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…コラム…

  2022年 観た映画 4月

『クリーピー 偽りの隣人』(2016/日/黒沢清監督/西島秀俊、竹内結子、香川照之、川口春奈、他)
『岸辺の旅』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞した黒沢清監督が、日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川裕の小説「クリーピー」を実写映画化したサスペンススリラー。凄く悍ましくて怖い作品だけど、グイグイと引き込まれてしまった。面白かった!
★★★★☆

『孤狼の血 LEVEL2』(2021/日/白石和彌監督/松坂桃李、鈴木亮平、村上虹郎、中村梅雀、他)
鈴木亮平演ずる上林のキャラは見応えあり。
★★★☆☆

『ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン』(2016/米/ジョン・シャインシェルド監督/ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、マッコイ・タイナー、ウェイン・ショーター、他)
ジャズ界史上最大のカリスマと称されるサックス奏者ジョン・コルトレーンの、短くも求道的な人生を描いたドキュメンタリー。「ジャズの定義は分からない。私は私の演奏をするだけだ。」流石ですな!もう少し演奏場面があっても良かった。遅ればせながらの鑑賞。
★★★☆☆

『殺人の追憶』(2003/韓/ポン・ジュノ監督/ソン・ガンホ、キム・サンギョン、キム・レハ、他)
韓国で実際に起きた華城連続殺人事件をリアルな演出で映画化。登場人物それぞれのキャラもしっかり描かれ、映像も音楽も巧みに作られている。ただ、犯罪物実話作品の場合、リアルな場面が出てくるとどうしても被害者側のご家族の事を想うと悼まれる。
★★★☆☆

2022/05/09(Mon) 13:44


  2022年 観た映画 3月

『愛を読むひと』(2008/米、独/スティーヴン・ダルドリー監督/ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロス、ブルーノ・ガンツ、他)
全世界500万人が涙した ベルンハルト・シュリンクのベストセラー小説「朗読者」を『めぐりあう時間たち』の監督と脚本家コンビが映画化した素晴らしい作品。結実しなかった彼等の愛の物語が永遠の物語のようにかけがえのないものに思えてくる。再鑑賞。
★★★★★

『ブリーダー』(1999/デンマーク/ニコラス・ウィンディング・レフン監督/マッツ・ミケルセン、キム・ボドゥニア、リブ・コーフィックセン、他)
『ドライヴ』(2011)で知られるデンマークの鬼才ニコラス・ウィンディング・レフンが、デビュー作『プッシャー』の次に手がけたバイオレンスドラマ。この独特の存在感漂わす危うい登場人物達と、彼等が暮らす北欧コペンハーゲンの街並みが醸し出す、何とも言えぬ不気味な空気感がいい味を出している。狛江にもこんな超マニアックな店主が居るレンタルビデオ屋さんが欲しい!
★★★☆☆

『インスタント沼』(2009/日/三木聡監督/麻生久美子,加瀬亮、風間杜夫、渡辺哲、松重豊、他)
実にバカげた内容、ストーリーなんだが笑ってしまう。長廻しで麻生とふせえりが並んで自転車を漕ぐシーン、絶妙のタイミングで山手線が通過する。この場面は他の作品かと思う程爽やかで印象に残った。あと、温水さんが良い!
★★☆☆☆

『世界でいちばん美しい村』(2016/日/石川梵監督)
日本人報道写真家、石川梵がネパール大地震で壊滅的被害を受けたヒマラヤ山岳地帯の村ラプラックを取材し、様々な困難に直面しながらも復興を目指し、逞しく生きる村人たちを捉えたドキュメンタリー。近代的設備のまったく無い風光明媚な山岳風景もそうだが、この村に住む人々の家族を想う心や郷土への温かい愛は本当に美しい。
★★★★☆

2022/03/13(Sun) 11:45


  2022年 観た映画 2月

『一度も撃ってません』(2020/日/阪本順治監督/石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり、他)
まったく冴えない小説家と伝説の殺し屋という2つの顔を持つ主人公。「夜は酒がつれてくる」なんて、R・チャンドラー風ハードボイルドの世界なんだが、これがまぁ、ニソッと笑ってしまうシーン満載で、蓮司さんはじめ、役者陣も一癖も二癖もある豪華な顔ぶれに拍手。
★★★☆☆

