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…コラム…

  2021年 観た映画 10月

「屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ」(2019/独、仏/ファティ・アキン監督/ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼル、カーチャ・シュトゥット、他)
1970年代のドイツ・ハンブルク。実在した5年間で4人の娼婦を殺害した連続殺人犯の日常を淡々と描いたサスペンスホラー。主人公は「ハウス・ジャック・ビルト」のジャックとは違い芸術論も美意識も皆無のソシオパスなんだろうなぁ。ここまでに至った過去の出来事も一切描かず、ただひたすらにうらぶれた日常と衝動的に殺人を繰り返す陰惨で醜いルーティーンを淡々と映す作品も珍しい。何度も観ようとは思わぬが印象に残る映画。
★★★☆☆

「美しき暗闇の中で」(2017/露/ダイアナ・ガリムジヤノワ監督/ラシード・アイトゥガノフ、コリヤ・ノイケルンイリナ・ゲボルギャンマリーナ、他)
物語はまったく面白くない。訳ありげな哲学的な台詞と、現在と過去とが交差する展開に眠気を誘われた。ただ、モノクロならではの光と影のコントラスト、どのシーンを切り取っても絵になる映像はとにかく美しい。
★★☆☆☆

「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2020/英、米/キャリー・ジョージ・フクナガ監督/ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ、アナ・デ・アルマス、他)
普段こういったアクション娯楽作を映画館で観ることはまず無いのだが、本作はコロナ禍の影響で1年半以上も延期となったこともあり、とても楽しみに新百合ヶ丘のイオンシネマにて鑑賞。勿論、ストーリーはじめ、ド派手なカー・チェイスにアクション、ボンド・ガールの登場に加え中盤からのクライム・サスペンス感、どれを取っても最高に楽しめた。そして、今まで不死身だったボンドがD・クレイグになってからの弱さも見せる人間味溢れる姿に共感。(ショーン・コネリーのボンドも好きだが)007シリーズで涙したのは初めてだった。もう一度観たい。
★★★★★

「村人」(2015/オーストリア/バーバラ・エーダー監督/アンドレアス・ルスト、フランツィスカ・ワイズ、マリア・アーバン、他)
犯罪捜査官のワーシッツは頭部に重傷を負い、ブルゲンラントの村へ帰郷するのだが、それをあまり歓迎しない村人を巡るじめじめしたクライム・サスペンス。
★★★☆☆

「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」(2018/米/シドニー・ポラック監督/アレサ・フランクリン、ジェームズ・クリーブランド、コーネル・デュプリー、チャック・レイニー、他)
1972年1月13日、14日、ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプテスト教会で行われたライブを収録したドキュメンタリー。高名な牧師でありシンガーの父と優れたピアニスト、シンガーの母の娘として生まれ、音楽的な才能にも恵まれ育ったアレサの歌唱力は勿論、聖歌隊とバンドと観客が一体となってゴスペルを体現するグルーヴ感は圧巻。12歳で子供を産むなど、波乱の人生を歩んだ彼女の歌は味わい深い。
2日目の会場最後方にはスタンディングでノリの良いM・ジャガーとC・ワッツの姿が。「メインストリートのならず者」のレコーディングでロスに滞在していたのだと思う。ミックはいつの間にかちゃっかり前方の椅子に座って聴いていた。(笑)
★★★☆☆

「BILLIE ビリー」(2019/英/ジェームズ・エルスキン監督/ビリー・ホリデイ、リンダ・リップナック・キュール、カウント・ベイシー、ルイ・アームストロング、他)
不世出のブルーズ(あえて言う)・シンガーであり、謎に包まれた部分の多いビリー・ホリデイのドキュメンタリー。不可解な死を遂げたジャーナリストのリンダ・リップナック・キュールが、1960年代に10年間かけて関係者にインタビューを重ねていた膨大な録音テープが発見されたのを元に構成されている。
ビリーの貴重な映像や知られざる赤裸々な素顔の部分も明らかになったり、多分に観る価値はあった。ただ、N・シモンと並んで大好きな歌手なので客観的に語るのはかなり難しいものがある。人種差別と闘い、波乱に満ちた人生を生きた彼女の歌はやけに心に沁み入る。
★★★★☆

