新時代における森林及び林業の人材育成について考える
副題 体験的人材育成論
小澤 普照
(「森林技術」No.796 平成20年7月号掲載)
はじめに
最近、元文部科学官僚の寺脇研さんから『官僚批判』(講談社発行)と題する一冊の新刊書が送られてきた。著書には文部行政の変遷とともに自身の心理描写も淡々となされており、興味深い内容となっている。寺脇さんは平成4年7月、文部省職業教育課長就任で、役人生活としては、筆者とすれ違いということになる。何故接点が出来たかというと筆者が、林野庁長官に就任した平成2年の夏、郷里の同級生で当時新潟県立加茂農林高校教頭の平野宏氏(後高田農業高校校長)から長官室に電話があり、高田農業高校が夏の全国林業高校の先生方の研究集会の当番校になっているので、長官から激励のメッセージが欲しいということであった。激励メッセージは即座に引き受けたものの、平野氏の言葉が妙に頭の片隅に残った。それは、(農)林業高校を取り巻く諸事情により、教師も生徒も共に悩みを抱えているという一言であった。直ちに龍久仁人研究普及課長に長官室に来てもらい相談の結果、有識者による林業教育の研究会を立ち上げることとした。メンバーは中村桂子氏(JT生命誌研究館館長、当時早稲田大学人間科学部教授)や文部省の行政官OB、その他の関係有識者とした。研究会を開催したところ、いろいろ問題があることがわかった。当時林業コースがある高校は70〜80校ほど、学年定員は3,000人ほどと記憶しているが、そもそもこの程度の人数では参考書が出版されないので教師の皆さんが、個別に県庁などにお願いして資料を用意するなどというのも一例であり、またそもそも林業について専門の大学教育を受けた教員が一人もいない林業高校もかなり存在することもわかった。また生徒にとっても偏差値で何ごとも評価されるプレッシャーがあることなど、何らかの支援策が必要とされている事態が理解できた。また研究会の回数を重ねるにしたがい、当然のことではあるが、林業教育が林業高校教育で完結する筈もなく、大学教育やさらには、生涯学習を含めて考えるべきものであるとの道筋が見えてきた。
このような経緯から、林野庁と文部省のお付き合いは続き、筆者が退職後間もなく開いた森林塾に、林野庁研究普及課で文部省に対する窓口となっていた長縄肇課長補佐の仲立ちで、寺脇門下の文部省の若手行政官や君津農林(現君津青葉)鶴見武道教諭(現愛媛大学農学部教授)、木曽山林高校遠山善治教諭(現同校教頭)らの熱心な教師の方々が集まるようになった。
1)専門高校教育の理想と現実
各地に農業高校林業コース、あるいは林業高校があり、担当教師には情熱もある。しかし、それだけでは歯車がうまく回らない。仮に生徒が林業高校への進学を望んでも、親が反対するケースもあるとの話も聞いた。偏差値主義の悪弊である。
森林塾での議論から、一同で木曽に実地検証に出掛けようということになった。箕輪光博東大教授(当時)も参加された。結論的には、木曽の立地条件からみて、この地を林業人材育成の中心的基地として強化する発想が必要と考えた。先ず、箕輪教授に山林高校の特別講師を引き受けていただく、筆者も及ばずながら講師を引き受けるということで、実際に同校で講演もさせていただいた。
一方、県議会などの関係者の肝いりで長野県庁の講堂で数百人の聴衆を前にして、林業の立て直しや林業人材育成論について述べさせていただいた。講演の中で、広く人材を集めるため県外募集もすべきであるとの意見も織り込んだ。その後、県議会では職業教育問題が議論され、県外募集も可とする結論がでたということで、一安心したが、盛大に広域募集をするところまでは行かなかった。たまたま高知県庁を訪問する機会があり、橋本大二郎知事にお会いして県外募集の考え方を質したところ、既に実施しており何ら問題はないといわれた。
しかし、その後、事態は改善されるというより、むしろ深刻さを増して今日に至っているのである。特に、高齢化、少子化が進む山村・森林地帯では深刻な状況となっている。
