第65号 「自由」

結婚するのは当たり前、子ども(子孫)を作って一人前。
少し前まで、それが世間の常識でした。
いつまでも結婚しない女性は「行かず後家」、男性だったら「変わり者」。
そんな時代には、多くの人たちはその常識が当たり前すぎて
「結婚しようとしまいと私の自由ではないか」
などと考える余地すら持たなかったかもしれません。
もし、そんなこと言おうものなら、ワケ知り顔の大人たちが
「そんなことを言うのは、わがままな半人前だ」
と説教したことでしょう。
その点、今は、ずいぶん自由な世の中になりました。
もちろん、結婚や出産にこだわり、それを人に押し付けてくる人は、今でも残存しますが、
さすがに親同士が決めた許婚と結婚させられたという話はめったに聞かなくなりました。

私は、結婚したくて結婚しました。
結婚相手も自分で決めました。
子どもも欲しくて産みました。

ところで、私の毎日の生活は、しなければならないことに追いかけられ、いろいろなことに縛られています。
でも、今、しなければならないことのほとんどは、私が選んだ自由な行動の結果から起こっています。
一般に「自由」というと、好き放題で楽しいことばかりというイメージがあるかもしれませんが、
「自由」とは好き放題のことではありません。
自由な行動の結果
、私たちはそれに縛られることになります。
しかし、それは自分で選んだ結果ですから、「縛られる」といっても不快な縛られ方ではありません。
「やりとげる」という満足感や「やりとげた」ときの成就感を味わえ、楽しいことがたくさんあります。

ところが、「自由」を自分が選んだ行動の結果に責任をもつという意識なしにとらえていると、
自由(のつもり)な行動の結果、起こってくる様々なことを喜んで受け入れることができず悩むことになります。
ですから、自由に行動するとき、その行動の先にどんなことが起こるか予想できることが大事です。

10代の若者の望まない妊娠や性感染症が増えているといいます。
セックスしたら赤ちゃんができることくらいは知っていますが、
自分が妊娠するとは思っていないようです。
避妊や性感染症の予防の知識も不十分です。
「好きな人とならセックスしてもいい」「みんなセックスしてる」という情報ばかりがあふれています。
しかし、まちがった情報に振りまわされてはいけません。
正しい知識を身につけ、よりよい行動を選択できるようにならなければ「自由」にはなれないのです。
望まない妊娠という結果に苦しむのは、
「自由な行動」の結果ではなく、
「無知で気ままな行動」の結果に過ぎないのです。

「したいからする」というのは、「自由」といえるでしょうか。
「オレはコンドームなんか嫌いだ」と言って、コンドームをつけてくれない男がいるそうです。
相手が妊娠したらどうするのでしょうか。
コンドームなしのセックスをしたいからする。
そんな相手の立場を思いやれない行動は「自由」とはいいません。
「したいからする」で女性を押し倒してセックスするのはレイプです。
「したいからする」で生きていってはいけないのです。
よりよい行動を選ぶ良心をもつべきです。

わがままな人というのは自分の好きなことばかりしたい人ですから、
「自由な人生」を送っているかというと、案外そうではありません。
わがままな人というのは我慢が足りませんから、不満が多いのです。
他人のことも考えて今自分が一番望ましい行動を選べる人なら何でもないようなことでも、
わがままな人の場合、いちいち不満な思いをしなければなりません。
わがままな人の人生というのは、「不自由」なのです。

「自由」とは「権利」です。
私が「自由」という権利を主張するとき、他の人は私の「自由」を奪わない義務があります。
ある人が「自由」という権利を主張するとき、私はその人の「自由」を奪わない義務があります。
「人を殺す自由はあるのか」という問いが流行しましたが、「人を殺す」というのは、人の自由を奪うことです。
誰も他人の自由を奪う権利などもっていませんので、「人を殺す自由はない」というのは明らかです。
他人の権利を無視した行動は「自由」ではなく、「わがまま」です。



キリ番ゲットのきいちごさんから「自由」というお題を頂戴しました。
以来「自由とはなんだ」と悩むこと4ヶ月。
中学2年のとき、担任の先生から
「みんな自由、自由っていうけどね、自由っていうのは不自由のことなんだよ」
と言われ、カルチャーショックを受けて以来、
「自由とは不自由のことなんだぁ〜〜」ですませていた私でした。
「自由」についてこんなにいろいろ考えたのは、はじめてです。
しかし、考えるって楽しいですね。
そして、考えたことを書くってもっと楽しい。
「愛し合ってるかい」の会報を書いているとき、
私は最高の自由を味わっています。
きいちごさん、すてきなお題をありがとうございました。

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