2021/10/10(Sun) 13:40


  2021年 観た映画 9月

「ボルベール 帰郷」(2006/スペイン/ペドロ・アルモドバル監督/ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ヨアナ・コボ、他)
「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」のP・アルモドバル監督が、故郷ラ・マンチャを舞台に逞しい女性たちの生きざまを郷愁と共に描き出したヒューマン・ドラマ。とても複雑で重くなりがちな話だが、スペイン人の血なのか風土の気質なのか判らぬが、陰湿に陥らずとても気持ちよく楽しめた。脚本も良く、鬼才アルモドバル監督、こういうのを描かせると流石に上手いですなぁ。役者の技量も素晴らしい。アクの強いP・クルスもソフィア・ローレンを彷彿させてとても素敵。そうそう、ほとんど男性の登場が少ない映画というのも珍しい。
★★★★☆

「ホーリー・モーターズ」(2012/仏、独/レオス・カラックス監督/ドニ・ラバン、エディット・スコブ、他)
「ポーラX」以来の長編は12年振りという本作。批評家や世界中で絶賛されているようだが、何だか私にはさっぱり解らず。。突然流れる”ゴジラ”の音楽に意表を突かれたり。しかし、観ておいて決して損はない作品かな。そういう点では面白いと言えよう。
★★☆☆☆

「ラスト・ディール 美術商と名を失くした肖像」(2018/フィンランド/クラウス・ハロ監督/ヘイッキ・ノウシアイネン、ピヨロ・ロネン、アモス・ブロテルス、他)
商才は無いが目利きの老美術商が”運命の絵”と出会ったことから始まる家族との確執と愛を描いたフィンランド発のヒューマンドラマ。北欧の湿った雰囲気が妙に心地よく、静かだけどジワジワと心に沁み入る素敵な作品。
★★★★☆

「サマー・オブ・ソウル」(2021/米/アミール・“クエストラブ”・トンプソン監督/B・B・キング、S・ワンダー、N・シモン、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン、他)
ウッドストックが開催された1969年の夏、160キロ離れた場所で行われたもうひとつの歴史的音楽フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」にスポットを当てた音楽ドキュメンタリー。
改めて音楽の持つ力強さに感動、感激、感謝!そしてニグロからBLACKへと、時代を担うアイコン達が次から次へと登場し渾身のパフォーマンスを披露する姿に底知れぬパワーを感じた。50年もの間、埋もれていたフィルムが鮮明に甦り、今、こうして観られた喜びと共に、アメリカにおける黒人差別への根深さが哀しい。
★★★★☆

「サイの季節」(2012/イラク、トルコ/バフマン・ゴバディ監督/モニカ・ベルッチ、ユルマズ・エルドガン、ベヘローズ・ボスギー、他)
1979年、イラン・イスラム革命の混乱に巻き込まれ投獄された詩人とその妻。30年後、釈放され自由の身となった夫は先に釈放された妻の行方を探し見つけ出すのだが。。。幸福に見えた人生も革命という歴史に翻弄され、やがて狂いだす歯車。観ていて辛くなる作品だけど、ロケーションも映像も、アップ時の顔に刻まれた深い皺や息づかい、静かに灯る蝋燭の火、どれもが美しく間違いなく忘れられぬ1本となるであろう作品。ところどころにメタファーのように挿入される映像も印象的。どこかテオ・アンゲロプロスを彷彿させた。
★★★★★

2021/09/10(Fri) 13:07


  2021年 観た映画 8月

「ミナリ」(2020/米/リー。アイザック・チョン監督/スティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、ヨン・ヨジョン、ウィル・パットン、他)
1980年代のアメリカ南部に、成功を夢見て韓国出身の移民一家が理不尽な運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を描いた人間ドラマ。題名の”ミナリ”とは、香味野菜としても知られるセリ(芹)のこと。厳しい環境の中にも逞しく育ち、2度目の収穫が最も美味しいことからも次世代の幸福の為に強かに生きるこの家族と重なった。

「愛のコリ−ダ(修復版)」(1976/日、仏/大島渚監督/松田瑛子、藤竜也、中島葵、殿山泰司、他)
ご存知のとおり、かの有名な「阿部定事件」を大島渚監督が描いた話題作。 本作の写真や脚本をまとめた単行本は「わいせつ文書」として摘発され、昭和57年の無罪確定まで物議を醸すことになった。
作品としての賛否両論は当然であろう。定の内面をもう少し掘り下げて描いてほしかった気もするが、役者陣の皆さんも体を張った演技で大変面白かった。藤竜也演ずる吉蔵の「かまやぁしね〜よ」って言う台詞が耳に残る。