長野県木曽地方(郡)の人口動態をみても、昭和50年の45,628人の人口が平成17年には33,823人に減少する中で、15歳以下の年少人口は、22,498人から4,076人へと激減している。当面の対策としては、木曽では普通高校と山林高校の合併が進められている。しかし、これまでの状況を考えると、合併はどのような効果を発揮するといえるだろうか。また非常に少数になってしまった対象人材に対し、高校3年間の教育でどの程度の実力を付与する計画となっているのか。戦後60年続いた教育システムはこれで良いのだろうか。
わが国では従来、職場の中で仕事をしながら職員を育てて行くという伝統があり、学校等での学習は比較的短期間で済ませてきたものと考えられる。
かつて文部省が目指した、総合高校という発想も悪くはなかったと思う。あるいは、専門高校というカテゴリーで分類することで、進学競争の序列に組み込まれることを避けるという考え方も間違ってはいなかったと思う。
しかし今、地方の活性化を考えるならば、真に地方が必要とする人材像を明確にして、育成するシステムを創出する必要があろう。
最近のテレビで鳥取県智頭農林高校の林業関係学科の活動が紹介されていたが、校長先生の言葉にもあるように、地域産業を担う人材育成というような目標を学校ごとに明確にしての取組が重要である。
郷里の高田農業高校では、エコスクールを目指すという方針で、最近、校庭に炭焼窯の設置も行われ、一方、筆者も前述の平野宏氏などの参加を経て、3年前に開設した、上越森林環境実践塾(炭焼実践塾)と農業高校、市役所などが連携して、平成19年8月には、地球環境・炭焼シンポジウムを多数の高校生の参加を得て実行した。
また過疎地帯で、学校の統廃合が相次いで行われてきたが、この流れの中で、新機軸を打ち出したのが、宮崎県五ヶ瀬の中等教育学校(6年制中高一貫校)であろう。筆者も二度訪問したことがあり、有名校で説明の必要もないと考えるが、訪問時に校長先生のお話の中に、大勢の参観者と生徒が直接言葉を交わす場を設け、社会性を身につけてもらうという方針に共感するところがあった。学年定数僅か40名の少数教育ながら、典型的な過疎山村の学校で、当初意図したことでは無かったとはいえ、県内全域から生徒が集まり、山村進学校としても注目されている。いわゆる6年制一貫校は、その後、全国的に増加しているが、山村ではなく専ら都市部における増加ということが気になる点である。
2)短期大学、高専、コミュニティカレッジ
専門高校の僅か3年の学習では、地球環境やバイオダイバーシティの持続、温暖化防止の諸技術、知識と技能のバランスのとれた修得などが難しいと考えるのは、筆者一人ではあるまい。そこで、学習期間を延長して実力を高める方法として、前述の中学と連結して大学などへの橋渡しとするか、あるいは短期大学などと連結してより高度な専門性を身につけることが考えられる。
県立の林業短期大学(校)あるいは、農林大学校などに設けられている林業コースなど全国では6校ほどあるといわれるが、筆者が見聞した事例では、全日空で機長をしていた長南一夫氏(神奈川県在住)が退職後林業の専門家を志し、林業短大等の受験に際し、県外からの受験者の扱いは学校によって異なることが分かった。すなわち、入学しても正規の学生ではなく、聴講生などとして入扱うことがあるという現実を知ることになった。そこで最終的には県内県外を問わず合格者を平等に処遇する岐阜県立林業短大(現森林アカデミー)に合格し、卒業後は内蒙古自治区においてNPOの現地駐在員として植林に従事した。
北米などではコミュニティカレッジが盛んで、筆者が訪問したカナダの山間の町キャッスルガーの林業カレッジでは、学生の平均年齢が26歳ということで社会人からの参加者が多く、2年間の期間で、座学1年、技能1年を徹底的して身につけ、卒業時には植林、育林、伐採等何でもこなす完全な知的技能者として即戦力となるよう仕上げるということである。したがって実習も州有林や企業などからの受注業務を実行することで真剣勝負的な鍛え方をしているとの説明があった。
もう一つの選択肢としては、高専制度の導入も検討に値すると考える。
