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梅毒恐怖症
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私は小学生のころ、伝染病が怖くてたまらなかった。
同じ伝染病でも、肺病だけは美しきイメージがあった。
美人でしとやかな女性の薄幸なる運命。
やさしくせき込む弱々しい姿と透き通るような青白い頬。
が、赤痢は最低だった。
激しい下痢に襲われ、便所に行きっぱなしになるという噂。
保健所による家宅消毒。特に便所は念入りに。
患者とその家族全員の厳しい隔離は、
まさに赤痢患者差別そのものだった。
もし赤痢になったら・・・と想像すると夜も眠れないくらい恐ろしかった。
でも、もっとこわいのは梅毒だった。
「小5理科図鑑」の伝染病のページには”梅毒スピロヘータ”なるものが載っていた。
菌の写真を見ただけで自分が梅毒に感染したような気分になった。
が、怖いもの見たさで、年中そのページを開いては胸をドキドキさせていた。
なぜ、梅毒がそこまで気になる病気だったのだろうか。
性感染症のひとつであるという意識はなかった。
皮膚の著しい変化が恐ろしかった。
夏休み前のある日、高校生だった私の妹が
「今日、梅毒の映画を観たよ。」
と私に話してくれた。
それは「梅毒」患者の無惨な体の様子であった。
病状第一期、第二期、・・・末期と徐々に悪化していく梅毒患者の背中の映像。
さすがの妹も、その恐ろしさには恐れ入っていた。
で、映画の後、先生からこんな指導があったそうだ。
「男との不純異性交遊(SEXの異名・死語)はやめよう」
「男を見たら梅毒と思え」
性教育というには、あまりにもつたない。
夏休み中、あんまりハメをはずさないことを願っての生活指導と言ったところだろう。
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今は、さすがに不純異性交遊などという名の生活指導はあるまいが、
妊娠中絶とエイズの恐ろしさを強調し、
「だから、SEXはやめましょう」的な指導をしている学校はまだまだ多い。
そして「SEX嫌いな女子」を作り上げることに成功している。
結婚まで処女を守るという習慣こそ崩れてきたが、
それが即SEX好きな女性が増えた証拠にはならない。
SEXは嫌いだけど彼氏に嫌われたくないからしているという女の子が統計的にも多い。
ある男子高校生がこう言った。昔の話じゃない。つい先日の話。
「男はSEXしたいもの。女はSEXさせるもの。」
50年前とあんまり変わってないらしい。
学校はなぜSEXの良さを教えないのだろう。
SEXがいいものだと知ると、みんな分別なくSEXしまくるとでも思っているのだろうか。
SEX好きな女が溢れたら、家系の血が混ざり、
どこの馬の骨ともつかぬ子どもが日本中に溢れて困るとでも思っているのだろうか。
SEXが人間にとってとても大事で、かつ、素敵なものであることを丁寧に教えるべきだ。
それをきちんと教えないから、みんなSEXを粗末に扱うんじゃないか。
「下半身に人格はない」などと言った貧しいSEX観しか持たない大人たちが考えつく性教育とは
「SEXはこわいよ」という恐怖教育だけなのだ。
お上は、女子に対して「SEXに対する罪悪感」と「妊娠・中絶・エイズ等への恐怖感」を植え付け、
SEXを満喫できない女性を育て上げようとしている。
もちろん、中絶の怖さを知る必要はある。
エイズやその他の性感染症に気をつけるべき具体的な指導は大事だ。
でも、SEXは素敵なのに。
身の心も潤うSEXは、充実した人生につながりさえするというのに。
オナニーと大差ないような自己チューSEXしか経験したことのない大人たちは、
望まない妊娠や中絶、エイズのことばかり強調し、
SEXのすばらしさを語ろうとしない。
だって、そうだろうとも。
SEXを男の欲求不満のはけ口としか思ってない大人に
SEXのすばらしさが語れるはずがない。
あなたは、どんなSEX観をお持ちですか。
SEXが素敵で大事なものだと思えますか。
貧しいSEX観しか持たない人に豊かな性教育などできるわけがない。
今、梅毒恐怖症なんていうとみんな笑うかもしれない。
でも、エイズ恐怖症や妊娠・中絶恐怖症でSEXを楽しめない女性はかなりいるはずである。
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