「ヘカテ」(1982/仏、スイス/ダニエル・シュミット監督/ベルナール・ジロドー、ローレン・ハットン、他)
第二次大戦中フランスの植民地であった北アフリカの砂漠の街に外交官としてやって来た男が、ある女に出会った事から愛憎に溺れ狂っていく物語。さすがD・シュミット監督が描く映像は耽美的で美しく、衣装も凝っている。
しかし、「愛のコリーダ」を観た後だけでは無いにしろ、主人公の男女には艶っぽさも内から湧き出る情念の様なものも感じられず、全ての行動も薄っぺらく思ってしまった。どうせならもっとドロドロを描いてほしかったなぁ。

「インビジブル 暗殺の旋律を弾く女」(2018/英、米/アンソニー・バーン監督/ナタリー・ドーマー、エド・スクレイン、ヤン・ベイブート、他)
巨大組織に狙われる盲目のピアニストの女性を巡って繰り広げられる事件と謎を描いたサスペンススリラー。主人公自身の背景が少し判りづらいのが難点だが、まぁまぁ楽しめた。

「復讐のセクレタリー」(2015/仏、ベルギー、ルクセンベルグ/クリストフ・アリ、ニコラ・ボニラウリ監督/ナタリー・バイ、マリック・ジディ、ヨハン・レイセン、他)
事故で息子を亡くした母親が9年の時を経て復讐に乗り出す姿を、「わたしはロランス」などのベテラン女優ナタリー・バイ主演で描いたサスペンススリラー。怖いけど哀しいストーリー。

2021/09/05(Sun) 20:52


  2021年 観た映画 7月

「ロフト〜完全なる嘘」(2010/蘭/アントワネッテ・ベウメル監督/バリー・アトゥスマ、フェジャ・ファン・フェット、イェルーン・ファン・コーニングスブリュッヘ、他)
まぁ、何と言うか、下世話なサスペンス映画。

「記憶にございません」(2021/日/三谷幸喜監督/中井貴一、ディーン・フジオカ、小池栄子、草刈正雄、他)
可も無く不可も無く。どちらかと言うとつまらない。以上。

「ライト・ハウス」(2019/米、ブラジル/ロバート・エガース監督/ウィレム・デフォー、ロバート・パティンソン、カモメ)
19世紀末ニューイングランド沖の孤島にやって来た2人の灯台守が外界から遮断され、徐々に狂気と幻想に侵されていく、人間の極限状態を恐ろしくも美しいスクエア・サイズのモノクロ映像で描いた恐っろしい作品。
途中まで今いち話に付いて行けず置いてけぼりを喰う感が否めなかったのだが、ギリシャ神話のプロメテウスとプロテウスに2人を置き換えるとよく理解が出来、結構楽しめた。とにかくコントラストの強い映像はとても美しく、2人の役者の演技も素晴らしい。狂気とエロスは隣り合わせですなぁ。

「ジョーカー」(2019/米/トッド・フィリップス監督/ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、他)
いろいろと考えさせられる作品です。再鑑賞。

「タクシー・ドライバー」(1976/米/マーティン・スコセッシ監督/ロバート・デ・ニーロ、ハーヴェイ・カイテル、ジョディー・フォスター、シビル・シェパード、他)
20歳の頃、文化服装学院に通っていた友人に主人公トラヴィスが着ていたのと同じタンカース・ジャケットを作ってもらった記憶が今も残る。少なくとも20回は観ている作品。

2021/06/30(Wed) 20:01


  2021年 観た映画 6月

「火口の二人」(2019/日/荒井晴彦監督、脚本/柄本祐、瀧本公美、他)
直木賞作家、白石一文が男と女の極限の愛を描いた小説「火口のふたり」を「赫い髪の女」「もどり川」などの名脚本家、荒井晴彦が手がけた監督第3作目作品。いやぁ〜、隅から隅まで荒井ワールド全開。何だか ただただダラダラ感が続くのだが、主演二人の台詞と芝居がとても自然で、うん、抑えきれない衝動ってあるよなぁ〜って思ってしまった。

「グリーン・ブック」(2018/米/ピーター・ファレリー監督/ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャリ・アリ、リンダ・カーデリニ、他)
人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続ける中で友情を深めていく実話を基にしたロード・ムービー。
まず、今だに人種差別が公けに蔓延るこの国で、アカデミー作品賞を受賞した史実に乾杯!だからと言ってすぐに問題が解決できる訳でもないのだが、片寄ったヘイト発言なんかよりも説得力は充分である。V・モーテンセン、「イースタン・プロミス」また観たくなった。ラスト、奥さん素敵ですな!

