4.疥癬とは
【分類】
ヒセンダニというダニの一種が、皮膚の角質層内に寄生する感染性皮膚疾患で、STD(性行為感染症)でもある。
寝たきり老人など介護を要する高齢者の増加,触診によるステロイド外用剤の御用,
有効かつ切れ味のよい殺虫剤(γ-BHC)の使用が日本では未だ許可されていないことにより、近年日常疾患の一つになっている。
人から人へ、あるいは寝具,衣類から人へと伝染し、家族内感染,院内感染,保育園や老人ホームなどで集団発生することがある。
確定診断には皮膚角質層を削り、KOH標本にて虫体や卵を検出することが重要である。
【症状】
疥癬の症状が出現するのは、接触感染してからほぼ1ヶ月かかる。
再感染のときは、症状出現までの時間は数日に短縮される。
臨床症状の特徴は、自覚症状と皮疹の分布にある。
激しい痒み(特に寝具の中で、体が温まったとき)を伴う皮疹が、顔,頭を除く全身にみられ、特に腋窩,乳暈,臍,肘窩,手関節,
指間,男子外陰部に好発する。
皮疹は、紅色丘疹,漿液性丘疹,疥癬トンネル,紅色結節性病変であるが、掻ハによる湿疹化や二次感染によって多彩となる。
一方、悪性腫瘍,糖尿病,重症感染症などの患者では、まったく異なった臨床像を示し、
ときに厚い灰白色から帯黄白色の汚い牡蛎殻状の角質増殖を示し、100万?200万匹もの疥癬虫が一人の患者に寄生することがある。
これをノルウエー疥癬という。
【感染経路】
人から人へと伝染する。
例えば、夫婦間,家族内,保育園,学生寮,老人ホーム,病室などである。
また、寝具や衣類を介して人へも伝染する。
医療従事者を介して、患者から患者へと伝染し、院内感染を起こすこともある。
【治療】
ヒセンダニを殺虫できる薬剤の塗布が中心となる。
最初の3日間は安息香酸ベンジルローションを、その7日後にはオイラックス軟膏を、1日1回入浴後、顔,
頭を除く全身にくまなく塗布する。
特に、手指間,外陰部などのメスの産卵場所には入念にする。
これを通常3クール行うと治癒する。
また、入浴にムトーハップ浴(不可能な時はムトーハップ清拭)を併用すると効果的である。
また、無症状の潜伏期間を考慮し、感染の可能性があった者(家族,同居人,性接触者など)は、
症状の有無にかかかわらず一斉に治療する。
なお、虫体やその卵が死滅した後も全身の痒みや小結節が持続することがあるので、不必要に長期間殺虫剤を塗布しないようにする。
虫体や卵が検出されなくなったら、これらの症状に対しては対症的に治療する。
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2001.3.22〜
