第52号 新4年生の算数

4月、小4の娘が新しい教科書をもらってきた。
最初のページに折り目をつけるときは、ちょっとだけ勇気がいる。
新しい教科書全てに名前を書き終えると、私は本棚から、
去年、購入しておいた4年の教科書(旧課程)をひっぱり出した。
二つの算数を見比べたとき、
私は初めて”3割減”という言葉を実感した。

去年3年生だった娘の算数の教科書には
「3ケタ÷1ケタ」の筆算や簡単な「分数」や「小数」が載っていた。
が、移行措置ということで学校では習わなかった。
「円と球」という単元は3年生のとき学校で教わった。
コンパスの使い方もうまくなった。

今年、娘がもらってきた4年の教科書をみると、また「円と球」の単元が載っている。
私はなんだか不思議な気がして
「これって3年生のときやらなかったっけ?」
と娘に尋ねてみると
「このページと全く同じページが3年生の教科書にもあった」
と言うじゃないか。

旧課程の4年では、4ケタ÷2ケタまであった「わり算」が
今年の4年生からは3ケタ÷1ケタでおしまい。
今まで3年生で習った範囲の「分数」や「小数」が4年生で出てくる。
面倒くさい計算問題はごっそり抜けて、簡単な練習問題があっさり出てくる。

「今どき面倒くさい計算練習を苦労してさせることはない」
と思う人もいるかもしれない。でも、私はそうは思わない。
繰り返し計算練習をすることで、粘り強さや集中力や算数の勘がつく。
そして、なにより、計算さえできれば少なくとも強度な算数アレルギーにはまずならない。
数学というのは実生活にはあまり役立たないが、
実生活に役立つことだけを覚えたいなら、無理して学校など行くことはない。
役に立たないというのは抽象的思考の部分をさしていうのだろうが、
まさにそこが数学なんであって、それが「論理的思考の基礎」になる。

今回の指導要領の改訂に関して、
それが上手に実行されたら、なんの問題もないと私は思う。
総合学習などもうまくいけば、とてもいい教科だ。
でも、「算数の3割減」に関しては不服がある。

そもそも「算数は3割減にする」と言って
3割減の教科書を作っておきながら、
「学力低下」を心配する世の中の声にひるんで、指導要領が施行される直前になって
「3割減というのは最低限あそこまでは勉強してねってことよ。
それ以上勉強したい人は、どんどん先に進んでいいのよん」(文科省)
なんて、よく言うぜ、まったく。ずるいじゃないか。
3割減になってしまった教科書をもらって、どうやって、その先の勉強をしろというのだ。
学校では、誰が能力に合わせて教科書以上の勉強を教えてくれるのですか?
本屋に行けば、今年度用の教科書準拠の市販ドリルが山ほど売られているけど、
教科書に合わせて内容はどれも3割減になっているし・・・

3割減を思いついた人々というのは、
いったい、子どもたちに何をねらってそう決めたのだろう。
今までの内容は多すぎて子どもにとって悪影響があったとか、
削減が子どもの発達に非常によいとか、
そういうことは誰も言ってないような気がするんだよね〜〜〜。
確かに「生きる力」も「ゆとり」も大事です。
だけど、どうして算数を3割減にしなくちゃいけないのですか。
算数を3割減らすとホントに「ゆとり」が生まれるんですか。
これからは「落ちこぼれ」が一人もいなくなるんですか。
力のある子を見逃さないでちゃんと伸ばしてくれるのですか。

算数の内容を3割減なんかにしないで、
「今までの教科書をちゃんと教えられる先生」を
3割増やしたほうがよかったんじゃないんですか。

ま、文句ばかり言っていても仕方がない。
旧課程の教科書で、私は娘に算数を教えるぞォ。


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