第10号 自分の物は自分で持とう

                                   


私の子育ての信条として、自分の物は自分で持たせるというのがあります。
当たり前と言えば当たり前の話です。
が、私は人に平気でものを持たせる図々しいガキをたくさん知っています。


よその子を連れて公園などへ行ったとき、たとえば暑くなってコートを脱ぎます。
「持ってて。」
と、当然のことのように私に渡す子がいます。
そんな時、私は、置く場所があればそこに置くようにすすめます。帰るとき、もう着たくないと言って私に持てせようとします。私は、腰に巻くか着るかどちらかを選ばせます。どちらもイヤなら、捨てて行けと言います。
オモチャや自分が拾った石まで人に持たせようとする子がいます。
自分で持つのがイヤなくらいなら、捨てて行けとすすめます。
すると、「うちのお母さんはやさしい」とか「おばちゃん、いじわる」とか言う子もいます。

嘆かわしい限りです。
自分のものを自分で持つことが当たり前になっていない子にとって、それがたとえ自分のものであっても、自分で持つと「持たされた」と思うのです。
お母さんが親切に子どものものを持ってあげる。
それで、子どもは親切で思いやりのある子に育つのでしょうか。
いいえ、母親を便利屋としていいように使うだけでしょう。
自分のものさえ持てない子どもの心に思いやりなんて育たないのです。

さて、子どもってどのくらいのものが持てるでしょうか。

私は、学生時代バイトでよく幼児教室のキャンプに引率しました。2泊3日、15人くらいの幼児と過ごします。
2歳の琢ちゃんという男の子がいました。まだオムツもとれていない最年少の彼は、ママと別れて一人で参加していました。
芋掘りに行きました。自分の頭ほどもある芋の入ったビニール袋をぶらさげて琢ちゃんは一生懸命歩いていました。それは大変そうでした。私は、「持ってあげようか。」と、声をかけました。ところが、帰ってきた言葉はこれでした。
「いい。自分のだから。」
そして、琢ちゃんはバンガローまで一人でその袋を持ちました。
私はすごいと思いました。
「持てるんだ。2歳でも結構重たいものを持って歩けるんだ。」

うちの娘が2歳半くらいの時のこと。ある日、家族3人で日帰り旅行することになりました。その日は快晴。雨なんかとうていふりそうにありません。ですが、娘は買ったばかりの傘を持って行きたがりました。
「お父さんとお母さんは傘を持ちたくない。自分で持つなら持って行っていいよ。でも、途中でやっぱり持ちたくないといってはダメだよ。」
そういう約束をして出かけました。
娘は大喜びでした。一日中お気に入りの傘を持って歩きました。駅のベンチに置いた時は持ち忘れるのではと思いましたが、その時さえも忘れることなく、自分で気づいて持ちました。

何処へ行くにも自分の荷物を持たせます。リュックの中身は本人に任せます。持たせたいものがあれば「これも入れてね」と言って持たせます。
車でスーパーへ買い物に行った時など駐車場から自宅まで一人一点なにかしら買った荷物を持たせます。ゴミを出しに行く時も同じです。
下の子など、小さいながらも「持たされた」どころか自分だって持ちたいという気持ちでいっぱいです。

中学生くらいの子を3人持つお母さんが一人でたくさんの荷物をかかえているのに子どもたちは誰もなにも持っていないという光景に遭遇したことがあります。お母さんが財布からお金を出さなければならなくなって、姉妹の一人にひとつの荷物をもってもらおうとすると、その子はとてもいやな顔をして、別の姉妹に「あんたが持ってよ。」と押しつけていました。別の子たちもみんなイヤーな顔をしてだれも積極的にそれを持とうとしないのです。
お母さんが気の毒だとは思いませんでした。自分が育てた結果だと思いました。

自分の荷物、自分で持ってますか。
荷物係りのジイヤかバアヤがいるなら、もちろん、持たなくっていいです。

                                  

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