『囚われの美女』(1983/仏/アラン・ロブ=グリエ監督/ダニエル・メグイシュ、ガブリエル・ラズール、シリエル・クレール、他)
フランスで第2次大戦後に巻き起こった文学界のムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」の旗手といわれる作家アラン・ロブ=グリエが監督・脚本を手がけ、シュルレアリスム画家ルネ・マグリットの多数の絵画をモチーフに描いた不条理サスペンス。「去年マリエンバードで」「ヨーロッパ横断特急」に比べると格段につまらない。
★★☆☆☆

『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019/仏、ベルギー/レジス・ロワンサル監督/アレックス・ロウザー、ランヴェール・ウィルソン、マリア・レイチ、オルガ・キュリレンコ、パトリック・ボーショー、他)
ダンブラウンの「インフェルノ」出版時に内容流出を恐れた出版社が翻訳家を集めて地下室に監禁して翻訳させた・・・という「実話」が元になっているサスペンス映画。こういう作品はネタバレになるので余計な事は書きません。
★★★☆☆

『アウトサイダー』(1981/ハンガリー/タル・ベーラ監督/サボー・アンドラーシュ、フォドル・ヨラーン、ドンコー・イムレ、他)
この頃のハンガリーは比較的穏健なグヤーシュ共産主義の中にあり、資本の多くを西側に由来しており、文化的な面でもかなり影響をうけていたのだろう。社会に適合しようとするも出来ないミュージシャンの現実、葛藤、苦悩する姿を手持ちカメラで淡々と追う画が痛々しい。ちょうど80年前後、私も含め周りにも沢山こういう奴等は居たし、どんなに能天気、楽観的に生きていながらも、それぞれ現実とのギャップに葛藤していたなぁ。
ラスト、「ハンガリー狂詩曲」が耳に残る。タル・ベーラ初のカラー作品。
★★★☆☆

『名付けようのない踊り』(2021/犬童一心監督/田中泯、他)
時代に翻弄されず、妥協を許さず、己の感性を奥の奥まで研ぎ澄ませ、身ひとつ、心のままに生きる姿は美しい。
★★★★☆

『ともしび』(2017/仏、伊、ベルギー/アンドレア・ストゥコビッツ監督/シャーロット・ランプリング、アンドレ・ウィルム、ステファニー・バン・ビーブ、他)
少しでも目を離すと筋が判らなくなる程、極端に無駄を省いた削り取られた台詞と映像。圧倒的な存在感のS・ランプリング演ずるアンナを静かに追って移動するカメラ。彼女の冷たく人を射抜くブルーの眼差しにとてつもない孤立感とさもしさが映る。それは長年連れ添った夫の児童(息子も含め?)への虐待の罪も知っていて見て見ぬふりをして来た自責の念からの虚無感からではないのか。いろいろと考えさせられる作品。邦題の「ともしび」は違和感があるなぁ。
★★★★☆

2022/02/06(Sun) 16:24


  2022年 観た映画 1月

『男と女 人生最良の日々』(2019/仏/クロード・ルルーシュ監督/ジャン=ルイ・トランティニアン、アヌーク・エーメ、モニカ・ベルッチ、他)
1966年の『男と女』初鑑賞は小学生の頃。卒業文集の質問コーナーで”将来の夢は?”にカー・レーサーと答えているので、確実に影響を受けた作品である。あれから50年。惜しくも音楽のF・レイは亡くなったが、監督、スタッフはじめ A・エーメ(87歳)、J=R・トランティニアン(89歳)、そして当時の子役も同じ役柄を演じているという奇跡にまず驚きと喜びを隠せない。一人田舎に暮らす94歳の母の姿や、若き日の自分自身の姿やらが映像と重なり、正月早々恥ずかしくも号泣しながら観てしまった。こういう風に年齢を重ねて生きていきたいものである。素晴らしい映画!
★★★★★