「本当の目的」(2015/ダリアン・ペヨフスキ監督/北マケドニア、コソボ/イレーネ・リスティッチ、カムカ・トチノフスキ、他)
地味で淡々として静かな作品なんだけれど、この独特の空気感がたまりません。悲しいかなこの辺りの地域にもヘイトは色濃く残っているんだなぁ。

「ライ麦畑の反逆児 独りぼっちのサリンジャー」(2017/米/ダニー・ストロング監督/ニコラス・ホルト、ケビン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、他)
「ライ麦畑でつかまえて」の著者J・D・サリンジャーの知られざる半生を描いた伝記ドラマ。この書物に至っては、あまりにも有名で少なからず一度は読んでいる作品ではあるが、サリンジャー自身の事はあまり知らなかったので興味深く観られた。

「ファーザー」(2020/英、仏/フローリアン・ゼリール監督/アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、イモージェン・プーツ、オリヴィア・ウィリアムス、他)
A・ホプキンスが見事な名演でアカデミー賞主演男優賞に輝いた、重度の認知症を患った老いた父と娘の葛藤を描いた重厚で怖くて感動の物語。これは決して絵空事ではなく、誰もが経験するかも知れぬドキュメンタリーでもある。

2021/06/16(Wed) 22:28


  2021年 観た映画 5月

「レッド・エージェント 愛の亡命」(2016/英、カナダ/シャミム・サリフ監督/レベッカ・ファーガソン、チャールズ・ダンス、他)
米ソ冷戦を背景に、亡命により離れ離れになった夫婦の運命を描いたラブサスペンス。過去と現在が交差しながらの進行に最初少し戸惑ったが、極めて解りやすい物語だったので単純に楽しめた。R・ファーガソン、好きな女優さんです。

「ミラノカリプロ 9」(1972/伊/フェルナンド・ディ・レオ監督/ガストーネ・モスキン、バーバラ・ブーシェ、マイオ・アドルフ、他)
70年前後イタリアのB級西部劇やギャング映画に多く観られる、男の美学とでも言うか、権力や組織の圧力にも決して屈しない己の力だけを信じて生きてゆく一匹狼の哀感を色濃く表現した作品のひとつ。
特にこのF・ディ・レオはS・レオーネの様な決して派手さも凝った演出も無いのだが好きな監督の一人。
「黄金の七人」「ゴッドファーザーPARTU」「暗殺の森」のG・モスキンもいい味を出しているが、今作の静かなギャング役も実に素晴らしい。

「ヨーロッパ横断特急」(1966/仏、ベルギー/アラン・ロブ=グリエ監督/ジャン・ルイ・トランティニアン、マリー・フランス・ロジェ、クリスチャン・バルビエール、他)
18年秋、不覚にも日本初公開時に見過ごしてしまっていたこの映画がアマゾン・プライムで公開されていたのでビックリ!早速鑑賞。う〜ん、メタ、メタ、メタファーで幾重にも重ねて構築された内容に正直付いて行けず。。。
監督自身も出演しているが、実験的映画として”ヨーロピアン・アヴァンギャルドの最重要作品”と評されたとおり、パリからアントワープへ麻薬を運ぶトランティニアンが繰り広げる波乱万丈な道中をただ楽しんで観ればそれなりに面白いかも。内容とは別にクラフトワーク「ヨーロッパ横断特急」が無償に聴きたくなった。↓

「シャンハイ」(2010/米、中/ミカエル・ハフストローム監督/ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、渡辺謙、他)
1941年の太平洋戦争前夜の上海を舞台に、中国、アメリカ、日本の巨大な陰謀と諜報機関を巡る攻防、国境を越えた男女の悲恋を描く。俳優陣は豪華ではあるが、ノワールなのかサスペンスなのか、はたまた禁断のラブ・ロマンスなのかある意味曖昧で作品としてまったく印象に残らず。残念!

