(未定稿)
国際モデルフォレストネットワーク(事務局はカナダ・オタワ)主催のグローバルフォーラムは3年に1度の開催です。前回のコスタリカ大会に続いて、今回はカナダ・アルバータ州のヒントンで、2008年(平成20年)6月16日〜20日まで5日にわたって開催されました。
私(小澤普照・京都モデルフォレスト協会顧問・9年前のハリファックス大会出席))は、田中和博京都府立大教授(京都モデルフォレスト協会理事)とともに、出席しました。
ヒントンは、アルバータ州の州都エドモントンの西、280キロ西に所在する町で、さらに西へ車で1時間ほど走ると、ジャスパー国立公園があります。
会場は、森林消防隊員(firefighters)などの訓練施設として開設された、ヒントン・トレーニングセンターで行われました。
この地域は、フットヒルモデルフォレストの所在地です。
初日の16日(月)は、今後モデルフォレスト開設予定国も含め31カ国、170名余の参加の下、フットヒル・リサーチインステチュート代表、州持続的資源開発大臣、カナダ天然資源省副大臣補(森林局長)、国際モデルフォレストネットワーク事務総長(ピーター・ペッソー氏)らによる基調講演や国際モデルフォレスト運動の歴史などの説明がなされました。
カナダにおけるモデルフォレスト運動は、1992年に始まりました。この年の6月、リオで開催された、地球サミットの会合の中で、日本の林野庁が主催したワーキングランチで世界の主要国が集まった席上、カナダの代表からモデルフォレスト運動開始の発表があり、各国に協力要請がなされました。
この時、私は日本の森林関係代表として地球サミットに出席し、ワーキングランチの主催者でもありましたが、カナダ代表のジャグ・メイニイ氏から日本の協力について強い要請を受けました。
2年後に国際ネットワークが出来、ピーター・ペッソー氏が事務局に参加することになりました。ペッソー氏の話によれば、メイニイ氏も引退してしまった現在、リオでのモデルフォレスト運動旗揚げの発表の場に直接居合わせた人間で、かつ今回のグローバルフォーラム出席者では、私が唯一の人物であろうとのことで、誠に感慨深いものがありました。
2日目(火)と3日目(水)の午前中はワークショップということで、分科会という趣ですが、出席者の希望による組み分けが行われ、私は、火曜日は、モニタリングと評価、水曜日は、戦略計画のグループに入りました。分科会の項目は、これら2項目のほか、科学的プログラム、エコ・カルチャーツーリズム開発などで、いずれもモデルフォレスト運動を進める中で、重要な課題となっている事項です。
内容的には、キャパシティービルディングでファシリテーターがいずれも有能でしたが、ブレーンストーミングやKJ法的な手法を駆使しつつ、皆に考えさえかつ意見を引き出し、まとめて行きますが、この方法は、国際的にも国内的にも相当浸透してきていると思いますが、感想としては、わが国ではもっとファシリテーターの人材育成に力を注ぐ必要があると思いました。
私は、京都モデルフォレスト独特とも言える個々のプロジェクトごとの産官学民(住民・NGO)の協働方式について紹介するとともに、各モデルフォレスト運動において、経験年数も異なり、したがって発展状況も異なるので、発展段階等に応じた情報提供や情報共有が望ましく、ネットワーキングにおいて重要視すべき事項と考える旨の意見を述べたところ共感が得られました。終了後、ファシリテーターからも私に対し良い意見であったと感想が述べられました。
なお、2日目の午後は、全員参加のディスカッション、3日目の午後は、各種情報展示会場での情報交換が行われました。ポスター展示でモデルフォレスト活動の紹介があり、グリーズリーベアノ剥製も展示され、説明者を見たら、9年前のハリファックス大会からの帰途、ピーター・ペッソーさんの案内で立ち寄ったヒントンで熊の行動調査について説明をしてくれた専門家のゴードン・ステンハウス氏でお互いに再会を喜び合いました。彼の話では、現在発信器を取り付け行動をチェックしているグリーズリーベアは、20頭であること、発信器の電池も当時10カ月程度であったものが、最長2年にのびたとの説明がありました。
4日目はジャスパー国立公園で野外ツアーとなりました。
森林消防隊のヘリコプターから地上への降下実演、飛行機による消化剤投下実演などなかなか迫力がありました。
なお、小学生などにも体験してもらっている様子でしたが、GPSを使って森林内で人を捜しゲームをしたり、大人も楽しめる森林体験の時間も用意されていました。
5日目の午前は、全体会場で各テーブルに分かれて意見交換会でしたが、英・仏・スペイン語が同時に飛び交う中、ファシリテーターが3カ国語を操りながら、同時通訳者(仏・スペイン語の2名)と協働してディスカッションをまとめるやりかたは大いに参考になりました。
また、組み分けも、1時間ほどディスカッションをすると、同じ組の人が重ならないように、組み替える方法で議論を続ける方法でした。テーマは情報マネジメントということで、情報共有(knowledge
sharing)の具体的方法についてメンバーを変えながら行うディスカッションも良い方法と思いました。
(中央立ち姿がファシリテーター、左側の二人が仏語・男性とスペイン語・女性の同時通訳者・小澤撮影)
午後は締めくくりの全体会議で5日間の会合を振り返ると同時に次期グローバルフォーラムへ向けての展望が示されました。
夕食はお別れの晩餐会の雰囲気となりましたが、この時間に、前日から約束していたアルバータ大学のスペンス教授と田中教授、私の3人で、学生交流について意見交換を行いました。ペッソー事務総長も途中から参加してくれました。スペンス教授は交流については積極的に賛同され、具体的な話があれば何時でも聞きたいとのことでした。私としては、1カ月くらいの短期滞在から始めて、段々延ばしていくことも良いかとも思いましたが、いずれにしても具体的な希望を出して、率直に話し合うことが良い結果が得られると思いました。
(左から田中教授、スペンス教授、小澤、ペッソー事務総長)
土曜日は、朝食後、2年後スペインで開催予定の次回大会での再会を約して、別れを惜しみつつ各自帰国の途につきました。
なおアジアからの参加は、モデルフォレスト運動実践国の日本、中国、タイ、フィリピン、インドネシア、インドの6カ国のほか、近い将来開設を目指す韓国の7カ国でした。
(以上、小澤普照記、2008年7月9日)
このグローバルフォーラムの写真集は森協ネットのホームページに掲載しています。