『アナタハン』(1953/日/ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督/根岸明美、菅沼正、中山昭二、近藤宏、宮下昭三、他)
太平洋戦争末期に太平洋マリアナ諸島のアナタハン島で起こった「アナタハンの女王事件」をもとにした作品で、監督はディートリッヒを主演にした『モロッコ』『上海特急』『間諜X27』などのハリウッド作品で知られるJ・V・スタンバーグ。興味深い映画だったのだが、DVDの画質がとにかく悪いとのコメントを多数目にしていたので躊躇うこと数年が経ったある日、アマゾンプライムに出ていたので迷わず鑑賞。水面の揺れに合わせたオープニング・クレジットは面白いのだがローマ字で読みづらく、唐突な話の展開もいまいちで、劇中 役者の台詞にかぶさる監督自身の英語での説明もやたら気になった。残念ながら作品としては可も無く不可も無くといったところ。スタンバーグ監督も今作が遺作となった。桐野夏生の小説「東京島」は、このアナタハンの女王事件がモデルに創作されている。
★★☆☆☆

『ファンタスティック・プラネット』(1973/仏、チェコ/ルネ・ラルー、ローラン・トポール、監督、脚本/ステファン・ウル原作)
アニメーション作品として史上初めてカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞したSFアニメ。シュールだけどある種現実的。角度を変えて観ると実に恐ろしい。イラストレーターのR・トポールが4年の歳月をかけて描いた幻想的な原画を、さらに長い年月をかけて1枚1枚の切り絵をコマ撮りして制作した作品というだけでも監督、スタッフに恐れ入る。
私の大好きなW・ヘルツォーク監督『ノスフェラトゥ』での怪演も印象に残るR・トポールだが、ブラック・ユーモアたっぷりの気持ち悪〜いイラストも外せない。
★★★★☆

『村の秘密』(2015/オーストリア/アンドレアス・プロハスカ監督/ゲアハート・リーブマン、ジーモン・ハッツル、他)
とある閉鎖された鉱山で地元議員の娘の死をきっかけに、次々と隠しがたい秘密が明らかになっていくサスペンス映画。事件の解明にあたる地元出身の警官がもう良い人過ぎてついつい応援したくなる作品。余談だが、警官ハネスがシンガー・ソング・ピアノ・手品マンのS久保さんにソックリ!
★★★☆☆

『ジャズ・ロフト』(2015/米/サラ・フィシュコ監督/ユージン・スミス、セロニアス・モンク、ズート・シムズ、ホール・オーバートン、他)
1950年代半ば、マンハッタンのとあるロフトで気鋭のジャズミュージシャンたちが繰り広げた伝説のセッションを、写真家ユージン・スミスが記録した録音テープと写真をもとに構成したドキュメンタリー。E・スミスは心からこのロフトとここに集まる人間が心底好きだったんだなぁ。良い作品!
★★★★☆

2022/01/07(Fri) 15:01


  2021年 観た映画 12月

『ANNA/アナ』(2019/仏、米/リュック・ベッソン監督/ルーク・エヴァンス、キリアン・マーフィ、ヘレン・ミレン、アレクサンドル・ペトロフ、他)
スピード感あるアクションやニ転三転するスリリングな展開に、最後まで飽きることなく楽しめた。
★★★★☆

『ナイトクローラー』(2014/米/ダン・ギルロイ監督/ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ、リズ・アーメッド、アン・キューザック、他)
刺激的な映像を求めて駆けめぐる報道パパラッチの姿を通し、視聴率至上主義のテレビ業界の裏側を浮き彫りにしたサスペンススリラー。決して心持ち良い作品ではないが、J・ギレンホール演ずるルーを通じて報道側の人間と視聴者に対する強烈なアンチテーゼのようにも受け取れる。孤独なルーの狂気性が『タクシー・ドライバー』のトラビスと被った。
★★★☆☆

『グッド・ネイバー』(2016/米/カスラ・ファラハニ監督/ジェームズ・カーン、ローガン・ミラー、キーア・ギルクリスト、他)
心優しい爺さんに対して少年の悪行には腹が立つが、上記載の『ナイトクローラー』にもある種通ずるところがあり、いろいろと考えさせられる作品。J・カーンも良い役者ですなぁ。
★★★☆☆

