第88号 中学デビュ <試練>

楽しい中学校生活が始まって2週間ほどたったとき、早くも試練の日が訪れた。

校歌の暗記

「今度の火曜日、校歌を3番まで書くテストがある」
と言って、娘は日曜日の夜ごろから校歌を歌い始めた。
一番はすぐに歌えるようになったが、
校歌独特の昔の言葉に惑わされ、2番3番がなかなか覚えられない。

月曜日の夜、リビングで娘が校歌を歌っていた。
そこへ仕事から帰ってきた父親が
「ずいぶん高い声だね」
と言った。
とたんに娘は何を思ったか、突然、
「ギャーーーー!!」
とわめいたかと思うと、自分の勉強机の部屋に飛び込み、
ふすまをピシャリと閉めると、ピーピー泣き出した。
夫は「どうしたの?」と不思議がる。
「ダメだよ。謝ってきなさいよ。
明日までに校歌を3番まで覚えなくちゃいけないんだって。
でも、なかなか覚えられなくって、イライラしているのに、
高い声だねなんて言われたから、バカにされたと思って怒ってるんだよ」
「だって、ホントに高い声だったじゃない」

夫が帰ってきたとき、娘はすでに泣く直前だった。
明日までに覚えなくてはいけない。
それなのに、なかなか覚えられない。
それで、泣きそうな声がそのままいつになく高い声になっていたのだ。
その後、夫は、泣いている娘のところへ言って謝り、
一緒に歌ったり、歌詞を見ていてあげて違っていたら指摘してあげたりしながら、覚えるのにつきあった。

なんとか校歌を覚えて、娘は火曜日を迎えた。
しかし、学校から帰ってきた娘は、
「校歌のテスト、なかった」
と怒っていた。
「もっとみんなが覚えてからテストすることにしたって・・・」
なんじゃそりゃーーーー!
ま、私以上に娘の方がずっとなんじゃそりゃーーー!な気分だったに相違ない。
結局、テストはゴールデンウィーク開けに行われた。
その頃、娘はもう生まれたときから知っていたかのように、上手に校歌が歌えるようになっていた。

つづく

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