女なんてたいしたことない? その1

人の悩みも、時代とともに変化する。
昔は、「早くセックスしたいから結婚した」なんて男がマジでいた。
今じゃそんな人に出会う方が難しい。
それどころか恋人さえいない人が童貞や処女を悩んでいたりする。

ある28歳の童貞君が、先輩の田中に相談した。
「ボク、まだ童貞なんです。
女の人とつきあうのが苦手で、たとえつきあっても、どうしても、セックスするとこまで行けないんです。
結婚すればセックスできるんだから、結婚の約束もしてない彼女と無理にそこまで行くこともないかな、
とも思うんですが、それって、ヤッパ、おかしいでしょうか。」
田中はワケ知り顔でこう答えた。
「君は女恐怖症なんだ。今すぐ風俗へ行って一発やってこい。
何度か風俗で経験すれば女なんてたいしたことないってことがわかるから。」

「女なんてたいしたことない」

「女なんてたいしたことない」ことがわかり、それでできるようになったセックスって
いったいどんなセックスなのでしょう。
「たいしたことない」と評価する相手とするセックスで田中は満足できるのでしょうか。

田中は中高一貫男子校出身だった。
彼にとって女の子を実感するのは、
電車の中でかわいい女子高生を遠目に眺めたときと
H本の中の女の子を見ながらオナニーするときだけだった。
男としての”あるべき姿”が立派であればあるほど
彼にとって、女の子はこわい存在になっていった。
大学には女子もいたが、ホンネでつきあう経験は持てなかった。
「女はなにを考えているのかわからない」
彼はいつもそう思った。
デートと言えば、食事と映画と遊園地しか思いつかなかった。
あわよくば、ホテルへ行きたいとは思った。
が、うまく誘えなかった。
失敗するのがこわかった。

「男は能動的、女は受動的」
「男は女の上に立たなくてはならない」

そんな彼の固定観念は、彼にとってものすごいプレッシャーだった。
彼はそれを乗り越える一番の近道を思いついた。
「女の上に立つには女を見下せばいい」ってことを。

女の上に立ちたい心理は、
現代の10〜20代前半の若者の心の中にもたっぷりと染み込んでいる。
中3で童貞を失ったことがご自慢のAクンは、女を知り尽くしているふりをするのが大好きだ。
Aクンはどこで見たのか女性のオナニーの仕方を女の子に伝授する。
(が、とってもポルノ雑誌的で、実際の女の子たちが絶対しないパターンである)
伝授した後、合わせてこう言う。
「でも、やっぱり、自分の彼女にはオナニーなんかしてほしくないな」
「SEXの経験が豊かでも、今日が初めてみたいにいつまでも恥じらい深くいてほしい」と。
なんと横暴な。
自分は毎晩オナニーしながら、彼女にはオナニーしてほしくないだの、
自分はちっとも恥じらい深くないのに、彼女にはずっと恥じらい深くいてほしいだの。
なぜ、SEXに積極的な女性を否定するのか?
答えは一つ。
男が女の上に立つには、女が男の下にいなくちゃいけないからだ。
女が積極的になってしまったら、男が女をリードできない。
自分が男らしくふるまえなくなってしまう。

田中は先輩に誘われて連れていってもらったソープで初体験を済ませた。
彼は女を商品として見たとき、初めて女性への畏怖が消えた。
商品としての女は自分にサービスさえしてくれた。
「女なんてこんなものだ」
「女なんてたいしたことない」
そう思うと、彼は安堵した。
そして、男としての自信が湧いた。
次のデートで彼女をホテルに誘った。
「女なんてたいしたことない」
そう思うと、田中は楽々と強姦できた。
もちろん合意の上でのSEXだった。
彼女だって強姦されたなんて思っていない。
でも、男が能動的で女はされっぱなしのとっても男らしいSEXであったことを考えれば
強姦そっくりだったと言わざるを得ない。

酒の席などで、後輩が彼女とのSEXの悩みを打ち明けてくると、田中は、必ず風俗をすすめる。
男らしい男への道を男たちはこうして再生産しているのだ。

  

精液を女の体の中に出しさえすれば満足できてしまう男たちは、
人と人が絡み合う真の心地良さを知ることなどできません。

あなたは、ベッドの中で対等ですか。
するされるではなく、一緒にSEXを楽しんでいますか。

  

  

「女なんてたいしたことない その2」へ続きます。