24日(月) 晴 25℃
小学校訪問。校長に挨拶。3年生40名 環境保護教育講話約40分。孟、白両氏同行。
子供達の目は輝いていた。声は学校中に聞こえる大声であった。女先生(25〜30歳)あくび。3人びっくり。怒鳴ろうかと思ったがやめた。我慢、我慢。当方の熱意、誠意が現場に通じているか。校長に挨拶。3人歩いて帰る。無理にセットアップしてくれた孟、白、両氏に感謝。押し付け講演終わり。わびしい。

6月25日(火) 晴 20℃
日本招聘の件、ふたりに伝える。将来志向の植林理論、3人の課題とする。
見知らぬ人に前回は少数民族、今回は台湾からきたと言われた。漢語能力、少々上達。

6月26日(水) 晴 30℃
孟氏と作図、製図作業開始。鉛筆を削ってやる。作図、計算は不得意のようだ。なかなか進まず。作業中口を出して喧嘩になる。見ていられない。でも最後は要望を入れて完了する。古切手、北海道、宮山、多くの人の誠意、宝物、粗末にはしないよう孟氏に伝える。
1日食費10〜15元 と新聞に出る。此れでも現地の人にとっては贅沢。余った金は苗代へ。話広まる。40日間、食費10600円 時折話題になった。

6月27日 (木) 曇 25℃
ジャライノール市局長より石炭開発100周年記念式典への招待あり。
行きたかったが時間なく、丁重にお断りする。
党中央・国務院建議書政府刊行物を読む。郡小平主席の指示により発行された中国林野庁(正式名称は、中国国家林業局)のもの。大変厚い書類。要点書き写す。

6月28日(金) 晴 28度
事務所オープン。職員 女2人。ハイラル地区造林、直接投資1億円。例年の3倍。

6月29日 (土) 晴 30℃
暑い。数人より電話あり。ホロンパイル市 270万人 その中でたった一人の外国人(日本人)。孤独感と共に 誇りもある。食事の誘いあるも丁重に断る。新聞記事が効きすぎた。地震あり、洪水あり、海抜2500mの高速道路開通あり。
午後 雨あり。日本語教室 2人 2時間。
次代の現地駐在者よ、外国語は2つ必要。そして健康第一。

6月30日 (日) 晴 28℃
暑い。休みたいが 2人来訪、日本語教室。 夕、福岡よりの15名と会う。日系 2世、3世、約350名いると、エンケイ先生。ホテルに果物届く。
沙漠についての教材読み書き写す。膨大な資料となる。

7月1日(月) 雨 18℃
将来志向の課題について。
固沙、防砂、沙地、沙漠化防止対策。混交林、草本との組み合わせ、森林の多様性。
気候、風水害、病虫害等に対するリスクの分散。3名の勉強。
ハイラル林業局の最終報告書 FAXで竹内さんへ、5ページ。
午後 激しい雨、雷鳴あり。不思議にもアメリカには多い竜巻聞かず。孟氏にたずねる。
あるが小さい。大気構造の違い。明白。

7月2日 (火) 曇 20℃
内蒙古農業大学生態環境学院 博士課程論文資料 書き写す。膨大なり。
理髪、5元。 王校長 新聞持参、NPO,同窓会によろしくと。花壇、樹木管理、アクビ先生、校外実習について苦言を呈す。枯れ木のままで教育は出来るのか。不行、不好と回答あり。成り行きを見守りたい。他の学校を見学、第9中学 雲杉40本 枯れなし、ゴミなし これぞ教育! 人なのだ。

7月3日 (水) 晴 25℃
日本大使館ビザ申請の件、大使館にFAX。林業局とNPOの協定書の内容確認。
下記の件未実施。
@春 花灌木 1万株未実施
A記念碑文字の件 未実施
B児童による散水作業 未実施
C学校樹木 枯死の件 未確認

7月4日 (木) 晴 28℃
車、配車できず。孟氏 オートバイを借りてくる。タクシーにしようと言ったら、苗代のために節約しようと言った。涙あり。ぬかる道の草原、2人乗りで約3時間駆け回る。
各造林地を最終点検する。池の水、新しい井戸を点検する。
ホテルで清算。40日間滞在総経費約15万円なり。

7月5日 (金) 晴 20℃
9時30分 空港で一人で大丈夫だと再会を約す。
ハイラル発 12:00 直行 横浜着 23:30
2002年 第一次現地駐在任務 終了。



ハイラル文化街小学校の花壇



文化街小学校での長南さんの講義



植林地での長南さん



植林日記に登場する肖局長左と孟さん


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