森林随想
お色気が不足していませんか・佐渡島の景観論
平成6年から佐渡島に通い出して12年目になった。佐渡林業実践者大学学長という肩書きである。
初代故近藤元次学長から通算26年の歴史がある。修了者合計800名を数える。受講者には毎年良い島づくりや森づくりに貢献するよう激励してきた。本年(平成18年)2月に修了式に行って恒例の講演をしたが、少しでも講演の効果が上がるよう、抽象論は止めてすべて具体論で行くことにした。
今年のテーマは、佐渡の森林改造論とした。いろいろな角度から改造について述べたが、そのうちの一つが美しい景観としての森林改造である。
夕刻から開かれた謝恩会の席上、一人の修了生から発言があった。
学長の森の中にも花を植え、花木を植えろとの話に動かされました。今までそういうことは考えたことも無かったが、今年は自分の山林をアジサイで飾ることにチャレンジしますという。
早速反応があったことに感動した。そもそも何でこんなことを言いだしたかというと、佐渡に来るたびに聞かされる話は、溜息混じりの、観光の島でありながら、年々訪問客が減り、今では一年間70万人にも満たないという。島の振興策として空港の整備を進めたいという。
ほかにアイデアはないんですかと聞いてみても、明確な反応はない。
そこで、自分の目で検証してみることにした。
先ず新潟港から両津港に向かう。島が近づいてくる。山が見える。森林・緑はある。
ただ冬季ということか、黒っぽい感じがする。
いよいよ到着、佐渡汽船のターミナルからお土産店が並ぶ通路はまずまずの感じである。
歓迎アーチはない。土産店街の入り口に歓迎の看板はあった。ただし、「いらっしゃいませ」でも、「めんそーれ(沖縄)」でもない。文字通り「歓迎」の文字であるが、目立たない。しかも、かなり古そうだ。
外に出る。街路樹はあるが、よく見られる色彩豊かな花はない。注意してみると小さな椿であろうか紅い花がちらりと見えた。冬でもサザンカや椿で明るくすることは出来るはずである。
花が迎えるということは、人で言えば笑顔で迎えることに通じると思う。
車に乗って両津の街を通る。佐渡のメインストリートである。家並みは、これからブームが来そうな昭和村の趣で高層ビルなどは見当たらないところはとても良い。
ところが家の前にも窓にもプランターや花飾りがない。確か夏場に来たときも、沖縄辺りで受ける明るい花の印象は無かったように思う。こういう話を土地の人にいうと○○地区は花一杯運動をやっていますという。
住民一人一活動の全島運動にすれば良いのにと思う。
国道を通ってトキで有名な新穂に向かう。水田が広がる田園地帯は素晴らしい景観である。
ただ花街道の構想は無いようである。里山の地域に入る。松食い虫にやられた枯れた松の木は目に付くが、美しい森を探すのは難しい。そうそう小木の近くの椎野さんのアテビの森は素晴らしかったですね。
分かりましたか。要するに佐渡島はお色気が不足しています。空港整備も良いですが、並行的に全島を、四季を通じてお色気を絶やさないよう、花や花木で包みましょう。観光客の方にも手伝っていただけば、また来ていただけるでしょう。佐渡からもよその地域の景観づくりのお手伝いに行く、景観づくりの専門家人材づくりは実践者大学で行うようにしたらどうですか。要するに島外との相互交流を活発にする。リピーターを増やす。これがないと空港の威力もうまく生きて来ないと思うのです。いずれにしても先ず、市長さんや地域振興局の幹部の方々、是非とも佐渡の各港、すなわち各玄関口から、佐渡のお色気点検をされますようお願い申し上げます。
(平成18年3月3日・桃の節句に記す 小澤普照)
(参考) 花木等の開花時期についての地域研究(佐渡)が必要と思います。
例えば、春秋二季咲きのサクラは筆者のベランダ(渋谷区)では、正月に咲きます。今年は寒かったせいか少し遅れて2月に咲き、3月に入った今も咲いています。上野公園の彼岸桜も2月の終わりか、3月はじめには咲き出します。
ウメ、マンサク、ろうばい、こぶし、木蓮なども、佐渡ではいつ頃開花するでしょうか。皆で研究しましょう。
東京渋谷区の自宅付近の小公園の花壇(平成18年3月)
同じく小公園のサクラ(ソメイヨシノ・平成18年3月)
東京渋谷区自宅庭のコブシの花(平成18年3月)
東京文京区東大構内の木蓮の花(平成18年3月)