2022/01/05(Wed) 12:34


  2021年 観た映画 11月

『リーディング・ハウス』(2017/イスラエル/ギラッド・エミリオ・シェンケル監督/ケレン・モル、アニア・バクスタイン、他)
男子禁制の秘密の文学クラブで繰り広げられる恐怖の儀式を、独特の感性で”真の愛とは?”と問いかけてくる作品。
一見判りずらいがカニバリズムにも通ずるカットがあったり、説明がない分 余白も多く、観る側で想像しながら一緒に参加しながら観ると面白いかも。
★★★☆☆

『アメリカン・ユートピア』(2020/米/スパイク・リー監督/デヴィッド・バーン、ジャクリーン・アセベド、グスタボ・ディ・ダルバ、他)
元トーキング・ヘッズのフロントマンで、グラミー賞受賞アーティストのデイヴィッド・バーンが、2018年に発表したアルバム「アメリカン・ユートピア」を原案に、2019年の秋からブロードウェイのショーとして再構成された舞台を映画化。音楽は勿論、ヴィジュアル、演出、構成、照明、カメラ、すべてが驚く程の素晴らしさ!加えて、今の世の中の様々な問題をストレートに批判、風刺を交えての問いかけも鋭い。
★★★★★

『殺人の疑惑』(2013/韓/クク・ドンスク監督/ソン・イェジン、キム・ガプス、他)
まず脚本がダメ。父が母を捨てた経緯、何の為、誰の為に子供を誘拐し殺害したのかが描かれていない。また時効が成立した時点での父親の自白も唐突過ぎる。ただ、娘役と父親役2人の演技は良かった。
★☆☆☆☆

『悪人伝』(2019/韓/イ・ウォンテ監督/マ・ドンスク、キム・ムヨル、キム・ソンギュ、他)
何者かに襲撃され重傷を負ったヤクザの極悪組長が、無差別連続殺人事件を追う暴力刑事と協力して犯人を追い詰めていく韓国版 北野武「アウトレイジ」t的雰囲気な作品。組長演ずる、マ・ドンスクは良い役者ですなぁ。面白かった!
★★★★☆

2021/11/07(Sun) 16:08


  2021年 観た映画 10月

「屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ」(2019/独、仏/ファティ・アキン監督/ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼル、カーチャ・シュトゥット、他)
1970年代のドイツ・ハンブルク。実在した5年間で4人の娼婦を殺害した連続殺人犯の日常を淡々と描いたサスペンスホラー。主人公は「ハウス・ジャック・ビルト」のジャックとは違い芸術論も美意識も皆無のソシオパスなんだろうなぁ。ここまでに至った過去の出来事も一切描かず、ただひたすらにうらぶれた日常と衝動的に殺人を繰り返す陰惨で醜いルーティーンを淡々と映す作品も珍しい。何度も観ようとは思わぬが印象に残る映画。
★★★☆☆

「美しき暗闇の中で」(2017/露/ダイアナ・ガリムジヤノワ監督/ラシード・アイトゥガノフ、コリヤ・ノイケルンイリナ・ゲボルギャンマリーナ、他)
物語はまったく面白くない。訳ありげな哲学的な台詞と、現在と過去とが交差する展開に眠気を誘われた。ただ、モノクロならではの光と影のコントラスト、どのシーンを切り取っても絵になる映像はとにかく美しい。
★★☆☆☆

「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(2020/英、米/キャリー・ジョージ・フクナガ監督/ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ、アナ・デ・アルマス、他)
普段こういったアクション娯楽作を映画館で観ることはまず無いのだが、本作はコロナ禍の影響で1年半以上も延期となったこともあり、とても楽しみに新百合ヶ丘のイオンシネマにて鑑賞。勿論、ストーリーはじめ、ド派手なカー・チェイスにアクション、ボンド・ガールの登場に加え中盤からのクライム・サスペンス感、どれを取っても最高に楽しめた。そして、今まで不死身だったボンドがD・クレイグになってからの弱さも見せる人間味溢れる姿に共感。(ショーン・コネリーのボンドも好きだが)007シリーズで涙したのは初めてだった。もう一度観たい。
★★★★★

