「真夏の夜のジャズ」(1959/米/バート・スターン、アラム・アヴァキアン/ルイ・アームストロング、セロニアス・モンク、アニタ・オデイ、他) その昔ビデオでは観ていたが、映画館での鑑賞は初。勿論それなりの迫力は有ったし珍しいミュージシャンの貴重な映像も観られたが、ジャズのドキュメンタリーとしては程遠く、セレブが集う海岸沿いのお洒落な避暑地での夏フェスとして観れば楽しめる作品であろう作品。
「ハウス・ジャック・ビルト」(2018/デンマーク、仏、独/ラース・フォン・トリアー/マット・ディロン、ブルーノ・ガンツ、他) 初めて観た彼の監督作品は1984年の「エレメント・オブ・クライム」。何とも言えぬ独特の救いのない作品ではあったが、妙に惹かれる部分もあり。その後「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「メランコリア」なども観てはいるが、確かに何れも正直心から共感できる作品ではない。今回の「ハウス・・・」も狂気に満ちた殺人鬼の不快なモノローグと共に5つの出来事が描かれているのだが、目を背けたくなるシーンもあれば強迫性障害のせいで何度も殺人現場に舞い戻って来たり、独自の突き抜けた芸術論を語らせたりと、殺人鬼の心の奥底に眠る深層心理を徹底的に描く手法にはしてやられたものである。私見だが、ブルーノ・ガンツ演ずるヴァージという謎の男はまさにジャックの心に宿るもう一人の自分であろう。面白かった。
「聖なる犯罪者」(2019/ポーランド、仏/ヤン・コマサ/バルトシュ・ビィエレニア、他) 聖と俗が共存し、真の救いとは?と考えさせられる作品。クリストファー・ウォーケン似の主人公の澄んだ眼差しと美しい映像は一見の価値はあるが、もう少しテンポ感を出してストーリー展開しても良かったのではないかとも思った。 竹下景子が初マドンナ役を務めた「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」で寅次郎が、住職である彼女の父に変わって法事を勤める抱腹絶倒シーンや笑いあり泣き有りの第32作とは勿論比べられはしないのだが、過去を偽り聖職者として生きる今作は微塵の笑いもない重い作品だった。
「かくも長き不在」(1960/アンリ・コルビ/仏/アリダ・ヴァリ、ジョルジュ・ウィルソン、他) 脚本が「二十四時間の情事」「雨のしのび逢い」そして彼女の自伝的小説でもある「愛人(ラマン)」のマルグリッド・デュラス。監督は上記の「二十四時間の情事」「去年マリエンバートで」などアラン・レネ作品他、寺山さんの「上海異人娼館/チャイナ・ドール」など編集技師で名高いアンリ・コルビ。コラ・ヴォケールの唄う「三つの小さな音符」を耳にする度、悲しくて切なくて泣いてしまうと判っているのだが観てしまう好きな映画。
「サウンド・オブ・サイレンス」(2001/米/ゲイリー・フレダー/マイケル・ダグラス、ブリタニー・マーフィ、ショーン・ビーン、他) 全米探偵作家協会賞を2度受賞した作家アンドリュー・クラヴァンの「秘密の友人」を元に、精神科医の主人公家族と悲痛な過去を持つ多重人格を演じている少女をメインとしたサスペンス映画。 原作はきっと面白いのだろうが読んでおらず比較出来ないが、脚本はじめ、展開やディテールがあまりにもお粗末な作りだったのが残念。余談だが、娘役のスカイ・マッコール・バートシアクは21歳、事件の鍵を握る少女役のブリタニー・マーフィは32歳でそれぞれ亡くなっているのは哀しい。
「ロスト・ボディ」(2012/スペイン/オスカルファウラ/フォセ・コロラド、ホワン・パブロ・シューク、他) 消えた死体にまつわる人々をめぐる謎が謎を呼ぶスペイン発サスペンス映画。監督・脚本は「ロスト・アイズ」の脚本家オリカル・パウロ。登場人物の細部にわたる内面描写と伏線がもう少しあればなぁなんて観ていたのだが、その謎はラスト間近に明かされた。う〜ん、これは完璧に騙されましたなぁ。面白かった。詳細を知らずの鑑賞をお薦めです。
「セールスマン」(2016/イラン、仏/アスガー・ファルハディー/シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリシュスティ、他) ハリウッド映画好きな方には退屈な映画と言えよう。性暴力を題材にした作品なのだが、イスラム教国家イランならではのそういった描写は一切描かず、被害女性ですら事件を恥とし公にも出来ぬ立場の弱さ、生活の貧困さを如実に描いている。いや、描きたくても描けないのであろう。だからか、全篇通して何だかしがらみに包まれた重〜い空気感が漂う。劇中A・ミラーの「セールスマンの死」が暗喩的に演じられるが家族の不条理をリンクさせたかったのかなぁ。 約90分の尺で良かったかも。
「ゴーン・ガール」(2014/米/デヴィッド・フィンチャー/ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、他) これは最高楽しめた!デヴィッド・フィンチャー、ハラハラ、ウェ〜ッ!?が上手い!脚本も演出も良く、幼少の時から厳格な両親に育てられ、優等生を演じ続けて来た彼女自身が唯一心を許した夫の裏切りに対する用意周到な復讐劇。何と言っても美しくて頭が良く、そして冷酷な役はロザムンド・パイクにぴったり。 見応え充分! |