わが国の高専は、工学系が多く、他は商船系などとなるが、今後森林系や環境系の可能性が高まるのではないか。このことは、企業などの採用状況とも絡む問題ではあるが、今後の地球環境問題と企業の社会貢献活動への意欲や環境ビジネスの展開とも関連するが期待の持てる分野といえよう。高専には、国立、県立、私立があり、制度的には環境系、森林系も参入可能である。
3)大学における人材育成
筆者は、林野庁退職後、平成4年の秋から10年間にわたり、東京大学(大学院)を振り出しに東京農工大学、多摩美術大学、玉川大学の4大学の非常勤講師を務めた。玉川大学が一番長く6年間のお付き合いになった。
玉川大学では環境関係の講義が聴けるということで筆者の森林政策学の講義を選択したいという農芸化学専攻の学生も毎年数名はいた。
大学における森林や林業の学習環境で一番変わったのは、女子学生の増加と大学院進学者の増加である。ただし今後の国際連携まで考えた大学での学習を考えると語学力の問題も含め、4年程度の勉強では不十分とも考えられるし、また修得すべき学問分野も広がってきているので従来の方式では、卒業後の活躍が十分に出来るとの保証はない。
ドイツの森林官の社会的地位の高さが良く話題になるが、ドイツとフランスの森林地帯を視察した際、ドイツの黒い森(シュワルツワルト)でわれわれを案内してくれた森林官の名刺にはドクターの肩書きがあった。ドイツの場合、一人前の森林官や営林署長として活躍するには、大学での履修や実務実習がわが国に比べてかなり長いといわれ、このような学識を要求されるということも社会的地位の高さと関連があろう。なお、ドイツではわが国の国有林に当たる州有林の営林署のみならず、環境都市で有名なフライブルク市では市有林の営林署があり、署長には当然、州有林と同レベルの実力が要求されるものである。なお、わが国に知己も多い、元フライブルク大学ブランドル教授の自宅に招かれた際、営林署長経験者であると聞いた記憶があり、ドイツの風倒木被害状況を知らせていただくなど交友関係が続いている。
フランスではどうか。やはり、筆者が同国を訪問した際聞き取った話では、森林技術行政官の育成には相当な力が注がれている。教育機関としてはナンシーの森林学校(林業大学校)が、良く知られているが、フランスの高等教育学校、いわゆるグランゼコールの一つで、ここに入校するには、先ず通常の大学で二年学んだ後、選抜試験を受けて合格した者が給費生の資格を得るということであった。ここでの教育期間は五年間で、わが国流でいうと七年間の大学教育を受けて、上級森林官に任命されるということである。
知人のデピエール氏もナンシーの森林学校出身で、退職前は、ナンシー近郊にある欧州全域を対象とするフォレスターのトレーニング機関の長をしていた。日本からの希望者があれば受け入れたいとのことであった。退職後は、ブルターニュに住み18ヘクタールの山林を購入し、植林活動などをしており、数年前に筆者もホームステイをして林業談義をしてきたところである。
さてわが国の森林未来を担う専門家や技術者の育成はいかに行うべきであろうか。
一つには、学習歴の長期化及び内容の充実である。高校卒業者は大学、短期大学校などで学ぶことを考える。大学卒業者は大学院や海外留学等を含め学習歴をどのように積み重ねるべきか国際水準も考慮しての議論が必要である。この問題は、官庁・企業における定年設定等とも絡む問題であり、後述したい。
4)社会人教育・生涯学習
ある県の山間部の町村職員研修会の講師に招かれて出かけた。講演後、意見交換の場に移り、今、地域で一番忙しいのは、町村役場の職員だという話が出た。すなわち、あらゆる問題が役場に持ち込まれる。持ち込まれる側としては、故郷を守るという使命感もあり、対応しているものの、正直な話、もう少し何とかならないかという率直な質問である。
当方も、質問ということで、人口、二千人とか三千人の町や村でも、住民の仕事は縦割りで、人口千二、三百万人の東京とあまり変わらないような、分業システムになっていませんか。林業関連で言えば、木を植える人、伐る人、加工する人、家を作る人、それぞれ皆違う職種になっていませんか。一同、頷いたところを見るとこちらの見立てが当たっていたようである。つまり、プロ化が進むと隙間仕事は、役場の職員に持ち込まれることになる。これでは、行政コストの削減もままならないばかりか、産業のコストの押し上げ要因にもなっているのではないかと思わざるを得ない。
