第34号 新茶 その1
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新茶の季節になると、私の母は「北村園」の新茶を親しい人々に贈りまくる。
噂によると、贈られた人の方はというと、喜んでばかりいるわけでもない。
お返しをした方がいいものやらどうやらと悩む人もいる。
もったいながりやの年寄りなどは、高い新茶を有り難がるのはいいが、
もったいないからといって特別な日にとっておく。
が、年寄りに特別な日などそうそう来ない。
結局、新茶は茶箪笥の奥深くに眠って旧茶と化す。
実家でお茶を飲んだとき、夫が
「これ、北村園のお茶ですか。」
と尋ねたら、母はたいそう喜び、
夫は結構いいお茶を一袋もらってしまった。
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私はお茶をいれるのが苦手だ。
緑茶は60度とか番茶は何度とか言われても
お湯の温度がどのくらいかなんて検討がつかない。
何人分でどのくらいのお茶ッパをいれればいいのかもよくわからない。
急須の大きさに合わせたらいいのか飲む人の人数に合わせるべきなのか、
いろいろ考えると、さらにわからなくなる。
で、私の入れたお茶はどうもそうおいしくない。
名店街などのお茶屋さんが宣伝のために一杯飲ませてくれるが、
どうしたものかあれは大変おいしい。
私は、まだまだ修行が足りない。
だから、人が来ると、紅茶を出す。
紅茶はいい。
紅茶教室に3ヶ月通った近所の奥様の伝授によると、
紅茶の水は水道から浄水をジャーッと勢いよくやかんに入れるのがいい。
空気のたっぷり入った水がいいんだそうだ。
一晩寝かせた水やペットボトルの水じゃいけない。
で、あとは紅茶の葉の入ったポットに熱湯を注げばいい。
60度だ70度だと言われると迷うが、100度でいいなら迷わない。
だから、どうも紅茶を入れてしまう。
これが正しい紅茶の入れ方かどうかは知らない。
あくまでご近所の奥様の手法である。