森林インストラクター制度創設の頃の思い出


森とむらの会会長、元国鉄総裁などで知られた高木文雄先生のご逝去が平成18年2月報じられた。
高木先生には、森とむらの会を通じて、いろいろご指導をいただいたり、またかつて先生が月刊誌「公研」に国有林経営について言及された際、筆者の所見を投稿して掲載していただいたこともあり、長い間、お付き合いさせていただいたものである。
その間、一番思い出に残っているのは、森林インストラクターに関係することであった。
それは、筆者が平成2年、林野庁長官に就任し、森林インストラクター制度の創設をすすめていた時のことで、ある日長官宛の分厚い封書を先生からいただいた。
内容は、当時先生が力を入れておられた神奈川県森林インストラクター制度がいよいよ実現というところで、林野庁が森林インストラクター制度を発足させると名乗りをあげたのは、突然かつ拙速というもので、再考を促すという趣旨であった。
担当者を呼んで聞くまでもなく、突然とか拙速というのは全くの誤解に基づくものと判断した。
事実、既に4年ほど前、筆者が指導部(現森林整備部)長在任時に計画課を中心に構想が練られ、私自身いち早くその必要性を感じ、関係者を激励してきた経緯があったからである。
しかし誤解を解くことは必要と考え、先生には直接加わってはいただかなかったが有識者による研究会を設けそれまでの経緯等を詳細にわたって説明し、意見交換をおこなうことで、最終的には先生にもご理解をいただき平成3年度から目出度くスタートし、現在に至ったものである。
なお神奈川県独自の森林インストラクター制度については、平成15年度までに260名強のインストラクターが生み出されたとのことである。
以上のほか、当時筆者は、国有林の経営再建の課題を抱えていたことから、大蔵大臣室への出入りをお許しいただくなかで、橋本龍太郎大臣に各種森林政策についてお話しさせていただいていた。
ある日、森林インストラクター制度について触れたところ、大いに賛同され、ご自身関係が深いボーイスカウト幹部がインストラクターの資格取得をすることが好ましいこと、さらに大臣ご自身もインストラクター試験を受験したいとのお話しをいただいた。
「では私が試験官になりまして、大臣に受験していただくことにしましょう」とその場は、冗談めかしてお応えをし、役所に引き上げた。
後日、橋本先生及び山中寅文氏(故人)のお二人が福田省一レク協会長(当時)から名誉インストラクターの称号を贈られたことなどが懐かしく思い出される。
森林インストラクターの活動に対する社会の期待がますます高まっていると聞くこの頃、インストラクターの皆様が期待に応えてご活躍されることを心からお祈りする次第である。
                                         (平成18年5月17日、小澤普照記)
注、本文は、平成18年3月「森林インストラクター会報」に掲載された「制度創設の頃の思い出」に若干の加筆をさせていただいたものである。  


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