中国での国際森林フォーラムに参加して


平成3年(1991年)のことになるが、横浜で、世界シニアフォレスター会議(ITTOとの共催)が開催された。
林野庁が音頭取りをしての森林国際会議は、その後も名前を変えながら続いている。
一方、2005年から中国でも森林関係の国際フォーラムが始まった。
会議名は、中国森林対話フォーラム(The Forest Dialog Forum of China)という。
昨年、2005年8月に第一回会議が開催された際、筆者も招かれ、日本の林政の転換について、森林・林業基本法を中心にプレゼンテーションを行った。
今年(2006年)に入って4月に第二回が開催され、さらに9月に三回目がFAOやGTZ(ドイツ)なども参加し、百名規模の人数で開催された。
第三回のフォーラムにも招かれたので、出席し、今回は、森林及び環境を核とした、地域協働運動であるモデルフォレスト運動を取り上げ、京都モデルフォレスト運動の進展状況について約30分にわたり、プレゼンテーションを行った。
中国での講演は、2000年以降で5回を数える。
北京で3回、浙江省臨安市(中国モデルフォレスト所在地)及び山西省太原市でそれぞれ1回ということになる。
因みに使用言語は、英語4回、日本語1回である。
日本語使用は、山西省での講演であるが、現在ここ、黄土高原において、5千ヘクタールに及ぶ無償植林プロジェクトが実行中であり、好成績をあげていることもあって、森林問題や林業技術各般にわたり、できるだけ詳細にということで、3時間の講演となったため、優秀な省林業庁の通訳に恵まれ日本語で行った。
しかし、中国での国際会議ということになると、基本的に中国語・英語の同時通訳になるので、中国語学習歴4年程度では、まだまだ英語でということになる。
日本での国際会議でも通常は、日英同時通訳での運営ということになるので、いくら美しい母国語を話す人でも日本人以外は英語で話さざるを得ないのである。
ところで、中国での講演機会が増えているが、英語の上手下手はともかく、相手に迎合せず率直に話をすることが大切だと考えて実行している。
したがって、山西省における植林に関しても、日中協働の植林が成功している理由として、今までの失敗例が、成功を急ぐあまり、基本を無視した実行姿勢、すなわち、苗木の根を天日にさらしたり、雨量が少ないにも拘わらず、植穴を十分深く掘らないで植えてしまうなどの行為がもたらしたもので、これを冷静に見直して取り組むことが大切と思うと直裁に述べることで、相手も真剣に耳を傾けることが分かった。
さて京都モデルフォレストについては、京都府森林条例の制定(平成18年4月施行)と、モデルフォレスト運動の中核体となる、社団法人京都モデルフォレスト協会の設立(11月早々の設立予定 )を車の両輪として、京都流(京都スタイル)の方式で地域総ぐるみの協働運動を展開する方針であることを述べた。
さらに今後、京都モデルフォレスト運動も国際ネットワーク(事務局カナダ・オタワ)への加入が予定されているため、世界及びアジアの各地で展開されているモデルフォレスト運動との連携の重要性について言及した。
なお、2日目午後の分科会は、自然の保全、国有林経営改革、林権政策の3部門に分かれて行われた。
筆者は、林権政策(森林経営権を民間に一定期間与える政策)の分科会に参加したが、林権政策分科会二十数名の参加者のうち外国人は筆者一人であったため、全体のやり取りを英語にするかどうかの意見交換が最初にあったので、全体は中国語で結構だが、筆者の発言は英語を主に用い一部中国語の混合方式で行うことにしてはどうかと提案し開始した。
お陰で、ファシリテーターのユーモアを交えながらの運営など、中国人同士の会議の雰囲気を体験できたのは収穫であった。
ところで、中国に限らず、国際会合で大切なことは、食事の際などの情報交換である。
今回は、アジア地域の中国、タイ、フィリピンなどのモデルフォレストの立ち上げについては、日本政府からのFAOに対する拠出金によったが、発足後は日本からの支援がうち切られ、活動資金の確保に悩んでいるとの声が聞かれた。資金確保問題は、今後の課題の一つであるといえる。
また中国のモデルフォレスト関係者からは、設置個所を増加させたいと考えていること、さらに現在の臨安モデルフォレストのような国家級のもののほか省級のモデルフォレストの設置を検討しているとの話もあった。
(平成18年10月19日、小澤普照 記)

参考  http://infowood.jp/beijing-forum2006-report.html(フォーラムの状況)

     講演内容を整理した英文 


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