異常気象と屋敷林


今年は異常な暖冬ということで、郷里上越市に設けた実践塾(上越森林環境実践塾)での炭焼き活動も、例年は積雪もあるので、活動開始は四月からとしているところを、今年は三月から始めようかと関係者と相談していたところ、昨二月十五日夕刻、郷里から電話が入った。
強風で実践塾周辺の屋敷林のスギの木が大揺れで、倒木の危険と隣家に被害を及ぼす恐れがあるという。
東京でも、JR京葉線が強風のため運転見合わせの報道があった。
さて、このようなことは以前にも経験済みなので、先ず製材工場に電話を入れ、至急現場に急行してもらうことを約束し、その後、隣家に電話を入れたところ、スギの木数本の根が持ち上がって大揺れに揺れているので大変不安であるという。
実は二年前にも強風が吹き、緊急避難的な伐採と今後を考えた伐採を行い、その経緯は、本随想欄で「林業の壁」いうテーマで書かせていただいたところである。
地元の人たちに聞いてみても、最近まで強風で大きく育った木が倒れた記憶はないという。
現在の主力の樹木がおおよそ50年生で、住居改築の為、50年前の伐採の記憶があるので、この当時のスギも50年生であったとすると少なくとも百年間は強風災害は無かったようである。
さて、製材工場と再度打ち合わせをおこなったところ、風が吹き荒れているうちは手の打ちようがないので、収まり次第手を打ちたいということであった。
「前回方式で良いですか」というので「それでお願いします」と答えた。
前回方式というのは、伐採、搬出、集積費などの諸掛かり経費と木代金との差し引き計算になるが、結果的には、木一本当たり、おおよそ一万円程度の経費負担になる。
さらに問題は、これには、大量な枝や葉の処理については集積までで、それ以後の処理は含まれないということである。これを仮にゴミ処理にまわすとすればトン当たり8千円はかかるということである。
自分で処理するには、炭に焼くことなどが考えられるが、スギの枝は曲がっているので、長さ50センチほどに切りそろえて炭焼き窯にうまくおさまるかどうかが課題である。
昨年までは、枝を切り取った直径10センチ位までの幹の部分を薪割り機などで割って製炭したが、今年は曲がった枝での炭焼きに挑戦してみたいと思う。
太さ何センチまで焼くことができるか、曲がり材の並べ方などは研究事項となろう。
さてそれでも尚かつ、かなりの量の葉が残ることになる。
スギの葉が、他の植物資源などとともにバイオエタノール生産に利用されれば、地球温暖化対策の一助ともなり、山間地や里山林、屋敷林地域での資源利用にも希望が出てくることになる。
このような地域資源の利用には、産・官・学・NGOなどの協働的な取組が必要となる。
2006年から本格的に活動を開始した京都モデルフォレスト運動などが生物由来資源の有効活用などにも力を発揮してくれれば、石油資源の節約にもなり、温暖化と無関係とは言い切れない異常気象現象の結果、心ならずも伐採を余儀なくされるスギの運命にもいささかの救いがあろうということになるとも思える。
また、かつて森づくりに励んだ先人達の心も少しは安らかになろうというものである。(2007年2月16日、小澤普照記)


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