「村人」(2015/オーストリア/バーバラ・エーダー監督/アンドレアス・ルスト、フランツィスカ・ワイズ、マリア・アーバン、他)
犯罪捜査官のワーシッツは頭部に重傷を負い、ブルゲンラントの村へ帰郷するのだが、それをあまり歓迎しない村人を巡るじめじめしたクライム・サスペンス。
★★★☆☆

「アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン」(2018/米/シドニー・ポラック監督/アレサ・フランクリン、ジェームズ・クリーブランド、コーネル・デュプリー、チャック・レイニー、他)
1972年1月13日、14日、ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプテスト教会で行われたライブを収録したドキュメンタリー。高名な牧師でありシンガーの父と優れたピアニスト、シンガーの母の娘として生まれ、音楽的な才能にも恵まれ育ったアレサの歌唱力は勿論、聖歌隊とバンドと観客が一体となってゴスペルを体現するグルーヴ感は圧巻。12歳で子供を産むなど、波乱の人生を歩んだ彼女の歌は味わい深い。
2日目の会場最後方にはスタンディングでノリの良いM・ジャガーとC・ワッツの姿が。「メインストリートのならず者」のレコーディングでロスに滞在していたのだと思う。ミックはいつの間にかちゃっかり前方の椅子に座って聴いていた。(笑)
★★★☆☆

「BILLIE ビリー」(2019/英/ジェームズ・エルスキン監督/ビリー・ホリデイ、リンダ・リップナック・キュール、カウント・ベイシー、ルイ・アームストロング、他)
不世出のブルーズ(あえて言う)・シンガーであり、謎に包まれた部分の多いビリー・ホリデイのドキュメンタリー。不可解な死を遂げたジャーナリストのリンダ・リップナック・キュールが、1960年代に10年間かけて関係者にインタビューを重ねていた膨大な録音テープが発見されたのを元に構成されている。
ビリーの貴重な映像や知られざる赤裸々な素顔の部分も明らかになったり、多分に観る価値はあった。ただ、N・シモンと並んで大好きな歌手なので客観的に語るのはかなり難しいものがある。人種差別と闘い、波乱に満ちた人生を生きた彼女の歌はやけに心に沁み入る。
★★★★☆

2021/10/10(Sun) 13:40


  2021年 観た映画 9月

「ボルベール 帰郷」(2006/スペイン/ペドロ・アルモドバル監督/ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ヨアナ・コボ、他)
「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」のP・アルモドバル監督が、故郷ラ・マンチャを舞台に逞しい女性たちの生きざまを郷愁と共に描き出したヒューマン・ドラマ。とても複雑で重くなりがちな話だが、スペイン人の血なのか風土の気質なのか判らぬが、陰湿に陥らずとても気持ちよく楽しめた。脚本も良く、鬼才アルモドバル監督、こういうのを描かせると流石に上手いですなぁ。役者の技量も素晴らしい。アクの強いP・クルスもソフィア・ローレンを彷彿させてとても素敵。そうそう、ほとんど男性の登場が少ない映画というのも珍しい。
★★★★☆

「ホーリー・モーターズ」(2012/仏、独/レオス・カラックス監督/ドニ・ラバン、エディット・スコブ、他)
「ポーラX」以来の長編は12年振りという本作。批評家や世界中で絶賛されているようだが、何だか私にはさっぱり解らず。。突然流れる”ゴジラ”の音楽に意表を突かれたり。しかし、観ておいて決して損はない作品かな。そういう点では面白いと言えよう。
★★☆☆☆

「ラスト・ディール 美術商と名を失くした肖像」(2018/フィンランド/クラウス・ハロ監督/ヘイッキ・ノウシアイネン、ピヨロ・ロネン、アモス・ブロテルス、他)
商才は無いが目利きの老美術商が”運命の絵”と出会ったことから始まる家族との確執と愛を描いたフィンランド発のヒューマンドラマ。北欧の湿った雰囲気が妙に心地よく、静かだけどジワジワと心に沁み入る素敵な作品。
★★★★☆

