「植えた木は誰のもの」後日談・ウサギに食べられたという話


この話の発端は、半年ほど前に遡るが、ある植林関係のシンポジウムでの出来事に始まる。
ある地域に所在する国有林と地域自治体(市)が提携して森づくりを行うことを記念して開かれたシンポジウムでのことであったが、シンポジウムの終盤で、森づくりの実行に際して、住民グループも参加して植林を行う場合、植林木は植えた人に優先的に帰属するかとの質問があり、国側の回答は、国有地であるから国有財産になるとの答えがあり、やや堅苦しい雰囲気で終了した。
ボランティア活動を国有林の森林空間で行うことは、誰しも賛成の試みであり、なるべく国有林と地域の市民や住民の皆さんが和やかな空気の中で、協働することが好ましいと思いながら過ごしていたところ、最近、この植林活動についての協議会を開催するので参加しないかとの話があり、協議会の場に加えていただいたところである。

会議の場では、植林実施について事務局(市)から報告が行われたが、その中で、半年前に実行した植林木(苗木)が、ウサギに食べられるという事態が発生したとの報告があり、一転、会議は被害対策について時間を費やすことになった。
ウサギによる食害の発生は、ことに多様な種類の苗木を植える傾向にあることから、発生してみれば当然起こりうることであり、いろいろなことを考えさせられる事柄であった。
植えた苗木は、誰が守るのか、誰が知恵を出すのか、などなど考えることは沢山ある。
仮に植えた人に所有権を与えたところで植えた木を守りきるのは至難の事柄であろう。
また国有財産だからといってもウサギに理解を求めることは、まず不可能でもある。
このようなことは、これから森づくりを進める上で、至る所で起こりうることであろう。

協議会の場で、防除方法についての意見も出されたが結論には至らなかった。
そこで、筆者としては、もう少し、対策について情報も収集してみたいと発言し、東京に戻った。
さっそく、百万本の植林で有名な、N緑の財団に問い合わせたところ、財団で実行しているウサギ対策は、フェンスの設置とチューブの使用であった。
フェンス(金網)は効果はあるが、高さ2メートルに忍び返しまでつける方式、さらにウサギはトンネルを掘るので、地上のみでは不足で、地中にも埋め込む必要があり、かなりハイコストになるとのことであった。
チューブは、1本当たり千円程度で実行可能で、それなりの効果は認められるが、現在は積極的には使用していないとのことであった。
その他、考えられることとして、忌避剤の使用という選択肢はあるが、現地の意見としては使いたくないということであった。
また電流方式も考えられる。

一方、子供から大人まで参加してということで考えられるのは、例えば、大苗を作って植える方法も考えられる。
このほか、苗木一本一本、ポリネットを巻き付ける方法で、これは、フランスで知人が実行しているのを見たことがあり、比較的ローコストで、子供も参加可能ということから、かなり実用的と考えられる。


ブルターニュの植林地で2000年5月撮影(小澤)






以上については、参考情報として現地に連絡させていただいた。

なお、筑波の森林総研のホームページに、各地で深刻な問題となっている、鹿の対策が詳しく示されているので、ご覧いただきたいと思う。
http://ss.ffpri.affrc.go.jp/labs/wildlife/14/0527.pdf#search

所有権の帰属問題もさることながら、野生動物とも折り合いをつけながら共生の可能性を追求することが現代人に課されている大きな宿題であることはいうまでもない。

いずれにしても、「共有」と「共生」について深くかつ真剣に考える時代であることは間違いのないところである。

(小澤普照・平成20年4月18日記)


参考、「植えた木は誰のもの」


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