第88号 中学デビュー <友達>
中学生の友人関係は大変だ。
なんでもつるんで”うちら意識”を振りまきたがるお年頃なだけに、
イヤなことをイヤと言うことの大変さがあるようだ。
娘はよく「断り方」をシミュレーションしている。
5月ごろだった。
国語の宿題(新出語句の意味調べ)が出た。
みんな「夜中の2時までかかった」「3時までかかった」と言っていたから、相当な量だったのだろう。
娘は、宿題提出日の朝、こういうことを言った。
「私はこの宿題をやるのに、ものすごく苦労した。
きょう、誰かがノート見せてって言って来ても、アタシ、絶対見せたくない。
『私、ものすごく苦労したんだよ。
今からでも自分でやれるところまでやってごらん。
手伝ってあげるから』
って言って断るんだ」
と言っていた。
案の定、娘は、ある友達から「ノート写させて」と言われたらしい。
が、断り方をシミュレーションしていたので、迷わず断ることに成功したそうだ。
「ノートを見せてって言われたから、仕方なく見せたけど、見せなきゃよかった」
のなんの大きな声でグチグチ言っている友達がいたそうだ。娘は、
「だったら、断ればよかったのに」と思ったそうだ。
全くだ。
イヤなことはイヤと断っても、大事な友達を失うようなことにはならない。
それで離れていくなら、それだけの関係なのだから、無理してつきあうこともない。
ある日、娘がこんなことを言った。
「きょう、Aさんが『うちらの仲間になりたいでしょ』って言ってきた」
そして、Aさんはさらに続けた。
「うちらの仲間になったら、うちらが嫌ってる子の名前教えてあげる」
娘は仲間になるとは言わず、
「誰を嫌っているの?」
と率直に尋ねた。
すると、意外にもAさんは「Tさん」と軽々と答えた。
Tさんとは、娘に思春期という言葉を教えてくれた娘の友達である。
娘は「アタシ、Tちゃん好きだけど」と言って、その場を離れた。
それから、Aさんは、娘に何も言ってこないそうだが、無視もされていない。
先日、担任の先生がこんな注意をしたそうだ。
「この学年で実際に起こったことだが、
『○○ちゃんをいじめよう』というメールが流れたらしい。
お前ら、そんなメールに乗せられるなよ。
第一、中学生が携帯持つなんて十年早いんだよ!」
ある母親から聞いた話だが、
「○月○日、昼休み、中庭に集合!」みたいなメールが流れることもあるそうだ。
断れないタイプの子は、行きたくなくても「イヤだ、イヤだ」と思いながら行くのだそうだ。
イヤならイヤと言えば良さそうなものだが、
断って「うちらの仲間」から外されてしまうことの方がもっとイヤなのだろう。
「うちら」
I my me
じゃなくて、
we our us
仲間意識も大切だが、
”I”を失った”We”には、ご用心である。