「サマー・オブ・ソウル」(2021/米/アミール・“クエストラブ”・トンプソン監督/B・B・キング、S・ワンダー、N・シモン、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン、他)
ウッドストックが開催された1969年の夏、160キロ離れた場所で行われたもうひとつの歴史的音楽フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」にスポットを当てた音楽ドキュメンタリー。
改めて音楽の持つ力強さに感動、感激、感謝!そしてニグロからBLACKへと、時代を担うアイコン達が次から次へと登場し渾身のパフォーマンスを披露する姿に底知れぬパワーを感じた。50年もの間、埋もれていたフィルムが鮮明に甦り、今、こうして観られた喜びと共に、アメリカにおける黒人差別への根深さが哀しい。
★★★★☆

「サイの季節」(2012/イラク、トルコ/バフマン・ゴバディ監督/モニカ・ベルッチ、ユルマズ・エルドガン、ベヘローズ・ボスギー、他)
1979年、イラン・イスラム革命の混乱に巻き込まれ投獄された詩人とその妻。30年後、釈放され自由の身となった夫は先に釈放された妻の行方を探し見つけ出すのだが。。。幸福に見えた人生も革命という歴史に翻弄され、やがて狂いだす歯車。観ていて辛くなる作品だけど、ロケーションも映像も、アップ時の顔に刻まれた深い皺や息づかい、静かに灯る蝋燭の火、どれもが美しく間違いなく忘れられぬ1本となるであろう作品。ところどころにメタファーのように挿入される映像も印象的。どこかテオ・アンゲロプロスを彷彿させた。
★★★★★

2021/09/10(Fri) 13:07


  2021年 観た映画 8月

「ミナリ」(2020/米/リー。アイザック・チョン監督/スティーヴン・ユァン、ハン・イェリ、ヨン・ヨジョン、ウィル・パットン、他)
1980年代のアメリカ南部に、成功を夢見て韓国出身の移民一家が理不尽な運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を描いた人間ドラマ。題名の”ミナリ”とは、香味野菜としても知られるセリ(芹)のこと。厳しい環境の中にも逞しく育ち、2度目の収穫が最も美味しいことからも次世代の幸福の為に強かに生きるこの家族と重なった。

「愛のコリ−ダ(修復版)」(1976/日、仏/大島渚監督/松田瑛子、藤竜也、中島葵、殿山泰司、他)
ご存知のとおり、かの有名な「阿部定事件」を大島渚監督が描いた話題作。 本作の写真や脚本をまとめた単行本は「わいせつ文書」として摘発され、昭和57年の無罪確定まで物議を醸すことになった。
作品としての賛否両論は当然であろう。定の内面をもう少し掘り下げて描いてほしかった気もするが、役者陣の皆さんも体を張った演技で大変面白かった。藤竜也演ずる吉蔵の「かまやぁしね〜よ」って言う台詞が耳に残る。

「ヘカテ」(1982/仏、スイス/ダニエル・シュミット監督/ベルナール・ジロドー、ローレン・ハットン、他)
第二次大戦中フランスの植民地であった北アフリカの砂漠の街に外交官としてやって来た男が、ある女に出会った事から愛憎に溺れ狂っていく物語。さすがD・シュミット監督が描く映像は耽美的で美しく、衣装も凝っている。
しかし、「愛のコリーダ」を観た後だけでは無いにしろ、主人公の男女には艶っぽさも内から湧き出る情念の様なものも感じられず、全ての行動も薄っぺらく思ってしまった。どうせならもっとドロドロを描いてほしかったなぁ。

「インビジブル 暗殺の旋律を弾く女」(2018/英、米/アンソニー・バーン監督/ナタリー・ドーマー、エド・スクレイン、ヤン・ベイブート、他)
巨大組織に狙われる盲目のピアニストの女性を巡って繰り広げられる事件と謎を描いたサスペンススリラー。主人公自身の背景が少し判りづらいのが難点だが、まぁまぁ楽しめた。

