第88号 中学デビュ <思春期>

ある日、娘が私に尋ねてきた。
「お母さん、思春期って何?」
「え!?」
答えに戸惑っていると、娘が話し始めた。
その日、娘の友達Tさんが「思春期」という言葉を使ったそうだ。
初めて聞くその言葉の意味がわからなくて、娘は、すぐに「思春期って何?」とTさんに尋ねた。
Tさんは、娘の質問に対して
「親より友達の方がよくなる時期のことだよ」
と即答したらしい。
そのとき、娘は思わず正直に
「へえ〜〜、私は友達より親のほうが大切だな〜〜」
と気楽なことを口にしてしまったそうだ。
すると、利口なTさんは、
「まだ○○ちゃん(娘)は、思春期に入ってないんだね」
と指摘したそうだ。
娘は思春期の意味がよくわからないまま、
「でも、私はTちゃんのこと、大好きだよ」
と言葉を添えたそうだ。
もしかして、まさに思春期な会話かもしれない。

国語の時間に「ナマケモノは、一日に22時間くらい寝る」と習ってきた。
食事を最小限にすませ、じっとしていることがナマケモノにとって、身を守る最高の方法なのだそうだ。
教科書を読みながら、娘が言い出した。
「お母さん、ナマケモノって何のために生きているの?」
私が、またまた答えに窮していると、夫がそばで
「食うためにきまってるでしょ!」
と、言い切る。
私は友人にその話をし、「あなたならどう答える?」と尋ねた。
友人は、その問いに答えてはくれなかったが、
娘の発言を評して「思春期だね〜〜」と言った。
思春期って何?

その後、青木和雄先生の講演会で、たまたま思春期について聞く機会があった。
先生は、一口に言って、思春期とは”性の目覚めと自我の目覚め”のことと述べた。
以下は青木先生の話の概要である。

小学校の低学年の頃までは、親の言うことをそのまま聞けたのに、
高学年ごろから、親の言うなりにはならなくなってくる。
自我が目覚めてくるからだ。
しかし、その自我というのは、幼くて経験の浅い、自己中心的なものである。
子どもが親に対してエラそうなことを言うようになるが、そのとき、親はうろたえてはいけない。
大人は子どもを過大評価しないことが大事。
エラそうなことを言っているけど、まだ相手は小学生(中学生)なんだ。
子どもがなにか言ってきたときには、
まず、誠意をこめて、子どもの話を「うん、うん」と聞いてあげよう。
話を聞いてあげた後に、親は自分なりの考え方を話してあげる。
受け売りではなく、自分の哲学を語る、それが大事。

その話を聞いたあと、私は、私なりに娘に「思春期とは何か」語って聞かせた。
友達のTちゃんの言う思春期説に話が及ぶと、娘は、
「大好きな友達はいるし、友達は大事だが、
結局、私のために何をしてくれるかといったら、親にはかなわない」
というようなことを言っていた。
娘の場合、”親より友達”だったのは、小学校の高学年の頃だったかもしれない。

つづく

中学デビュー <希望><試練><定期考査><思春期><友達

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