子づれDE海外滞在記 4 イギリスその2


イギリスの子育て

次の滞在先であるイギリスの中西部に位置するチュークスベリーに広大な農場を持つジェーン夫妻の家は、築200年の3階建て石作りである。イギリスでは、子どもは産まれたときから自分の部屋で寝かせるのだそうで、広い家の中の各子ども部屋にインターホンを設置し、キッチンで様子を伺う。1歳4カ月のキャメロンは、自分のベッドに横になってもお母さんがいる間は寝ないそうで、ジェーンは「寝かしつけてくるね」と言ってからいつも5分で戻ってくる。ある日、キャメロンはお昼寝の時、先日から生えかけている歯が再度痛み始めた様子で、激しく泣いた。しかしジェーンはおろおろしながらも、自分で寝付くまでは決して慰めには行かなかった。夜も大声で泣いたが、親のベッドに連れてくるようなことはしないそうだ。この頃から、彼らの独立心は育っているのだと思う。イギリスでは18歳になっても親元にいることは恥ずかしいことで、結婚するまで実家から出たことがない箱入り娘のような例はまずないと聞く。親自身も、自分自身の生活と子どもとの生活を分けて考えているので、「子離れ」という言葉すらないのではないかと思う。
燎平は洋食をほとんど食べてくれないので、ジェーンの家でも自炊した。4カ月の妹ケイラは45度に傾いたどこにでも設置可能なベッドに固定され、キッチンの上に常に置かれている。朝食にマーマイトというものが出てきた。何種類もの野菜のエキスとイーストでできているそうで、見た目はプルーンエキスにそっくりで、味は私にはとても食べられないものだったが、子どもにもトーストにかけて食べさせる。普段は生野菜をほとんど食べない分、これで採っているらしい。

「清潔」文化の違い

それにしても、イギリス人の衛生観念や環境意識は理解しにくい。スウェーデン、チェコでは入り口で靴を脱ぐ習慣があったが、イギリス人は家の中で土足で平気である。猟犬アッシュが歩きまわった石造りのキッチンの床に落ちた食べ物をキャメロンも燎平も拾って食べてしまうが、ジェーンはさほど気にしない。ディッシュウォッシャーには濃い洗剤を山ほど入れる。手洗いの食器には泡が残ったまま水切りにのせる。ジェーンは自分はしないと言ったが、洗剤を台拭きにたっぷりかけてテーブルを拭いて終わり、という主婦も多いらしい。
日本のお風呂に慣れてからイギリスに帰ってもやらなくなったとジェーンは言うが、彼らはお風呂で泡まみれになるのも好きである。築200年だからか、なんとバスタブとシャワーは別室にあり、バスタブの中で体を洗うときれいなお湯で流せないまま出てこなくてはならない。その上、バスタブの外は靴で歩いたじゅうたん敷きである。キャメロンと燎平は毎日一緒にお風呂に入ったが、きれいに流せないまま上がって汚い床に座ったりする状況だ。これでは環境対策やリサイクルにあまり熱心でないお国柄もうなずける。
イギリス英語では、baby(赤ちゃん)、child(子ども)との間の子をtoddler(よちよち歩きの子ども)と呼ぶ。このtoddlerの集まりに参加させてもらった。日本の育児サークルと同様に、子どもとお母さんが一緒に踊ったり、何かを製作したりする。最後に大人も子どももコーヒーブレイクを楽しんで、交流を図れる点が良かった。
最後に知り合いをたくさん呼んでもらって、日本食パーティを催した。メニューは天ぷら、お好み焼き、味噌汁、そば、ライス、のりで、デザートに甘納豆と緑茶を出すとみんな感激してくれた。このメニューはどこでも大好評である。