第6号 笑ったほうが楽しいよ

                                    
こちょこちょと、くすぐる振りをするだけで、
子どもたちは身を縮めて笑い出す。
にらめっこも超弱い。
ある晩、布団の上でくすぐりっこをしていたら、
「○○ちゃん、くすぐっても笑わないんだよ。」
と、娘が言い出す。
「6歳だからだよ、きっと。」
年功序列にこだわる娘は、
くすぐられても笑わないのを年のせいにしている。
そして、彼を尊敬している。
しかし、5歳・6歳の身空でくすぐられて笑わずにいられるとは、
どういう人生送ってる子どもなんだろう。
楽しくないんじゃないかなあ、なんて余計なお世話だけど、思っちゃう。

                                 

         人生で一度も笑ったことのないお姫様みたいな親子を見たことある。
レストランの女子便所でのこと。
2歳の娘を便器に座らせオシッコをさせていると
ドアの向こうから、厳しいママの声が聞こえてきた。
「トイレに入るんじゃないの?手を洗うだけなの?
どっちなの?はっきりしなさい!!」
まくしたてるママの声は、さらに続いた。
「手を洗うだけなの?
手を洗うだけなら、初めから手を洗うだけってはっきり言いなさい!!
おしっこだなんてどうしてウソついたの!?
自分の言いたいことをはっきり言えない子が一番嫌いよ。」
便所のドアから私と娘が出たとき、ママはまだなにか説教していた。
ママが叱っているのは、3年生くらいの少年だった。
白いYシャツに紺のズボンをはいていた。まるで音楽会だ。
女子便所から出ていく二人を私はひそかに見送った。
その時、私は驚くべき言葉を耳にした。
「ハイ、わかりました。」
少年の口から出た静かな言葉だった。
                                        
「ハイ、わかりました。」
それは、センダックのお話「ピエールとライオン」の”ためになる言葉”じゃないか。
そんな言葉を実践している子どもがいるなんて。
信じられなかった。

テーブルに戻ってから、私は少年のことが気になってならなかった。
きっと、今頃、おしっこもれそうに違いない。
こんな状態でご飯食べたっておいしくないだろうに。
だって、彼はもう9歳くらいの男の子。
どうして女便所なんかでオシッコできるというの!?
屈辱的な便座に抵抗して、ママに叱られた。
「オシッコは出ない。手を洗うだけ。」
そう言って、彼はウソつきになった。
はっきりしない子が一番嫌いと言われた。
そんなかなきり声出されちゃ誰だってはっきりもの言えなくなるぜ。

食後、少年は再びトイレに行った。今度こそオシッコしたんだと思う。
少年がママと女子便所に行ってる間、パパはポケーッと煙草をくわえていた。
息子が屈辱的な女子便所でオシッコさせられてることも知らないで・・・

                                     

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