「復讐のセクレタリー」(2015/仏、ベルギー、ルクセンベルグ/クリストフ・アリ、ニコラ・ボニラウリ監督/ナタリー・バイ、マリック・ジディ、ヨハン・レイセン、他)
事故で息子を亡くした母親が9年の時を経て復讐に乗り出す姿を、「わたしはロランス」などのベテラン女優ナタリー・バイ主演で描いたサスペンススリラー。怖いけど哀しいストーリー。

2021/09/05(Sun) 20:52


  2021年 観た映画 7月

「ロフト〜完全なる嘘」(2010/蘭/アントワネッテ・ベウメル監督/バリー・アトゥスマ、フェジャ・ファン・フェット、イェルーン・ファン・コーニングスブリュッヘ、他)
まぁ、何と言うか、下世話なサスペンス映画。

「記憶にございません」(2021/日/三谷幸喜監督/中井貴一、ディーン・フジオカ、小池栄子、草刈正雄、他)
可も無く不可も無く。どちらかと言うとつまらない。以上。

「ライト・ハウス」(2019/米、ブラジル/ロバート・エガース監督/ウィレム・デフォー、ロバート・パティンソン、カモメ)
19世紀末ニューイングランド沖の孤島にやって来た2人の灯台守が外界から遮断され、徐々に狂気と幻想に侵されていく、人間の極限状態を恐ろしくも美しいスクエア・サイズのモノクロ映像で描いた恐っろしい作品。
途中まで今いち話に付いて行けず置いてけぼりを喰う感が否めなかったのだが、ギリシャ神話のプロメテウスとプロテウスに2人を置き換えるとよく理解が出来、結構楽しめた。とにかくコントラストの強い映像はとても美しく、2人の役者の演技も素晴らしい。狂気とエロスは隣り合わせですなぁ。

「ジョーカー」(2019/米/トッド・フィリップス監督/ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ、他)
いろいろと考えさせられる作品です。再鑑賞。

「タクシー・ドライバー」(1976/米/マーティン・スコセッシ監督/ロバート・デ・ニーロ、ハーヴェイ・カイテル、ジョディー・フォスター、シビル・シェパード、他)
20歳の頃、文化服装学院に通っていた友人に主人公トラヴィスが着ていたのと同じタンカース・ジャケットを作ってもらった記憶が今も残る。少なくとも20回は観ている作品。

2021/06/30(Wed) 20:01


  2021年 観た映画 6月

「火口の二人」(2019/日/荒井晴彦監督、脚本/柄本祐、瀧本公美、他)
直木賞作家、白石一文が男と女の極限の愛を描いた小説「火口のふたり」を「赫い髪の女」「もどり川」などの名脚本家、荒井晴彦が手がけた監督第3作目作品。いやぁ〜、隅から隅まで荒井ワールド全開。何だか ただただダラダラ感が続くのだが、主演二人の台詞と芝居がとても自然で、うん、抑えきれない衝動ってあるよなぁ〜って思ってしまった。

「グリーン・ブック」(2018/米/ピーター・ファレリー監督/ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャリ・アリ、リンダ・カーデリニ、他)
人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続ける中で友情を深めていく実話を基にしたロード・ムービー。
まず、今だに人種差別が公けに蔓延るこの国で、アカデミー作品賞を受賞した史実に乾杯!だからと言ってすぐに問題が解決できる訳でもないのだが、片寄ったヘイト発言なんかよりも説得力は充分である。V・モーテンセン、「イースタン・プロミス」また観たくなった。ラスト、奥さん素敵ですな!

「本当の目的」(2015/ダリアン・ペヨフスキ監督/北マケドニア、コソボ/イレーネ・リスティッチ、カムカ・トチノフスキ、他)
地味で淡々として静かな作品なんだけれど、この独特の空気感がたまりません。悲しいかなこの辺りの地域にもヘイトは色濃く残っているんだなぁ。

「ライ麦畑の反逆児 独りぼっちのサリンジャー」(2017/米/ダニー・ストロング監督/ニコラス・ホルト、ケビン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、他)
「ライ麦畑でつかまえて」の著者J・D・サリンジャーの知られざる半生を描いた伝記ドラマ。この書物に至っては、あまりにも有名で少なからず一度は読んでいる作品ではあるが、サリンジャー自身の事はあまり知らなかったので興味深く観られた。