「キャロル」(2015/米、英、仏/トッド・ヘインズ監督/ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、他)
1950年代のニューヨークを舞台に、「ブルー・ジャスミン」のK・ブランシェットと「ドラゴン・タトゥーの女」のR・マーニの女性同士の美しい恋を描いた恋愛ドラマ。原作は「見知らぬ乗客」「太陽がいっぱい」「アメリカの友人」「リプリー」などで有名なパトリシア・ハイスミス。同性愛などを描くのが実に上手い作家ですなぁ。
ストーリーは単純なのだが、このK・ブランシェットとR・マーラーの圧巻の演技力。特にラストシーンのケイトの大女優たる妖艶な深く静かな表情に、はい、やられました。またオープニングとラスト、同じシチュエーションだけど視点を変えた粋なキャメラワークや当然ながら当時の時代設定を考慮した衣装にメイク、車、家具も素敵。また観たくなる素晴らしい作品!

2021/05/09(Sun) 10:18


  2021年 観た映画 4月

「ハイ・クライムス」(2002/米/カール・フランクリン監督/アシュレイ・ジャッド、モーガン・フリーマン、ジム・カヴィーゼル、他)
殺人事件の容疑者となった夫の無実を晴らそうと奮闘する女性弁護士の活躍を描く、ポリティカルサスペンス。まぁ、すべてが中途半端でしたが、A・ジャッドの品のある美しさとM・フリーマンのお茶目で渋い演技力でもっている作品。

「ノマドランド」(2020/米/クロエ・ジャオ監督/フランシス・マクドーマンド、デヴィッド・ストラザーン、他)
普通や安定という定義には個人差もあるが、いわゆる楽な生き方も知ってはいるのだろうが、リスクを覚悟の上で自分に正直に嘘をつかず素直に生きる人間とは、悲しくも何としなやかで逞しく、そして美しいのだろうか。主人公を演じたF・マクドーマンドの演技していない演技と言うか、「ファーゴ」の警察官役もそうだったが飄々とした存在感は流石である。

「ノクターナル・アニマルズ」(2016/米/トム・フォード監督/エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マオケル・シャノン、他)
現実に血こそ流さないが、元妻への精神的復讐劇ですな。可もなく不可もなし。

「ファーゴ」(1996/米、英/ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン監督/フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェミ、ウィリアム・H・メイシー、他)
流石コーエン兄弟良いですな!「ノマドランド」F・マクドーマンドを観て久し振りにまた観てしまった。S・ブシェミも良い!好きな映画!再鑑賞。

「ガール・オン・ザ・トレイン」(2016/米/テイト・テイラー監督/エミリー・ブラント、ヘイリー・べネット、レベッカ・ファーガソン、他)
通勤電車の窓から以前暮らしていた隣人の人妻の不倫現場を目撃したのを機に、殺人事件に巻き込まれる女性を軸に展開するサスペンス。主人公がアル中で朦朧とした記憶と共に進行するので時空列が判りずらいが、三人三様それぞれの女性が抱える闇の部分の描写は切ないが解る。E・ブラントの迫真の演技、H・ベネットの色気、R・ファーガソンの美貌には納得。そして映像も美しい。

「パッション」(2012/仏、独/ブライアン・デ・パルマ監督/レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、他)
イデオロギーがどうのこうのとか、俗にいう批評家達が嫌う80年代のJ‐L・ゴダール作品ではなく、デパルマらしいスプリット・スクリーンあり、怪しい雰囲気ありのサスペンス劇。と言っても随分と肩透かしを喰らってしまった。

「ミセス・ノイズィー」(2019/日/天野千尋監督/篠原ゆきこ、大高洋子、長尾卓麿、他)
笑わせ泣かせて、とっても良い作品。観る角度、視点によって簡単に惑わされてしまう現在の情報社会は怖いですなぁ。とは言え、真の想いやりはブレないのです。