一方、フランスのブルターニュ半島の人口三千人のコミュニティで聞いたところ、職員数は二十数名ということで、同規模のわが国の町村に比較すると職員数は少ないようである。結論を言えば、過疎山村の人材育成において目指すべきは、幾つかの仕事をこなせるマルチ型人材の育成やトレーニングではないかということである。ところが一人が小さな声で「だけどそういう教育(トレーニング)システムが無いんです」とつぶやく。たしかにマルチ型人間を育成するには、教育・育成システムの変更が必要である。
社会人については、最近、大学などが門戸を解放しつつあるほか、生涯学習を目指すグループも各地に増加している。
森林関係でも、今後、外国での実習等も織り込んだ機動性のあるトレーニング方式の実現などが望まれる。岐阜県立森林アカデミーでは二つのコースのうちの一コースについてはは社会人に門戸を開放しているものであり、 また筆者が学長として平成6年以来関わっている佐渡林業実践者大学は、移動教室型の小規模な組織ではあるが、地域の理解を得ている生涯学習タイプの人材育成組織といえる。
最近、テレビのインタービューで小池百合子元環境大臣は、若いとき自己研鑽にお金を使ったとの趣旨で答えておられた。
筆者の自己研鑽は役所の仕事を卒業してからになった。すなわち、大学に通ってドクター論文(森林の高蓄積高循環論)に取組むと同時に外国語の学習として、週一回、津田英語会に十三年、日仏学院三年、中国語教室六年(続行中)などのほか、ホームページは森林塾など数本の制作・運営を行っているというのが主な実績である。
さてドクター取得後考えたことであるが、社会人として活動しながらドクターを目指す人を支援出来ないかということを考えた。その結果、(社)国土緑化推進機構に平成11年「エコマテリアル・スカラシップ」がスタートした。爾来外国人一名を含む四名のドクターが誕生した。その一人、藤原敬氏はウッドマイウッドマイルズ研究会のほか、平成19年には、「森林政策を英語で語る会」を立ち上げ、現在事務局長として運営に当たっている。筆者も参加しているが、これに英語道場のニックネームをつけてみた。英語の実力を身につけたい方は歓迎したい。
5)国際人材の育成
日本は国際協力で多額の資金供与を行ってきた。しかし、それに見合う感謝や尊敬が得られていないという指摘がある。また人間の帰属意識は一に母国にあり、次いで名誉を与えてくれた国であるといわれる。博士号などもこれに類するものとして受け取る向きも多い。
途上国における森林分野の学位取得者について尋ねてみると、欧米豪などでの取得が多く、日本でというケースは極めて少ない。この点一考を要する。
国内においても次世代を担う若者に焦点をあて、今若者が目標を見失っているといわれるが、目標と教育・トレーニングシステムが同調していないことから生じているともいえる。筆者は現在、FASID(国際開発高等教育機構)の評議員として人材開発に関心を深めているが、現在は、FASIDによる国際開発大学院共同プログラムにおいて、政策研究大学院大学と共同で、平成12年度以降、平成19年3月まで、197名の修士号取得者と博士課程進学者16名、博士号取得者は7名を輩出している。
ただ、海外からの留学生は、開発途上国の行財政政策担当者、研究機関、援助実施機関の職員が多い。日本人も学んでいるが政府や援助機関職員などが主となっている。関係者の努力にもかかわらず、絶対数が少なく、環境や森林などの分野まで手が回らない状況にある。
今後の人材育成については、数とともに途上国のみならず、わが国の人材育成も含め、複眼的視野と知識を有する人材の育成が急務であり、抜本的改善策が必要である。
解決策の一つとして、森林や環境面では、世界各地に広がりつつある、モデルフォレスト運動のような、産官学民の地域協働運動の促進が効果的である。わが国でも京都モデルフォレスト運動が平成18年から本格的活動に入ったが、国際ネットワークを活用した大学間の交流などが、人材の育成の場としても有効である。
