3.緑膿菌(ピオ)とは 【分類】 細菌のグラム陰性桿菌である。 湿潤な環境に常在する好気性運動性菌で、流し,排水口,花瓶内などにおり、ヒトの大便内にも常在する。 青緑色のピオシアニンや蛍光性黄緑色のフルオレンなどの特徴的な色素を産出し、臭気がある。 わずかな水分があれば繁殖する。 代表的な病院感染菌の一つである。 【症状】 病原性は弱いが、易感染症宿主に感染し、日和見感染,院内感染を起こす。 挿管されていたり、気管切開をしていると保菌しやすくなる。 カテーテル使用後の尿路感染,腰椎穿刺後の髄膜炎,コンタクトレンズ着用による角膜潰瘍,肺炎,中耳炎,創傷感染, 敗血症などさまざまな感染症を引き起こす。 創傷,褥瘡,熱傷,膿瘍に本菌が感染し、重篤な症状を呈することがある。 緑膿菌敗血症の致命率は80%以上と言われている。 多くの抗菌薬に耐性で、難治性となる。 【感染経路】 内因性感染と外因性感染がある。 内因性感染とは、患者自らの細菌叢によって起こる感染である。 つまり、本人の腸内にある緑膿菌が、何らかの原因で増殖するものである。 例えば、抗生物質の使用により他の菌は死滅するが、緑膿菌は抗生物質に対する感受性が低いため繁殖する、 といった場合などである。 また、著しい免疫低下時に自分の腸内の緑膿菌が増殖し、血液中に入って敗血症を起こすことも考えられる。 一方の外因性感染は、他の患者や医療者,あるいは汚染した機器などの非生物から生じた感染である。 主に医療者の手指を介して感染する。 汚染した医療器具や洗浄液,消毒液によって、外因性感染を引き起こすこともある。 手洗いをする洗面台にも菌が住み着きやすいため、物を置かないようにし、清潔,乾燥を保つようにする必要がある。 手洗いの励行,確実な消毒と乾燥など基本的な感染制御策が重要となる。 【治療】 化学療法が用いられる。 有効な抗生物質は、アミノ配糖体系のゲンタマイシン,アミカシン等で、化学抗菌剤はオフロキサシン, シプロフロキサン等である。 しかし化学療法薬による治療には、耐性菌の出現,菌交代現象や副作用などの問題があるため、十分な管理が必要となる。