二地域居住論雑感
最近、二地域居住論議が盛んなようである。
長らく無人だった郷里(新潟県上越市)の生家をリフォームして、東京と往き来をするようになって四年になる。とんぼ返りが多く二地域居住とまでは行かないが二地域往来方式のライフスタイルとはいえよう。
市街地中心部から十キロそこそこの水田地帯は昔に比べて、道路、農地(水田)、住宅、上下水道などの整備が格段に進むという変化はあったが、基本的には田園の風景は変わらず、一方、もちろん居住人口の減少、高齢化、少子化などの現象は歴然としているが、静寂な生活環境は、東京に比べれば別天地といっても過言ではない。
町内会長さんなどに聞いてみると、かつて全戸農家だったものが、水田の委託耕作が進み現在も農業を継続している所帯は四分の一に減少しているとのことである。
自家用の野菜等を栽培する畑作りは続いているが、市全体の話として、最近では畑の耕作放棄が増加しつつあるそうだ。
また、この地域は屋敷林地帯と言われ、家はスギの木立に囲まれ、竹林もある。
スギは大きくなると家の建て替えの際に使われてきたが、現在では自家産材を用いた住宅建築などは余程の贅沢ということになるのであろうか。先ず見かけることもない。
それどころか、最近は、雷雨のみならず、屡々突風が吹き荒れるため、大きく育ったスギの木が揺れて、家に倒れかかると危険だというのでスギを中心に緊急避難的な伐採が進んだ。
筆者のところでも、間伐(といっても樹齢50年程度のものが多いので直径60から70センチ程度のものまで含む)ということで四、五十本の伐採を行ったが、伐採・搬出経費は自分持ちということになる。(注、詳しいことは、森林随想15などを参照願います)
二地域往来の大義名分が、屋敷のスギ林や竹林を利用しての炭焼の実践ということなのでスギの末木、枝条はゴミ処理を行わず逐次、炭に焼くことにした。
さて、最近、八月末の週末田舎に出掛けたところスズメバチ(オオスズメバチ・この地域ではカメバチと呼ばれてきた)の活動を発見した。
点検したところ、庭の片隅に集積したスギの枝の中に出入りしていることが分かった。
自力で駆除するかどうかの決断を迫られた。
たまたま隣近所の家は留守で、市役所への連絡も考えたが土曜日でもあり正式な住民てはないのでどう対応してくれるのか分からない。
翌日には東京に戻らなければならないこと、観察したところ巣は見えないが、一分間に一匹程度の出入りであり、ひと月前に来たときにはハチは見かけなかったことから、巣はさほど大きくはないと判断した。また、放置しておけば成虫が増えて町内の皆さんに迷惑が掛かってもいけないということで実行に踏み切ることにした。
早速ホームセンターに出掛け、スズメバチ用の強力殺虫剤を五本(一本二千円程度)と、併せて覆面防護ネットなどを購入し、夕刻に防護の服装を整えた上で実行した。
最初、カンレイシャで出入り口を覆い殺虫剤を噴射してみたが中からの反応がなく、外からの戻りバチがいることや、網布を通しての殺虫剤の効果が判然としないので、直接噴射を行うことにした。
先ず二本を全量噴射しながら接近、当然、中から飛び出すハチと外からのハチが併せて十匹以上が飛び交う。空中のハチには直接噴射するが一撃では落ちない。二撃、三撃で漸く地面に落下するがそれでも動いている。
飛び出して来るハチを駆除しつつ、枝を一本ずつ取り除きながら、巣を露出させた。
思ったより大きく直径三十センチ近くあった。薬剤を吹き付けながら、巣を手早くゴミ処理用の袋に取り込んで第1段階は終了した。戻りバチが徘徊しているので見つけ次第駆除した。開始から約1時間でスズメバチ捕り物作戦は終了した。駆除剤は四本と少しを必要とした。
スズメバチの処理は危険を伴うので注意が必要である。
注意事項として駆除は日没後と言われているようであるが、高齢化に伴い視力の低下も考慮し、準備に時間を要したこともあり、実行は夕刻になった。
後で数えたところ成虫も五十匹以上はおり、幼虫の数もかなり多く、早めの駆除が好ましいことは分かる。
ところで、二地域居住については、都会と地方、双方の問題点解決の方法として有効と思う。ただし、これを進めるには、スズメバチや野生獣の問題も含めて自然との共生のノウハウを身につけることが必要である。野菜づくりなどの実行も良い。このほか、インターネット環境の整備(簡便、低コスト化など)が実現すれば都会生活との格差も縮まる。つまり仕事が可能になるということである。
さらに問題となるのが、交通費であるが、このことについては滞在日数が長くなるほど一日当たりのコスト負担は逓減するので、現役世代については勤務の形態、休暇システムの変更など関連事項について研究の余地があり、退職世代にとっても田舎における定住者との交流方式、滞在者にたいする公共サービスの提供の仕方などについて滞在者・地域の双方に取ってメリットのある政策が実現すれば二地域居住の進展が期待できると考える。
(小澤普照・平成20年9月9日記)