第4号 明るい社会を目指す暗い運動
昔、早朝6時半からNHKで「明るい農村」という暗い番組をやっていた。
覚えている人はいるだろうか。
明るい老後、明るい家族計画、明るいなんとか・・・って言うので、
ホントに明るい話はまずない。
私の住む地区に「社会を明るくする運動」というのがある。
「社会を明るくする運動」とは、いかにもすごい。
そんなに社会は暗いのかと聞きたくなる。
民生委員を中心に非行や犯罪に走ってしまった人たちを更正させるべく
社会の理解と協力を深める運動のことなのだそうだ。
縮めて社明運動という。
さて、その運動の会報が幼稚園や小学校で配られてくる。
私はいつもそれらを真面目に読んでいる。
会報には、社会を明るくすべく市民が考えた標語が載っている。
特選とか入選とかもあって、なにやら標語にランク付けまでしている。
こんな標語が特選になっていた。
くじけない 負けない君に 応援歌
育てよう 自分の弱さに 負けない強さ
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ずいぶんと負けず嫌いな人たちの運動なのだなと私は感心してしまった。
だって、くじけない君にはさ、応援歌なんか必要ないんじゃないの?
くじけちゃって、人生に負けちゃったから非行に走っちゃったり、犯罪に手を染めちゃったんでしょ。
それとも、この運動、くじけない人しか応援しないってわけ?
自分の弱さに負けない強さって本当に必要なの?
自分が弱いと思ったとき弱さになるんだ。
弱さに負けない強さをもとうって応援するより、
弱さに負けそうなとき、辛い辛いって思いっきり落ち込んでいいんじゃないの。
だから、犯罪おかしていいとは言ってないよ。
負けるな、負けるなって言わないでよ、って感じかな。
できれば、この標語次のように変えてほしいな。

くじけても 負けても君に 応援歌
育てよう 自分の弱さを 認める強さ
社明運動、世の中の明るい部分にいる人たちが明るい部分にいる人だけを応援するような運動にしないでほしい。
(1998.6)