プライベートゾーン

「プールに入るとき、隠す場所」をプライベートゾーンといいます。
プライベートゾーン
は、やたらと人に見せません。
人から「見せろ」と言われたら「イヤだ」と言っていいし、
人が見せようとしたら「やめて」と言っていいのです。

プライベートゾーンは、「卑しく」「汚らわしく」「恥ずかしい」場所だから隠すのではありません。
個人的な場所だから人にはやたらと見せないのです。
プライベートゾーンを人に見られたら「恥ずかしい」と思うのは普通の感情です。
普段から人に見られている場所は見られて「恥ずかしい」とは感じませんが、
普段、人には見せない場所を見られたら「恥ずかしい」と感じるものです。
プライベートゾーンは、「恥ずかしい」場所だから見せないのではなくて、
見せない場所だから見られたら「恥ずかしい」のです。

小5の保健のある教科書に
「思春期になると、陰毛がはえてきます。
 これは、成長の証ですから、決して恥ずかしいことではありません。」
というようなことが書いてありました。
陰毛が生えてきたことを周りの大人がからかったり、
「もう生えてきたの?」と子どもの成長を嫌がるようなそぶりをしたりするのは良くないと思います。
が、今まで陰毛のなかった子の性器の周りに陰毛が生えてきたら、
その変化を「人に見られたら恥ずかしい」と思うのは、ごく普通の感情だと思います。
教科書が「陰毛は恥ずかしいものではないんだよ」と子どもたちを励ましているのはわかりますが、
逆に「恥ずかしがる」という感情を否定しているようにもとれるので、
教科書は感情レベルの助言まですることはないような気がします。

長女が4〜5歳のころ、幼稚園の女の子が遊びにきました。
その子が私に「おまんちょさん痛い」とおまたに手を当てながら言いました。

「おまんちょさん」

その子は自分の性器になんの偏見ももたず、素直にそう言いました。
私は、初めて聞く「おまんちょさん」という言葉がたちまち気に入り、
それから、私も「おまんちょさん」という言葉を使っています。


ある婦人科のお医者さんの話ですが、
婦人科へかかる大人の女性で
自分の外性器のことを「お尻」という女性が多いそうです。
男の子の「チンチン」に支障が出たとき、
病院に行って恥ずかしくて「チンチン」とか「ペニス」とか言えず、
「お尻が痛いらしいんですぅ〜〜」
なんて言ってしまう母親はめったにいないと思います。

女子の性器を表す言葉は日本各地にたくさんあります。
それなのに、
どうして自分の外性器のことを「お尻」と言ってしまう女性が多いのでしょう。
女子の外性器を「卑しいもの」「恥ずかしいもの」と見る教育のせいで、
女子の外性器の名称が恥ずかしくてとても口には出せない言葉になってしまったからではないでしょうか。

みなさんは、女子の外性器をなんと呼んでいますか。
もし、なんとも呼んでいないか、
「あそこ」とか「あれ」とか言っているなら、
さっそく名前をつけることをおすすめします。
女の子のいる家庭はもちろん、子どもが男の子であっても、
女子の外性器には名前をつけて教えてあげるといいと思います。
言い方はなんでもいいのです。
一番言いやすい言葉でいいのです。
「これなら抵抗ない」
「この言葉、気に入った」
そんな言葉を見つけてください。

なぜ、女子の性器に名前をつける必要があるのか。
女子の性器に名前がないと、女性自身が
「自分の性器は自分のものである」
という意識をもたなくなります。

体の部分には、何でも名前があって、
お父さんもお母さんも周りの大人たちは何でもそれらの名前を教えてくれました。
ところが、外性器についてだけは誰も教えてくれません。
「これなあに?」
と尋ねたら、慌てた顔をして
「大事なところだから触っちゃいけません!」とか
「そんなところ見るもんじゃありません!」
と、言われ、教えてくれません。
そんな性器をタブー視するようなメッセージから、子どもたちは
「あの話はしちゃダメなんだ」
ということを学んでいきます。

性器に名前がないと、性器が痒くなったり痛くなったりしても、
それを充分に表現することができません。
母親に言える子どもはまだいいですが、
母親が性器を強くタブー視していると、
子どもはそれを訴えることさえできません。

「大事なところだから」という大義名分のもとに
「触っちゃいけない」「見てはいけない」というメッセージを受けて育った女性は
大人になっても自分で自分の性器を見たり触ったりしたことがありません。
自分で自分の性器を見たことも触ったこともないと、
自分の性器が”自分のものである”という意識が育ちません。
むしろ、性器など自分の体には”ないふり”をするようになります。

男性とつきあいはじめたものの、まだSEXする仲ではないと感じていても、
相手に求められると、今断ったら振られてしまうのではないかと思って、
自分の気持ちも伝えられず、されるままになってSEXにいたってしまう女性や、
コンドームをしないでSEXすると妊娠するかもしれないという知識はあるのに、
実際の場面では「コンドームをつけて」とさえ言えない女性がたくさんいます。
自分の性器が”自分のものである”という意識が弱いから、
自分で自分の性器を管理することができないのです。
自分の性器が”男のもの”になっているのです。


言葉は意識を変えます。
性器の名前が言えないのは、性器に偏見があるからです。
性器に対する偏見を乗り越え、性器の名前を声に出して言いましょう。
そして、男女ともにプライベートゾーンという感覚を身につけ、
”自分の性器は自分のもの”という意識を持つべきだと思います。


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