小澤塾長 東京みなとロータリークラブで「森林力」について講演
小澤森林塾熟長が、2011年5月17日(火)、東京みなとロータリークラブの例会(於東京プリンスホテル)で、
ー「森林力」とはなにか、其の増強戦略」についてー、と題して、約五十名の会員の皆様に講演を行いました。
講演のあらましは次のようになります。
すなわち、「日本は、国土の三分の二が森林で覆われている、世界有数の森林国である。
この森林を持続的に管理するため、都道府県知事さんや市町村長さんが大変苦労しておられる。
そこで、自治体の為政者の皆さま方の参考にしていただける資料が提供できればということで、筆者が所属する研究所(林政総研)の研究スタッフが、「森林力」の解明に取り組み出して約3年が経過した。
最終報告は、2011年の秋を予定しているところである。
本日は、これまで整理された事柄について紹介したい。
先ず、解析に当たって、問題になったのは、わが国の森林に関しては、国と都道府県についてのデータは豊富であるが、市町村の森林についてのデータは少ないということであった。
このような実態から、都道府県版の「森林力」指数は、82の指標で構成されたが、市町村の「森林力」指数は47の指標が用いられた。
「森林力」を政策的に活かすには、幾つくらいに大括りすれば良いかということについては、いろいろ議論のあるところではあるが、おおよその目安として、五つか六つに分けることが良いという結論に達し、
@森林ストック視点に立つ「森林自然力」
A森林資源の生産・消費視点に関連する「森林地域社会力」
B同じく地域力に関連する 「森林関連産業力」
C「森林経営持続力」
D「育成林機能増進力」
とした。
これら五つのグループに加えて、五つを総合した「森林力総合」指数を加え、六つの大分類で括った。
一方、市町村版は、47の小分類指標から構成され、大分類としては、
@「森林自然力」
A「森林地域基本力・文化力」
B「森林産業力」
C「森林経営持続力」
D「森林整備力」
の五つに、「森林力総合」指数を加え、六分類とした。
なお、指数の算出方法であるが、まず指標については、最大値を100とする指数に変換し、その指標を小分類グループについて
単純平均する。
次に単純平均されたグループ指数について再度、最大値を100とする指数に変換し、一つ上位の中分類指数グループで単純平均する。
このような算出プロセスを、より上位の大分類指数、さらに森林力総合指数に至るまで繰り返す。
すべての指標は重みが均等であるという発想に立ち、この条件を満たすための算出作業を行うわけである。
「森林力」研究の結果と応用
調査・研究の結果、都道府県の森林力総合指数は、1位北海道、2位長野県、3位岩手県、4位宮崎県、5位島根県の順となった。
以下、新潟県、秋田県、大分県、岐阜県、熊本県と続いている。
ところで、市町村森林力指数はどうか。
指数算定ベースとなるデータは、2000年世界農林業センサス林業編である。
一方、平成16年〜22年までの間に、いわゆる平成の市町村合併が進められたため、市町村「森林力」指数については、平成14年(3,038市町村)をベースにしたものと平成19年(1,722市町村)をベースにしたものとの二通りが作成された。
平成14年ベースでは、森林力総合指数は、1位が高知県本川村で、以下、岐阜県藤崎村、奈良県野迫川村、長野県王滝村、福島県いわき市の順となっている。
また、平成19年ベースでは、1位が岐阜県高山市、以下、奈良県野迫川村、静岡県浜松市、長野県王滝村、奈良県上北山村の順となっている。
森林力指数は、順位そのものを目標とするものではなく、どこに力を注げば、当該地域、当該市町村の森林力指数が
上昇するかということを検討していただくことが、森林力のレベルアップのみならず、地域活性化にも繋がると考えている。
例えば、市町村合併と森林力の関係は、どうなっているのか。今回の研究で見る限り、中山間地域の市町村では、合併により
森林力が大きく上昇した例を見ることができる。
例えば、岐阜県高山市の森林力指数は、かつて511位であったが、合併後は1位になった。
地域の中核都市が森林資源を大きく抱えることで、自然資源力のみならず、森林整備力などを大きく向上させることが
起こり得ることが実感される。
浜松市の場合は、1,523位から3位に急上昇している。
浜松市の場合は、合併前の林野面積が、2,253haであったものが、101,881haと45.2倍に増加した。浜松市のような地域経済力が高いと目される都市が大規模な森林を抱えた場合、良好な森林経営を行うに必要な人材や持続システムを保持して、さらなる発展を実現させることができるか注目に値すると同時に未来発展型の地域として大きな期待を抱かせるものである。
(以上、小澤普照記)