第28号  結婚観



あなたは、何故結婚したのですか。
または、何故結婚しないのですか。
私は結婚して間もない頃、本当に結婚してよかったとよく思いました。
何故、結婚してよかったのか。
その第一番は夫と寝泊まりしても人からとやかく言われなくなったことです。
結婚前は一応親には処女のふりをしてなくちゃいけない時代でしたから、
彼の家にやたらと泊まりに行くことはできませんでしたし、
それがばれたりすると自分の人格が貶められるような強迫観念さえ私の中にはありました。
 仮にラブホテルから出てきたところを人に見られたとしても、恋人同士のときは
「あんなところでうろうろするな。」
と、忠告するようなセクハラ上司でも、結婚してたら
「仲がいいんだね。」
なんて誉められたりする・・・
そんなところが私にとって結婚する大きな理由の一つだったのではないかと思います。
結婚とセックスの一致、まさに純潔教育の賜でしょう。

その次に結婚してよかったと思うのは、人から「結婚しろ」と言われなくなったことです。
私は夫とは19歳のころからのつきあいで、ずっと結婚せずに付き合っていました。
結婚する気のない若い彼に対して私は彼と結婚できてもできなくても
つきあえたその日までが幸せだったと思えればそれでいいやと思うようになっていました。
 でも、世間様はそんな私の言い分なんか聞いてくれません。
「早く結婚しなさい。」
母に言われたときは「うるさいなあ」と思いながら適当に相づちうってりゃそれで済みました。
が、
友達から言われるとさすがにむかつきました。
「どうして彼と結婚しないの?
結婚する気がないような人といつまでも付き合ってることないわよ。
自分が歳とっちゃうじゃないの。」
彼に結婚してもらえないかわいそうな女、
或いは男に遊ばれているだけの哀れな女、
そんなイメージで友達は助言してくれました。
 ある友達は「永すぎた春にけじめなさい」というタイトルの記事が載っている
女性雑誌をわざわざ私のために買ってくれました。
 また、ある友達は
「早く結婚しなよ。私はあなたに幸せになってほしいのよ。」
と、言いました。私の幸せを祈ってくれたその友達は
未だかつて一度も私のためになにかをしてくれたことはありません。
私の幸せだけを祈ってくれていたようです。
こんな有り難い友達の忠告は私にとっては不愉快以外のなにものでもありませんでした。
ですから、結婚した当初、これらのうるさい助言から逃れられたことが
嬉しくてたまらなっかったのを覚えています。

夫はなにを思ったのかある日、突然、
「もう、めんどくさいから結婚しちゃおうかー?」
と、言い出しました。
つまり、私は、そういう言葉でプロポーズを受けたのです。
私は、
「そんな軽はずみな言い方では気に入らない。」
と言って相手にしませんでした。
すると彼は
「ぼーくーとーけーっこんしーてーくーだーさーいー。」
と実に重々しく太い低い声で言いました。
晴れて私たちは結婚しました。

デートしても別々の家に帰らなくてよくなったこと、
一緒に暮らしていても誰からも文句を言われなくなったこと、
結婚て便利だと思いました。
結婚式の後、みんなに見送られて今夜はどこに泊まるのと聞かれました。
昨日までは、処女のふりをしなくてはならなかったのに、
今日からは公然と気持ちのいいセックスが毎晩できるということに
私は深い感動すら覚えました。

つまり、私にとって結婚とは、
世間様からとやかく言われずに生きていけるためのとっても安易な「お札」のようなもの・・・でした。
おかげで、結婚以来誰からも結婚しろとは言われなくなったし、
彼とどこへ行ってもどこに泊まっても
「えぇっ? 彼とやっちゃったんだー!」
なんて言われずにすむようになって本当にしあわせです。



結婚して10年が過ぎました。
結婚を後悔したことはありません。
でも、もし、死別、或いは、離婚で、一人になったとしたら、
恋人は作りたいけど、結婚はしないと思います。
この歳になったら、もう誰も結婚しろとは言わないでしょうし、
もう、世間様のいうなりにはなりません。




TOPへ  会報一覧へ  前ページへ  次ページへ