第51号 黄色いランドセル

「わあ、本当に黄色い!!」
M子ちゃんが、我が子のランドセルを見て歓声をあげた。

今年1年生になった我が子のランドセルは黄色である。
おかげでみんなに珍しがられ、ほめられる。

色を決めたのは、我が家の次女本人である。
TVで、女の子が黄色いランドセルを背負っているのを見たらしく、
それ以来、「黄色いランドセルが欲しい」と熱望するようになった。

長女のときは、幼稚園でランドセルの注文販売があった。
カタログには、赤と黒のランドセルがあった。
長女の「黒じゃイヤだ。男になっちゃう」というとても普通の理由で赤を選んだ。

次女が「黄色いランドセルが欲しい」と言い出したとき、
「黄色いランドセルなんて売ってるの?」とは思ったが、
「黄色じゃダメ」とは思わなかった。
ま、雨の日用のランドセルカバーと言えば、黄色なわけだし、
売ってるんなら買ってあげてもいいかなと思った。

そんなとき「期間限定 24色ランドセルの注文販売」という
大手スーパーの広告が新聞の折り込みに入ってきたので、
さっそく家族で買いに行くことになった。
私は、次女に何度か「本当に黄色でいいのか」と尋ねた。
「買ってから、やっぱり赤が良かったって言わないでよ」とも言った。
が、娘の決意は固かった。
注文したランドセルは、冬休みが開けてすぐ我が家にやってきた。
次女が背負うと、とてもかわいかった。
おじいちゃんやおばあちゃんに見せると「安全そうで、とてもいい」とほめてくれた。
それからというもの、娘は一日中学校ごっこをして遊んだ。
そして、遊んでいる時間の大半はランドセルを背負って過ごした。

  

我が子が黄色いランドセルであることを大人に話すと、たいてい
「今はいろんなランドセルがあるものね。いいんじゃないの」
「○○ちゃんなら似合いそうね」
などと前向きなことを言ってくれた。

が、うちに遊びに来た幼稚園の子どもたちの口からは大人のホンネが聞こえてきた。

はじめて我が子の黄色いランドセルを見た、ある年長さんの一人は
「ええ!○○ちゃん、黄色にしたの?
黄色なんか6年生になったら恥ずかしくなるよ。」
と言った。そして、その子は続けた。
「アタシは、ピンクにしたかったんだけど、
『ピンクなんか買うと6年生になったとき、恥ずかしくなるから、やめた方がいいよ』
ってお母さんが言ったから、アタシは赤にしたんだ」

別のある女の子は「黄色だと、きっと2年生になるとイヤになるよ」と言った。

また、あるときは、幼稚園から帰ると娘が
「一人だって」と私に言うので、なんの話かと思ったら、
幼稚園で友達から「黄色いランドセルは、○○ちゃん一人だけだよ」と言われたらしい。

子どもたちのそんな発言を聞いていて、ふと
黄色いランドセルでいじめられる
ということがあるやもしれぬという考えが頭をよぎった。
が、そんなことがいじめの原因になってよいはずがない。

「いじめられると困るから黄色はやめておく」と考える人もいるだろう。
それはそれでいい。
が、もう少し踏み込んで言わせてもらえば、
「少数派や目立つヤツは、いじめられてもしかたない」
という
いじめの現実を肯定するホンネがそこに潜んでいるような気がしてならない。
もちろん、いじめを肯定するつもりはないのだろうが。

黄色いランドセルがいじめの原因になるなんて許せない。
もし、そんなことになったら、私は親として断固戦うぞと意気込んだ。

子どもが入学して1週間が過ぎた。
大好きな黄色いランドセルを背負って、毎日誇らしげに出かける。
姉と一緒に学校へ行けることがなによりうれしいらしい。

黄色いランドセル。
どんな物語がはじまるのだろう。

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