2021/04/26(Mon) 16:50


  2021年 観た映画 3月

「パーフェクトマン 完全犯罪」(2015/ヤン・ゴズラン監督/仏/ピエール・ニネ、アナ・ジラルド、他)
運搬業で生計を立てる作家志望の青年が、元アルジェリア召集兵で孤独死した男性の遺品整理中に当時の日記を見つけ、自分の作品として出版社に持ち込むと本は出版され瞬く間にベストセラーに。一躍有名になった彼は幸福で完璧な人生を手に入れたかに見えたが。。完全犯罪とは程遠い緻密さも計画性も無いチンケな行動には呆れるばかり。ルネ・クレマン「太陽がいっぱい」を意識したシーンなどもあるが、犯罪に対する質量がまず違う。ピエール・ニネもいい役者なのに今回はもったいなかった。それと、世の中 悪事の代償は大きいですなぁ。

「コンプリート・アンノウン〜私の知らない彼女〜」((2016/米/ジョシュア・マーストン監督/レイチェル・ワイズ、マイケル・シャノン、ダニー・グローヴァー、他)
解離性人格障害を患った方のように自ら苦悩する事もなく、どちらかと言うとどの人生でも成功しながら、これからも過去をリセットしながら別人として生きる彼女の目的は何なのか。

「DAU.ナターシャ」(2020/独、ウクライナ、英、露/イリヤ・フルジャノフスキー監督/ナターリヤ・ベレンジナヤ、オリガ・シカバルニァ、ウラジーミル・アジッポ、他)
内容はさておき、「ソ連全体主義」当時のままに再建されたスターリン体制下の秘密研究都市で約2年間にわたり、実際にソ連時代の通貨を使用し、衣装も食事も、また毎日当時の新聞が届けられるという徹底した生活の中での撮影そのものが狂気の沙汰ですなぁ。

「バーニング・クロス」(2012/米、仏/ロブ・コーエン監督/タイラー・ベリー、エドワード・バーンズ、マシュー・フォックス、ジャン・レノ、他)
映画自体は大した作品ではないけれど、殺し屋ピカソ役のM・フォックスは減量したのかな、鋭くキレッキレッでした。

「回る春」(2011/アルゼンチン/エリセオ・スビエラ監督/ダニエル・ファネゴ、ロミーナ・リッチ、他)
初老の小説家と元教え子の不倫の恋。よくある話だが、う〜ん、よく判らぬ作品でした。

2021/03/05(Fri) 14:13


  2021年 観た映画 2月

「ヒットマン/ラスト・ミッション」(2015/英/ヴェルナー・シューマン監督/トーマス・スペンサー、デニス・ライオンズ、他)
殺し屋を主人公にしたクライムサスペンス。まぁ、可もなく不可もなくといったところですなぁ。

「パッチ・オブ・フォグ 偽りの友人」(2015/英/マイケル・レノックス監督/コンリース・ヒル、スティーブン・グレアム、他)
万引き常習犯のベストセラー作家につきまとう異常なストーカー男を描いたイギリス製サイコスリラー。どうしてサンディーが万引き常習者になったのかも判るし、脚本、ディテールも良く練られている。ロバート役のスティーブン・グレアムは「パブリック・エミナーズ」の”ベビー・フェイス”ネルソン役も良かったですなぁ。

「ランブル 音楽会を揺るがしたインディアンたち」(2017/カナダ/キャサリン・ベインブリッジ監督/リンク・レイ、チャーリー・パットン、ミルドレッド・ベイリー、ジェシ・エド・デイビス、ジミ・ヘンドリックス、他)
多くのジャンルのポピュラー音楽に影響を与えたインディアン音楽の真実を明かすドキュメンタリー。こんなにも沢山の有名ミュージシャンがインディアンの血を引いていた事実に驚き、多くの迫害や差別を受けながらも、その魂はうねる様に生き続けた史実に尊敬の念をおぼえた。音楽好きなら一見の価値あり!

「チャイナタウン」(1974/米/ロマン・ポランスキー監督/ジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン、他)
この独特の退廃的な空気感がたまりませんなぁ。まさにフィルム・ノワール。何度も観ている大好きな映画!

