第37号  仁王立ち特訓法



私の得意技は、仁王立ち特訓法です。
威圧的な態度で子どもを勉強させる恐怖の特訓法です。。
勉強机に向かう子どもの後ろに仁王立ちするところから、この名前がつけられました。
ピアノでも、その得意技を行います。



ある日、私がピアノを弾いていると、私の真後ろに夫が立っているのです。
「なによ。」
と、言うと
「いいから、弾きなよ。」
と、夫。弾き始めると、
「もっと、柔らかく、流れるように。」
「つっかかっても、気にせず、止まらず。」
「あ、そこ、もう一度弾いて。」
などなど、後ろから、夫が口うるさく、ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言うのです。
「うるさいな。」
と、言うと、
「あんた、○○(娘の名)にいつもこうやってんのよ。○○、イヤだろうなあ〜〜〜。」
っつうんです。


今年の4月、娘はめでたく小学校3年生に進級した。
ベテランの男の先生が担任になった。
新しい先生にも、すぐになじんで「いいクラス」であることは手にとるようにわかった。
そのうち、漢字テストファイルなるものを持ち帰ってきた。

娘は、なんのためらいもなく、そのファイルを私に見せた。
ファイルには、すでに4枚のテストが貼られていた。
2点、3点、2点、3点
「おおっと、勉強不足でしたね。」
「2点とか3点て、悪い点?」
「そうね、いい点とは言えないでしょ。」
「でもさ、おかあさん、これね、10点満点だよ。」
知っとるわ!!そんなもん。

3年生になると、一つの漢字でも、いろんな読み替えがあって、結構難しい。
が、聞くところによると、10点取る子はちゃんと10点取ってるらしい。
しばらくは、復習させるのが精一杯で、なんとか、間違えた漢字を覚えていけばいいか・・・と思っていた。
そのうち、ゴールデン・ウィークがやってきた。
「ウフフフ・・・、今に見ていなさい。
うちの子だって、蝶が舞うように10点を取り始めるんです!!」
私は本気でそう思っておりました。
ゴールデン・ウィーク中、毎日漢字の勉強をさせたのでありました。
1字書いては、「はあ〜〜〜」とあくびをしている我が子の姿を見るにつけ、
「うーーん、どうもこの子は父親に似たようだ」
と心で嘆き、仁王立ちによる特訓をしたのでした。

  

ゴールデン・ウィークが終わり、新しい週がやってきました。
早速、漢字のテストが行われ、娘はテストを持ち帰ってきました。
「お母さん、7点だったよ。」
と、娘は喜んでいる。
ゲーーーー!!7点かよ。
あんなに練習してって、7点とは。
実は、お前はアホですか?

心で思いつつも「がんばったね」と言ってあげた。
娘は、にこやかにさらに続けて言った。
「お母さん、A君はね、8点でもお母さんに叱られるんだって。
2点でも叱られないなんて、いいなあって言ってたよ。」
「あ、そう。」
少々空しい。
「あのね、叱ってる暇があったら、お母さんは、君に漢字の練習をさせます。」
と、言っておいた。娘はさらに言った。
「A君ね、かわいそうなんだよ。はじめ10点だったのに、8点にさがったんだよ。」
「そりゃ、残念だったね。」
かなり空しい会話であるが、
娘はマジでA君が気の毒でたまらないらしい。
なんてヤツなんだ。

父親が仕事から帰ってくると、娘はすぐに7点報告をしたらしい。
あとで聞いた話によると、父親は「7点か。ま、ちょうどいいくらいの点だ。」と言ったらしい。
私が夫に「どこがちょうどいい点なのよ。」と、尋ねると、
「3年生の漢字テストで、いちいち10点取って、どうすんのよ。
7点くらい取れてりゃ、そのうち、全部、覚えるって。
こんなんで目くじら立てて、勉強したってしょうがないでしょ。」
と、のたまう。
夫が言うには、落ちこぼれるのは、まず、算数なんだそうだ。
算数さえついていければ、心配することないんだそうだ。
漢字で落ちこぼれたヤツなんかいないんだそうだ。
(注:あくまで、夫の説です。)

仁王立ち特訓法の成果が出たのか、ここ何回か続けて10点を取ってきた。
が、一向に自ら進んで勉強する様子のない我が子である。




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