第64号 「自ら学ぶ」について その2


「勉強なんて見てやったことないけど別に問題ないわ。
やる気が出てくれば自然と勉強するようになるものよ」 

という人がいます。
カッコイイ言葉です。
でも、放っておいて誰でも自然とやる気って出てくるのでしょうか。
学校にさえ行っていれば、親が見てやらなくても大丈夫で
しかも、進んで勉強する子というのは、
相当目の覚めたしっかりしたお子さんなんだと思います。


私は長女の勉強のことで長いこと混乱し悩んできました。

低学年のうちは、親がそばについて勉強をみてやることに疑問はもちませんでした。
小さいうちに勉強する習慣を身につけるのはいいことだと思います。
ですが、娘が3年生の半ばごろから、
「私がいつまでもこうしてそばで勉強を見てやっていてもいいのだろうか」
と思うようになりました。

ある日突然
「今日から、自分から進んで勉強しなさい」
なんて突き放してみたりしました。
いつ始めるかとハラハラしながら待っているのですが、
娘は一向に勉強なんて始めません。
どんどん寝る時間は迫ってきます。
「9時には寝ますよ」と言ってみたりしますが、始めません。
子どもが自主的に勉強するようになるには、
親が黙るしかないと思いながら
「きょうは勉強しないんですか」
「何時から勉強するんですか」
なんて中途半端に圧迫してみたり、
「自主性に任せると結局勉強しないわけね」
と心で嘆いてみたり・・・

そんなふうに気をもむ日々を送っていたころ
「娘のやる気はいつ起きるのか」
ということについて夫と語り合いました。

子どもの教育方針については、ときどき夫婦で話しています。
私が夫に悩んでいることを相談するという形で始まることもありますが、
「長女に対するあなたの態度は、このごろああだよ、こうだよ」
という夫の指摘から始まることも多いです。
そう指摘されると、私はすぐに腹を立てて怒ったり言い訳をしたりしますが、
もとより自分のやることなすことが最高であるとは思っていませんので、
結局、なるほどそうかと反省することが多いです。
自分の姿を客観的に指摘してくれる人がそばにいるというのは有難いことです。
で、そのとき、夫は
「やる気なんて起きない人はいつまでたっても起きないでしょう。
させるなら徹底的にさせちゃったほうがいい。
放っておくなら徹底的に放っておけばいい」
なんて言ったのでした。
ちょうど4年生になるころでした。
新聞などでは「台形の面積の公式が省かれる」とか
「円周率が3.14から3になる」とか騒がれていました。
教科書の内容が三割減になることも気になりました。
その結果、
「削減される部分も含めてどんどん親が教えてしまえ!」
という方向に決定しました。

4年生になってからというもの、
本人にやる気があるかどうかなんてことにはお構いなしに
やらせていたら、3ヶ月後ー
夏休みの中ごろのことです。
娘の表情が明らかにイヤイヤ勉強しているという顔つきになってきたのです。
4年生になると、受験する子はもちろん
そうでない子たちも塾へ通う子が増えてきました。
「うちは塾へ通わせているわけじゃないんだから、
家でしっかり勉強させるのは当たり前だわ」
という気持ちがあったからだと思います。
勉強させる私の態度が長女に対して威圧的になっていました。
娘のやる気のない表情を見て、私は
「これはいけない。かなりいけない。これ以上私が娘の勉強を見てはいけない」
と深刻に思うようになったのです。
私は娘に言いました。
「もう勉強しろと言うのはやめました。
勉強したいと思ったら自分から進んでやってください。
したくなければしなくてもいいです。
好きにしてください。
でも、勉強していてわからないことがあったら、いつでも聞いてね。
そのときは、今までのように教えてあげるから」
そのかわり、私は毎日を読んであげることにしました。


2学期になって2週間くらいたったころでしょうか。長女が
「前みたいにお母さんに『勉強しなさい』って言ってもらいたいな〜〜」
と言い出しました。
私がなんと答えようかと考えていると、その前に娘がひらめいたのです。
「そうだ!予定表を作ろう」

それからは、その表を見ながら
自分から勉強するようになり、今に至っています。
とは言っても、さっさとすませば5分で終わるようなことを
ちんたら30分もかけてやっていたり、
本人が自分で決めた勉強の量はびっくりするほど少なかったりしますが、
でもまあ4年生ならこのくらいで上等!
長女が自分で決めたことを自分で進んでするようになってくると、
私のほうも柔軟になってきて、
私がぜひとも教えたいことは進んで教えています。

勉強させてみたり、自分でしなさいと言ってみたり、
そういう優柔不断な親の態度が一番いけないのですが、
私は今まで何度も子育ての方針を変更しながら試行錯誤を繰り返してきました。
子どもからしてみればいい迷惑だったかもしれません。
親として半人前な私の態度を娘には深くお詫びしたいです。
娘にとって一番いいことをしたいと常日頃から思っているのに、
あとから思うと反省することばかり。
でも、私は親として自分の能力に見合ったことしかしてやれません。
今できることを今精一杯するだけです。



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