「黄昏のチャイナタウン」(1990/米/ジャック・ニコルソン監督/ジャック・ニコリソン、ハーベイ・カイテル、メグ・ティリー、イーライ・ウォラック、他)
監督ニコルソン、全体の雰囲気も良く細部にまで気を配っているのは充分に解るのだが、残念ながらやはりポランスキー版には及ばない。あぁ、もったいない!再鑑賞。

「サード・パーソン」(2013/英/ポール・ハギス監督/リーアム・ニーソン、オリヴィア・ワイルド、エイドリアン・ブロディ、ミラ・クニス、他)
パリ、ローマ、NYを舞台に3組の男女を描いた群像劇。話が進んで行くに伴い、あれっ?これってひょっとして?と視点を変えて観ていくと判りやすいが、そうでなく普通に観ているとかなりしんどく置いてけぼりを喰う作品。ラストも観ている側それぞれに謎を問いかけてくる。

2021/02/05(Fri) 11:55


  2021年 観た映画 1月

「真夏の夜のジャズ」(1959/米/バート・スターン、アラム・アヴァキアン/ルイ・アームストロング、セロニアス・モンク、アニタ・オデイ、他)
その昔ビデオでは観ていたが、映画館での鑑賞は初。勿論それなりの迫力は有ったし珍しいミュージシャンの貴重な映像も観られたが、ジャズのドキュメンタリーとしては程遠く、セレブが集う海岸沿いのお洒落な避暑地での夏フェスとして観れば楽しめる作品であろう作品。

「ハウス・ジャック・ビルト」(2018/デンマーク、仏、独/ラース・フォン・トリアー/マット・ディロン、ブルーノ・ガンツ、他)
初めて観た彼の監督作品は1984年の「エレメント・オブ・クライム」。何とも言えぬ独特の救いのない作品ではあったが、妙に惹かれる部分もあり。その後「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「メランコリア」なども観てはいるが、確かに何れも正直心から共感できる作品ではない。今回の「ハウス・・・」も狂気に満ちた殺人鬼の不快なモノローグと共に5つの出来事が描かれているのだが、目を背けたくなるシーンもあれば強迫性障害のせいで何度も殺人現場に舞い戻って来たり、独自の突き抜けた芸術論を語らせたりと、殺人鬼の心の奥底に眠る深層心理を徹底的に描く手法にはしてやられたものである。私見だが、ブルーノ・ガンツ演ずるヴァージという謎の男はまさにジャックの心に宿るもう一人の自分であろう。面白かった。

「聖なる犯罪者」(2019/ポーランド、仏/ヤン・コマサ/バルトシュ・ビィエレニア、他)
聖と俗が共存し、真の救いとは?と考えさせられる作品。クリストファー・ウォーケン似の主人公の澄んだ眼差しと美しい映像は一見の価値はあるが、もう少しテンポ感を出してストーリー展開しても良かったのではないかとも思った。
竹下景子が初マドンナ役を務めた「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」で寅次郎が、住職である彼女の父に変わって法事を勤める抱腹絶倒シーンや笑いあり泣き有りの第32作とは勿論比べられはしないのだが、過去を偽り聖職者として生きる今作は微塵の笑いもない重い作品だった。

「かくも長き不在」(1960/アンリ・コルビ/仏/アリダ・ヴァリ、ジョルジュ・ウィルソン、他)
脚本が「二十四時間の情事」「雨のしのび逢い」そして彼女の自伝的小説でもある「愛人(ラマン)」のマルグリッド・デュラス。監督は上記の「二十四時間の情事」「去年マリエンバートで」などアラン・レネ作品他、寺山さんの「上海異人娼館/チャイナ・ドール」など編集技師で名高いアンリ・コルビ。コラ・ヴォケールの唄う「三つの小さな音符」を耳にする度、悲しくて切なくて泣いてしまうと判っているのだが観てしまう好きな映画。

「サウンド・オブ・サイレンス」(2001/米/ゲイリー・フレダー/マイケル・ダグラス、ブリタニー・マーフィ、ショーン・ビーン、他)
全米探偵作家協会賞を2度受賞した作家アンドリュー・クラヴァンの「秘密の友人」を元に、精神科医の主人公家族と悲痛な過去を持つ多重人格を演じている少女をメインとしたサスペンス映画。
原作はきっと面白いのだろうが読んでおらず比較出来ないが、脚本はじめ、展開やディテールがあまりにもお粗末な作りだったのが残念。余談だが、娘役のスカイ・マッコール・バートシアクは21歳、事件の鍵を握る少女役のブリタニー・マーフィは32歳でそれぞれ亡くなっているのは哀しい。

「ロスト・ボディ」(2012/スペイン/オスカルファウラ/フォセ・コロラド、ホワン・パブロ・シューク、他)
消えた死体にまつわる人々をめぐる謎が謎を呼ぶスペイン発サスペンス映画。監督・脚本は「ロスト・アイズ」の脚本家オリカル・パウロ。登場人物の細部にわたる内面描写と伏線がもう少しあればなぁなんて観ていたのだが、その謎はラスト間近に明かされた。う〜ん、これは完璧に騙されましたなぁ。面白かった。詳細を知らずの鑑賞をお薦めです。

