第41号 専業主婦

同窓会で、10年ぶりに旧友に会った。
「今、何してるの?」
旧友に尋ねられて、私は「専業主婦よ。」と答えた。
旧友も事情があって仕事を辞めていた。彼女は私に言った。
「無職でしょ。専業主婦という職業はないのよ。私は無職。」
それでも私は言った。
「あなたは無職かもしれないけど、私は専業主婦なの。」
私は、仕方なく専業主婦になったわけじゃない。
覚悟を決めてなったから、職業欄にだって、専業主婦と堂々と書く。
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自分が専業主婦で
「専業主婦という言葉は嫌い」「もっといい呼び名はないかしら」
などという人は専業主婦としての覚悟がたりません。
「家の中の仕事だって、お金に換算すれば、相当なものなのよ」
なんて言いたがる人がいますが、
じゃあ、誰が専業主婦にお金をくれますか?誰もくれないじゃありませんか。
専業主婦とは、ダンナの給料で食べさせてもらう生き方を選んだ人のことです。
そこんとこ、ちゃんと、しっかり、自覚するべきです。
きれいごとや言い訳を言って、自分の立場をごまかしてはいけません。
「経済的自立をダンナに任せている」ということは隠しようのない事実です。
私もそれなりに家の中のことをしている・・・そうでしょうとも。
家の中の様々なことを行うことを生活的自立といいます。
生活的自立を専業主婦は果たしています。
男は外で、女は内で。
それぞれ自分の仕事を補い合い、共に家族とやっていく。
男女役割分業と言います。
専業主婦になったということは、どんな理由でなったにせよ、男女役割分業を受け入れたということです。
そういう覚悟を持つべきです。
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私は、専業主婦になる前、
世の男たちと同じようなイメージで専業主婦を考えていた。
どんなイメージかって?
「毎日、玄関マットを洗うヒマのある人」
一日中、家にいて家の中のことをしているのだから、
家事が完璧にできて当たり前だと思っていた。
でも、やってみたら、そうでもなかった。
別に、昼日中、お茶飲んで、煎餅かじって、TVばかり見てるわけじゃないのに、
一日は、あっという間に過ぎていった。
子どもが生まれたら、尚のこと。
朝から干し始めている布オムツの最後の1枚を干し終わったのが、
夕方の5時だったってこともある。
でも、そういう苦労は、外で働くダンナ衆には、理解し難い。
子どもが生後6ヶ月くらいのときだった。
夫はいつも10時ごろ帰り、それから晩ご飯を食べる。
夫の食事の支度をしてから、私はソファーにかけて本を読みながら、
「ああ、眠い」とか「疲れた」とか言った。
そしたら、夫が突然怒りだして、
「眠いんだったら、本なんか読まないで、早く寝ればいい」とか
「好きで子育てしてるくせに疲れたなんていうんじゃない」とか言い出した。
なにそれーーー!?と、思った。
子どもがいなかったときのように自由気ままに遊べないことを夫は不満に思っていた。
二人で話し合って子どもを作ることに決めたはずなのに、
「君が欲しがってるから、作ってやったんだ。」なんて言い出した。
「欲しいものを手に入れて、楽しい子育てをしているくせに眠いとか疲れたなんていうな。
そんなの健康管理ができてないだけだ。」と夫は言った。
私は、負けずに言い返した。
「それじゃあ、好きな職業についた人は、疲れたと言ってはいけないの?
好きな職業についた人には、休日はいらないの?
専業主婦は、夜の10時に疲れたとか眠いとか言ってはいけないの?」
あらゆる場面で二人の考えに亀裂が生じ、いつの間にか歯車がかみ合わなくなっていた。
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子どもが生まれるとなにかと忙しい。
情緒不安定にもなりやすいし、慣れない育児でてんてこ舞いだ。
近くに相談したり、手伝ってくれたりする人がいればまだしも、
一人でやっていると、不安や不満でストレスがたまる。
せいぜい、仕事から帰ってきた夫にグチなり、不安なりを聞いてもらえたら、随分、救われる。
男たちは、妻の疲れが理解できない。
なぜなら、妻の仕事が簡単そうに見えるのだ。
「いくら子どもの世話が大変といっても、自分の会社の仕事より大変なわけがない」と思っている。
「だって、それが証拠には、オレには給料が支払われる。お金を稼ぐって大変なんだぞ。」
「子育てが大変たって、赤ん坊おぶって『おお、よしよし』ってオムツ変えてオッパイやってりゃいいんでしょ。
なにが大変だよ。昔、子守は子どもの仕事だったんだぜ。」
男たちは、そこまで口に出したり、思ったりしてるつもりはないかもしれない。
けれど、多かれ少なかれ、「オレはお前より大変」「オレはアンタより疲れてる」
という比較論が心の奥に隠されているのは間違いない。
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私の場合、「夫婦で遊ぶ時間を持つ」ということで乗り越えてきた。
夫婦間の亀裂を立て直すにはこれしかなかった。
夫と二人きりの時間を家の中でも外でも作った。
少しくらいなら、子どもを犠牲にしてもいいと思った。
子どもは自分で生きていくけど、私たちの関係は壊れたら、それまでだ。
デートは、はじめ失敗ばかりだった。
やっと時間を作って二人きりになっても、結局、喧嘩して気まずくなって帰ってきた。
何度も何度も同じ失敗をした。おいしい料理もまずくなった。でも、やめなかった。
何年もかかって、だんだん、仲良くなれた。
仲良くなってくると、不思議なもので、お互い心を譲りあえるようになった。
私は、基本的に家事を夫に頼まない。
なぜなら、私は専業主婦だからだ。男女役割分業を受け入れたのだから。
だけど、たまに、仕事の帰りが早いときなど、頼んでなくても、夫は、
ティッシュやトイレットペーパーなどのかさばるものや重たい野菜などを買ってきてくれる。
それから、土曜日、1週間分の買い物につきあってくれる。
日曜日は、たいてい夫は24時間寝ている。
でも、普段、死ぬほど働いているので、子どもたちも起こしにいかない。
月に1度くらい、子どもを夫に任せて私は日曜日の午後を自由に使う。
父子3人だけの関係というのも父子にとっては結構楽しい。
もちろん、家族4人そろって出かけることもある。

妻が疲れたと言えば、夕ご飯の支度をしてくれ、
日曜日は、公園へ子どもを連れだし、妻に一人の時間を作ってくれる、
子どもをお風呂に入れてくれるし、寝かしつけるのもうまい。
何でもやってくれるパパがいた。
でも、妻は言った。
「よくやってくれるけど・・・・でも、」
「でも、なんなの?」
と私が尋ねると、
「でも、私、夫に対して不満だらけなの。
私が爆発する前にこれでもかこれでもかとなんでもやってくれるダンナが気に入らない。」
ダンナは妻にいつもこう言う。
「ボクは君のために、あれもした、これもした。それでも、君は、ボクになんの不満があるの?」
ダンナがあれをしてもこれをしても不満がおさまらない妻がいる。
ダンナがなんにもしなくても、特にダンナに対して不満がない妻もいる。
夫婦の仲がよければいい。
二人の心が潤っていれば、どっちが家事を多くしたとか、どっちが仕事で疲れてるとか、そういう競争しなくなくなる。
お互い、一緒にいられて楽しいんなら、どっちがどっちだって許せるんだ。
私は、なんか、そういう気がする。
このお題は、8888番ゲットのReiさんから、いただいきました。
みなさんからの反響が大きかったので、その様子を「付録」として追加します。
「第41号 専業主婦付録」