新しい緑の国際協力と交流のための「提言」に対する意見等


名古屋大学 新海尚子様より(その2)(2004/10/13)

モデルフォレスト活動についての貴重なご情報まことにありがとうございます。
ご提言にも記述されていらっしゃいましたが、利害関係団体が参加し地域社会が総合的に森林の持続のために実施しているこのような活動は、まさに持続性という意味でとても重要な意義があると存じます。
わたくしの存じ上げる限りにはなってしまいますが、二国間援助(のうちのJBICの円借款)に限って申させて頂きますと、援助枠内のセクターの若干のシフトは行われているように存じます。今までの、道路、橋、鉄道、灌漑設備などの大規模インフラ事業から、環境案件(地球環境問題対策案件及び公害対策案件)に対する優遇金利の導入により、環境案件の割合が着実に増えてきていると存じます(2003年、円借款承諾額全体の57.4%))。
ただ、国によっては、森林セクターに対するプロジェクトに対する外部資金は受け取らない、という方針(一時的かもしれませんが)を設けているところもあり、なかなかスムーズではない部分もあることも事実です。

また、一方で、日本の二酸化炭素排出量の増加を抑えることができないという事実があることも考慮すると、「クリーン開発メカニズム」のようなものにもっと積極的に関わっていかなければならないのではないかと存じます。その中で、特にコミュニティをベースとした小規模な森林保全、植林事業は、参加国、参加地域、住民にとって有益なものと存じます。また、ご指摘のように、「環境先進国」と言われるドイツの取り組みにも学ぶところがあると存じますし、今後日本の国際協力の位置や方向性について更なる検討が必要だと存じます。
大学という立場を生かしながら、ぜひ何かポジティブな貢献ができればと存じております。


名古屋大学 新海尚子様より(その1)(2004/10/06)

ご提言論文「新しい緑の国際協力と交流を生み出すための提言」をご送付下さいまして、まことにありがとうございます。
拝受致しまして、早速拝読させて頂きました。
たいへんおもしろく拝見致しました。
ODAの予算、人材育成についてなど同感致しました事もいくつかございます。
予算は確かに削減されていますが、日本の援助は、まだ規模的に世界で上位に位置しておりますし、今までの限られた援助機関の職員人数のもとではできなかったようなきめの細かい援助が、いよいよできるのではないか、と存じております。
従って、おっしゃられているようなハイレベルの専門家、現地のさまざまな機関の方とコミュニケーションできるような人材がまさに援助の世界で、政府機関、NGOを問わず必要になってきていると存じます。そのような中で、東京工業大学のような試みは、ちょっと先を越された感がありますが、国際協力の分野での直接的な貢献とともに、いろいろと難しい点も多々ありますが、このような合同プログラムがもっと増えていけば、国際協力における人材育成での貢献が大学としてもっと効率的に行えると存じます。


FASID(国際開発高等教育機構)専務理事 馬淵睦夫様より

「新しい緑の国際協力と交流を生み出す」ための提言を読ませて頂きました。
緑の分野での協力交流が中心ですが、提言の多くは他の分野にも当てはまる有益な内容であるとの印象を強く持ちました。
第一に、双方向の協力の重要性を指摘されたことは、今後の日本の国際協力を考える上で極めて示唆的であると思いました。提言で指摘されていることと必ずしも一致するものではありませんが、私はかねてから途上国も何らかの援助を行うべきであると考えてきました。一方的に援助を受け取るだけでは、国としての本当の発展は望めないと思います。最近は、援助供与国にもなった途上国(主として中進国)が増えてきていますが、依然として援助を受け取るのみという国が数多く存在しています。それらの諸国の発展のためには、彼らも自らの得意分野で他国に対し何がしかの援助を行うべきです。自ら「与える側」に立ってみると、「もらう側」であった時には経験できなかった新たな発見があるはずです。その発見は、国民に自立的なエネルギーを与えることになると期待しています。わが国としては、これら途上国が援助国となるのを支援することに今後重点を置く必要があると思っています。
第二は、わが国の独自性、特徴です。わが国は非白人国として途上国から先進国へ短期間のうちに発展を遂げた稀有の国であると指摘された点です。そこで、途上国が知りたいのは、日本が自らの伝統文化を維持しつつ、西欧(白人)技術文明を受け入れて経済発展に成功した秘訣だということです。これに応える援助を行うことが今求められていると思います。私見では、この秘訣は、日本の「造りかえる力」であると思います。すなわち、日本は明治維新以来、西欧の技術文明を咀嚼し、日本の伝統文化に合うように造りかえて両者の融合を図り、経済的繁栄を達成してきたといえます。このノウハウこそ、自国のアイデンティティーを維持しつつ、どうグローバルスタンダードを取り入れていくべきかに腐心している途上国にとって大きな福音になるのではと思っています。これこそ、わが国独自の援助哲学になるものだと確信しています。
第三に、「国民参加の拡大」に注目されたことは同感です。新ODA大綱のフォローアップのために、FASIDは今年からNGO研修を拡充しました。国際機関のプロジェクトを受注できるNGOを育てて行きたいと念願しています。在外におけるNGOの活動支援に対する大使の支援について触れられていますが、まったく意を強くしています。私もキューバ大使をしておりました時は、日本のNGOがキューバにいなかったため、草の根無償資金協力について外国のNGOに頼らざるを得なかったことを残念に思い、帰国後、日本のNGOにキューバでの活動方働きかけを行っているところです。
以上、日本の援助を改善していくためには、優れた人材が必要なことはご指摘の通りです。FASIDも開発援助の指導的人材の養成のために種々の事業を行っておりますが、さらに拡充する必要を痛感しております。

注、馬淵睦夫氏は、平成17年10月13日付けで、FASIDを辞任され、外務省に復職後、駐ウクライナ大使に就任されました。


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