「ファーザー」(2020/英、仏/フローリアン・ゼリール監督/アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、イモージェン・プーツ、オリヴィア・ウィリアムス、他)
A・ホプキンスが見事な名演でアカデミー賞主演男優賞に輝いた、重度の認知症を患った老いた父と娘の葛藤を描いた重厚で怖くて感動の物語。これは決して絵空事ではなく、誰もが経験するかも知れぬドキュメンタリーでもある。

2021/06/16(Wed) 22:28


  2021年 観た映画 5月

「レッド・エージェント 愛の亡命」(2016/英、カナダ/シャミム・サリフ監督/レベッカ・ファーガソン、チャールズ・ダンス、他)
米ソ冷戦を背景に、亡命により離れ離れになった夫婦の運命を描いたラブサスペンス。過去と現在が交差しながらの進行に最初少し戸惑ったが、極めて解りやすい物語だったので単純に楽しめた。R・ファーガソン、好きな女優さんです。

「ミラノカリプロ 9」(1972/伊/フェルナンド・ディ・レオ監督/ガストーネ・モスキン、バーバラ・ブーシェ、マイオ・アドルフ、他)
70年前後イタリアのB級西部劇やギャング映画に多く観られる、男の美学とでも言うか、権力や組織の圧力にも決して屈しない己の力だけを信じて生きてゆく一匹狼の哀感を色濃く表現した作品のひとつ。
特にこのF・ディ・レオはS・レオーネの様な決して派手さも凝った演出も無いのだが好きな監督の一人。
「黄金の七人」「ゴッドファーザーPARTU」「暗殺の森」のG・モスキンもいい味を出しているが、今作の静かなギャング役も実に素晴らしい。

「ヨーロッパ横断特急」(1966/仏、ベルギー/アラン・ロブ=グリエ監督/ジャン・ルイ・トランティニアン、マリー・フランス・ロジェ、クリスチャン・バルビエール、他)
18年秋、不覚にも日本初公開時に見過ごしてしまっていたこの映画がアマゾン・プライムで公開されていたのでビックリ!早速鑑賞。う〜ん、メタ、メタ、メタファーで幾重にも重ねて構築された内容に正直付いて行けず。。。
監督自身も出演しているが、実験的映画として”ヨーロピアン・アヴァンギャルドの最重要作品”と評されたとおり、パリからアントワープへ麻薬を運ぶトランティニアンが繰り広げる波乱万丈な道中をただ楽しんで観ればそれなりに面白いかも。内容とは別にクラフトワーク「ヨーロッパ横断特急」が無償に聴きたくなった。↓

「シャンハイ」(2010/米、中/ミカエル・ハフストローム監督/ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、渡辺謙、他)
1941年の太平洋戦争前夜の上海を舞台に、中国、アメリカ、日本の巨大な陰謀と諜報機関を巡る攻防、国境を越えた男女の悲恋を描く。俳優陣は豪華ではあるが、ノワールなのかサスペンスなのか、はたまた禁断のラブ・ロマンスなのかある意味曖昧で作品としてまったく印象に残らず。残念!

「キャロル」(2015/米、英、仏/トッド・ヘインズ監督/ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、他)
1950年代のニューヨークを舞台に、「ブルー・ジャスミン」のK・ブランシェットと「ドラゴン・タトゥーの女」のR・マーニの女性同士の美しい恋を描いた恋愛ドラマ。原作は「見知らぬ乗客」「太陽がいっぱい」「アメリカの友人」「リプリー」などで有名なパトリシア・ハイスミス。同性愛などを描くのが実に上手い作家ですなぁ。
ストーリーは単純なのだが、このK・ブランシェットとR・マーラーの圧巻の演技力。特にラストシーンのケイトの大女優たる妖艶な深く静かな表情に、はい、やられました。またオープニングとラスト、同じシチュエーションだけど視点を変えた粋なキャメラワークや当然ながら当時の時代設定を考慮した衣装にメイク、車、家具も素敵。また観たくなる素晴らしい作品!

2021/05/09(Sun) 10:18


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