「セールスマン」(2016/イラン、仏/アスガー・ファルハディー/シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリシュスティ、他)
ハリウッド映画好きな方には退屈な映画と言えよう。性暴力を題材にした作品なのだが、イスラム教国家イランならではのそういった描写は一切描かず、被害女性ですら事件を恥とし公にも出来ぬ立場の弱さ、生活の貧困さを如実に描いている。いや、描きたくても描けないのであろう。だからか、全篇通して何だかしがらみに包まれた重〜い空気感が漂う。劇中A・ミラーの「セールスマンの死」が暗喩的に演じられるが家族の不条理をリンクさせたかったのかなぁ。
約90分の尺で良かったかも。

「ゴーン・ガール」(2014/米/デヴィッド・フィンチャー/ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、他)
これは最高楽しめた!デヴィッド・フィンチャー、ハラハラ、ウェ〜ッ!?が上手い!脚本も演出も良く、幼少の時から厳格な両親に育てられ、優等生を演じ続けて来た彼女自身が唯一心を許した夫の裏切りに対する用意周到な復讐劇。何と言っても美しくて頭が良く、そして冷酷な役はロザムンド・パイクにぴったり。
見応え充分!

2021/01/20(Wed) 00:05


  2020年 観た映画 12月

「からみ合い」(1962/日/小林正樹)
遺産相続を巡って殺人事件までも起きるドロドロのからみ合い。金が絡むと恐ろしいですなぁ。クールな映像にジャズがよく合う。撮影は「黒い雨」(同監督)、「わるいやつら」「鬼畜」「砂の器」など、野村組でお馴染みの、巨匠 川又昴。再鑑賞。

「アンロック 陰謀のコード」(2017/英/マイケル・アプテッド)
オチと黒幕は判ってはいるのだが、結構面白かった!

「シチリアーノ 裏切りの美学」(2019/伊、仏、伯、独/マルコ・ベロッキオ)
「夜よ、こんにちは」「肉体の悪魔」などで知られるイタリアの巨匠マルコ・ベロッキオがイタリアマフィア史上最大のミステリーを映画化。多くの登場人物の背景が淡々と描かれているのと、イタリア名がまずややこしく覚えられず、コーザ・ノストラ下にもコルレオーネ派とパレルモ派があり両者入り乱れての報復シーンでは、あれっ、この人さっき殺られたんじゃなかったの?なんてなかなか付いて行けず。。。
フランチェスコ・ロージ監督の「コーザ・ノストラ」(1973年製作)では、アメリカにおけるイタリア系犯罪組織の頂点に君臨したラッキー・ルチアーノを本国イタリアに強制送還後に焦点を当てて描いた実録マフィア映画もあったが、こちらは解りやすかったなぁ、なんて比べてみたり。
しかし、日本の今の政府はじめ、やくざの世界も利権や名誉を巡り、国民を巻き込んでは騙し合いと裏切りが平然と行われているんだろうなぁ。

2020/12/06(Sun) 18:11


  2020年 観た映画 11月

「赤い殺意」(1964/日/今村昌平)
藤原審爾の原作を「にっぽん昆虫記」でコンビの長谷部慶治と今村昌平が共同で脚色。今村昌平が監督した社会ドラマで撮影もコンビの姫田真佐久。今平さんは抑圧された人間の情念を描かしたらピカイチですな。
この作品では、春川ますみ演ずる貞子が、芋虫のような蚕へ嫌悪を感じながらも振り払うことなく、同時に内股を這う性的快楽から逃れられぬシーンに集約されているように思った。それは妾腹として生まれ扱われてきた彼女の原体験であり、したたかな逞しさでもある。何度か観ているが素晴らしい作品。

「虎狼の血」(2018/日/白石和彌)
1970年代初頭、当時の東映で辣腕を振るっていたワンマン社長の岡田茂氏が言い放ったキャッチフレーズが”不良性感度”。約50年の時を経て今まさに甦った東映イズム色濃い、暴力的でアンチモラル、アナーキーな作品。

2020/11/04(Wed) 15:06


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