(注、アルバータ大学再生可能資源学部スペンス主任教授は、学生の交流には積極的で、今後具体的な話があれば応じる用意があるとのことである。写真は田中教授提供)
目標テーマも、再生可能資源管理、森林認証、ステークホルダーの連携、野生獣との共生、森林景観の持続、バイオダイバーシティ、気候変動対策、森林コモンズ、水循環、エコツーリズムなど国境を越える課題が急速に増加している。
6)これからの方向
これまで記述したことからもわかるように、これからの人材育成には総合的な対策が必要である。単なる学習期間の延長や企業等の所属組織の中でのトレーニングの充実などでは根本的な打開策とはなり得ない。
しかし実態となると、行政や実務に携わる技術者で大学院終了者などの長期学習者が目だって増加しているとは思われず、組織内においても、官庁などでは過去に比較して、むしろ業務繁忙などの諸事情により、海外研修や留学なども却って低下していると考えざるを得ない。民間企業でも林業(山林)部門の縮小などが進行しているのではなかろうか。
一方、高齢化社会の出現で、人々の実質活動年齢の延長に、企業や官庁等の定年の延長が追いついていないことから、定年後の人生が非常に長くなっている。
今後においては、森林系においても望まれる人材像は、マルチタイプの知識・技術、国際性を身に付けるための外国での学習、体験実習等の必要性から、修学期間の延長や履修課題の多様化は避けられない。
この6月、カナダのアルバータ州で31ヵ国の参加により開催された国際モデルフォレストネットワークのグローバルフォーラムに京都府立大学田中和博教授(京都モデルフォレスト協会理事)と共に出席したが、ディスカッショングループの組み分けの際、たまたま参加者の専門分野について司会者が挙手を求める機会があり、森林系が半数ほどで、他はソシオロジストなどが多いことが分かった。
(注、英・仏・スペインの3カ国語が飛び交うグループ討議で、中央はカナダ人のファシリテーターで3カ国語をこなす、左側の二人は、仏語とスペイン語の同時通訳者である。小澤撮影)
もう一つは、前述の事項と密接な関係にあるのが、既学習者の受入れ態勢である。
現在のわが国の行政機関や企業などについては、定年等との関係で必ずしも高学歴者にとって有利な状況にはなっていない。この解決策として定年制の延長検討、生涯学習の普及・支援、再チャレンジ方式の浸透、中途採用の拡大、定年後期間の長期化やNGO活動を考慮した専門分野を生かせる資格制度の充実が必要である。
なお、これと並行して、あらたな職域開発が必要である。地球環境時代の到来と共に企業の社会的責任(CSR)の一環として企業による地球環境活動への関心が高まり、各地における森づくりへの参入も増加しているが、森林を含む環境専門家の雇用が常態となってはいない。今後、どのような企業であれ、森林・環境等の専門家を抱えることを検討し、実行していただく時代が来ていると考える。
おわりに
月面探査機「かぐや」から送られてきた生物の住む青い惑星地球の写真を見て改めて感動した人が多かったことであろう。
人類をはじめ生きるものすべてが、共生している奇跡の惑星といえる地球に「愛情」を覚えても不思議ではないとも思う。
しかし一方、人類は有史以来、森林を半減させたといわれている。われわれ人間は、少しでも地球の緑を回復させる責任があるのではないか。
このため、森林技術のたゆまざる発展と同時にグローバルな観点からの森林の持続のため、一人でも多くの人が傍観することなく行動者として参加していくことが重要である。
森林の減少、劣化、砂漠化を停止させ、さらに回復措置を講じていくことは容易ではないが、このことは人材育成の成否に掛かっている。
同時に、あくまでも汎地球的な視野で現実の森林や林業及び地域に生じている事象を的確にとらえ、森林及び自然との共生の原点を常に見据え、協働の精神で行動することが重要であると述べて本稿の締め括りとしたい。
(以上、平成20年6月29日、小澤普照記)