第32号 結婚するなら

「結婚前ボーイフレンドならたくさんいた」と言う女性がいた。
週末のデート相手には不自由しなかった。
誰とは決まっていなかったが、週末一人ぼっちで過ごしたことなんてなかった。
が、彼女に対して一番熱心にアプローチしてくる男性が一人いた。
知り合って3ヶ月もすると、もう彼は結婚をほのめかした。
結婚は誰とでもよかった。
熱心な彼を見て思った。
「自分が彼を好きというより、女は愛されて結婚した方が幸せだ。」
それで、熱心な彼のプロポーズを受けた。2人の子どもにも恵まれた。
彼が自分の母親には全く頭が上がらないことを見抜いた彼女は、
頼み事があるときは、まず、お母さんに頼み、お母さんの口から言ってもらうようにしている。
それで、結婚生活はつじつまがあっているらしい。
でも、私の目から見ると、彼女は、どこか乾いている。
心にも言葉にも潤いがない。
大きなお世話だろうが、彼女の言動から、私は彼女の彼への愛を感じることができない。
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結婚するなら、尊敬できる人としたいという女性は結構多い。
尊敬と言っても、なにに尊敬するかは人によって違う。
頼りになるとか男らしいところとかに尊敬して結婚した人は、
長い結婚生活の中で困難に出会ったとき、
ダンナが頼りにならなかったり、男らしくない態度をとったりすると、
「だまされた、裏切られた・・・」という気分になるだろう。
私の知り合いで、「自分より偏差値の高い大学を出た人なら尊敬できる」という人がいた。
偏差値という露骨な表現に唖然とする人もいると思うが、この尊敬基準は案外鋭い。
なぜなら、大抵の場合、それは結婚後も変わらないからだ。
自分が留学でもして学歴が上がってしまったときは、尊敬できなくなり離婚するのかは知らぬが
「私よりいい大学を出たということは、少なくとも人生の一時期、
自分には絶対できなかったことがこの人はできた。そう思うと彼を尊敬することができるのだ」
と彼女は言った。
誰もがそういう基準で人を尊敬できるかというと一般的ではないが、彼女にとってはそうだということで、
これは案外、頼りになるとか男らしいなどという曖昧な尊敬より、わかりやすい。
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どんな人と結婚するかは大きな問題だ。
一番好きな人と一緒にいるのは疲れるという人もいる。
でも、一緒にいて疲れるというのは、
二人が居心地いい状態になっていない証拠であって、
それは、はなから、結婚相手とは言い難い。
私は、個人的には一番好きな人との結婚を勧める。
しかも、できるだけカッコイイ人。(あくまで自分の基準。”あばたもえくぼ”OK)
私はこの人と結婚したんだと自負できるような人がいい。
あまりカッコイイ人だと浮気が心配というかもしれない。
でも、結婚してもある程度の緊張関係があった方が面白い。
緊張関係を面白がれるまでには人間相当な修行がいるので、
大抵の場合は一緒にいて疲れない人とか楽な人というのがいいのかもしれない。
でも、長い人生、ずっと平穏というより、波瀾万丈っていうのも結構面白い。
だって、色っぽくてカッコイイ豊川悦司が家の中でごろごろしてるのと、
むさ苦しいそこらのオヤジがごろごろしてるのとでは、どうだろう。
トヨエツだったら許しちゃうけど、オヤジだったら腹が立つってこと、あるのではないか。
好きな人なら許せることも、それほど好きじゃない人だと非常にムカツク。
それが人ってもんじゃないでしょうか。
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一番よろしくないのは、
結婚してから「ホントは一番好きだったのは元彼だった」とほざくことだ。
はっきり言って、そういうのってセコイ。
そんな好きだったんなら、別れるなっつうの、元彼と。
第一、今のパートナーに失礼じゃないか。
終わった話をまだ終わってなかったかのように過去の幻にしがみつく。
現在に不満がつのればつのるほど過去が美しくなっていく。
元彼から電話でもあったら、もう大変だ。
「やっぱり私は元彼が一番好きだったの。」
なんて、たちまち、悲劇のヒロインの出来上がりだ。
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「女は愛されて結婚した方が幸せだ」って、本当にそうだろうか。
いかにも誰かに幸せにしてもらおうという気持ちが見え見えで私はどうも共感できない。
たいして好きでもない人に愛されてるからって、それがなにになるっていうの。
大事なのは、自分の心だ。
パートナーの気持ちが変わったら、それっきり。
あなたもわたしもお互い好きじゃなくなりましたって、そんな程度の結婚なんて不純とさえ思う。
長いつきあいの間には、お互い横道それたりぶつかりあったりするだろうけれど、
「だけど、アタシャアンタが好きなのよ」と、私は言いたい。
ドラマ「タケシくん、ハイ」で、タケシの両親は年中無休の喧嘩三昧。
なぐる蹴るの取っ組み合いさえする夫婦だった。
ある日、タケシの父さんがみんなの前で三々七拍子をした。
そのとき、タケシくんが「父ちゃん、カッコイイね。」とうれしそうに言うと、
母さんが「あたぼうよ、アタシの亭主よ。」というセリフがある。
私はあのセリフが大好きだ。
飲んだくれてひっくり返っても、
情けない顔しておろおろしても、
腹が立ってバカヤローと叫んだとしても、
ときたまカッコイイとき、心の底からニッコリ笑って
「あたぼうよ、アタシの亭主よ。」
と、私も言いたい。
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夫婦なんて、お互い迷惑かけ合い、
うっとうしくつきまといながら、
美しくもなく生きて行くんだ。
昭和初期の日本映画じゃあるまいし、
美しくきれいなだけの夫婦なんていやしない。
だけど、それが面白い。
それは、ホントに惚れてる人と一緒になれば味わえる。
使い古された言葉で失礼しますが、結婚はゴールではありません。
どんな夫婦になっていくかは結婚してからの二人の努力あるのみです。
愛とは、努力の賜です。
その努力ができるかどうか、
それは相手をこよなく好きかどうかにかかっていると思います。
みんなが結婚しちゃったからとか、周りがうるさいからとか、
好きな男に振られた腹いせなんかで結婚しちゃダメよ。
好きな人と一緒になっても心変わりすることもあるでしょう。
けれど、うんと惚れて、惚れて、一緒んなったら、
ちょっとやそっとで手放したくなんかならないもんよ。
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