「屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ」(2019/独、仏/ファティ・アキン監督/ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼル、カーチャ・シュトゥット、他) 1970年代のドイツ・ハンブルク。実在した5年間で4人の娼婦を殺害した連続殺人犯の日常を淡々と描いたサスペンスホラー。主人公は「ハウス・ジャック・ビルト」のジャックとは違い芸術論も美意識も皆無のソシオパスなんだろうなぁ。ここまでに至った過去の出来事も一切描かず、ただひたすらにうらぶれた日常と衝動的に殺人を繰り返す陰惨で醜いルーティーンを淡々と映す作品も珍しい。何度も観ようとは思わぬが印象に残る映画。 ★★★☆☆
「美しき暗闇の中で」(2017/露/ダイアナ・ガリムジヤノワ監督/ラシード・アイトゥガノフ、コリヤ・ノイケルンイリナ・ゲボルギャンマリーナ、他) 物語はまったく面白くない。訳ありげな哲学的な台詞と、現在と過去とが交差する展開に眠気を誘われた。ただ、モノクロならではの光と影のコントラスト、どのシーンを切り取っても絵になる映像はとにかく美しい。 ★★☆☆☆
「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2020/英、米/キャリー・ジョージ・フクナガ監督/ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ、アナ・デ・アルマス、他) 普段こういったアクション娯楽作を映画館で観ることはまず無いのだが、本作はコロナ禍の影響で1年半以上も延期となったこともあり、とても楽しみに新百合ヶ丘のイオンシネマにて鑑賞。勿論、ストーリーはじめ、ド派手なカー・チェイスにアクション、ボンド・ガールの登場に加え中盤からのクライム・サスペンス感、どれを取っても最高に楽しめた。そして、今まで不死身だったボンドがD・クレイグになってからの弱さも見せる人間味溢れる姿に共感。(ショーン・コネリーのボンドも好きだが)007シリーズで涙したのは初めてだった。もう一度観たい。 ★★★★★
「村人」(2015/オーストリア/バーバラ・エーダー監督/アンドレアス・ルスト、フランツィスカ・ワイズ、マリア・アーバン、他) 犯罪捜査官のワーシッツは頭部に重傷を負い、ブルゲンラントの村へ帰郷するのだが、それをあまり歓迎しない村人を巡るじめじめしたクライム・サスペンス。 ★★★☆☆
「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」(2018/米/シドニー・ポラック監督/アレサ・フランクリン、ジェームズ・クリーブランド、コーネル・デュプリー、チャック・レイニー、他) 1972年1月13日、14日、ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプテスト教会で行われたライブを収録したドキュメンタリー。高名な牧師でありシンガーの父と優れたピアニスト、シンガーの母の娘として生まれ、音楽的な才能にも恵まれ育ったアレサの歌唱力は勿論、聖歌隊とバンドと観客が一体となってゴスペルを体現するグルーヴ感は圧巻。12歳で子供を産むなど、波乱の人生を歩んだ彼女の歌は味わい深い。 2日目の会場最後方にはスタンディングでノリの良いM・ジャガーとC・ワッツの姿が。「メインストリートのならず者」のレコーディングでロスに滞在していたのだと思う。ミックはいつの間にかちゃっかり前方の椅子に座って聴いていた。(笑) ★★★☆☆
「BILLIE ビリー」(2019/英/ジェームズ・エルスキン監督/ビリー・ホリデイ、リンダ・リップナック・キュール、カウント・ベイシー、ルイ・アームストロング、他) 不世出のブルーズ(あえて言う)・シンガーであり、謎に包まれた部分の多いビリー・ホリデイのドキュメンタリー。不可解な死を遂げたジャーナリストのリンダ・リップナック・キュールが、1960年代に10年間かけて関係者にインタビューを重ねていた膨大な録音テープが発見されたのを元に構成されている。 ビリーの貴重な映像や知られざる赤裸々な素顔の部分も明らかになったり、多分に観る価値はあった。ただ、N・シモンと並んで大好きな歌手なので客観的に語るのはかなり難しいものがある。人種差別と闘い、波乱に満ちた人生を生きた彼女の歌はやけに心に沁み入る。 ★★★★☆ |