「ボルベール 帰郷」(2006/スペイン/ペドロ・アルモドバル監督/ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ヨアナ・コボ、他) 「オール・アバウト・マイ・マザー」「トーク・トゥ・ハー」のP・アルモドバル監督が、故郷ラ・マンチャを舞台に逞しい女性たちの生きざまを郷愁と共に描き出したヒューマン・ドラマ。とても複雑で重くなりがちな話だが、スペイン人の血なのか風土の気質なのか判らぬが、陰湿に陥らずとても気持ちよく楽しめた。脚本も良く、鬼才アルモドバル監督、こういうのを描かせると流石に上手いですなぁ。役者の技量も素晴らしい。アクの強いP・クルスもソフィア・ローレンを彷彿させてとても素敵。そうそう、ほとんど男性の登場が少ない映画というのも珍しい。 ★★★★☆
「ホーリー・モーターズ」(2012/仏、独/レオス・カラックス監督/ドニ・ラバン、エディット・スコブ、他) 「ポーラX」以来の長編は12年振りという本作。批評家や世界中で絶賛されているようだが、何だか私にはさっぱり解らず。。突然流れる”ゴジラ”の音楽に意表を突かれたり。しかし、観ておいて決して損はない作品かな。そういう点では面白いと言えよう。 ★★☆☆☆
「ラスト・ディール 美術商と名を失くした肖像」(2018/フィンランド/クラウス・ハロ監督/ヘイッキ・ノウシアイネン、ピヨロ・ロネン、アモス・ブロテルス、他) 商才は無いが目利きの老美術商が”運命の絵”と出会ったことから始まる家族との確執と愛を描いたフィンランド発のヒューマンドラマ。北欧の湿った雰囲気が妙に心地よく、静かだけどジワジワと心に沁み入る素敵な作品。 ★★★★☆
「サマー・オブ・ソウル」(2021/米/アミール・“クエストラブ”・トンプソン監督/B・B・キング、S・ワンダー、N・シモン、スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン、他) ウッドストックが開催された1969年の夏、160キロ離れた場所で行われたもうひとつの歴史的音楽フェスティバル「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」にスポットを当てた音楽ドキュメンタリー。 改めて音楽の持つ力強さに感動、感激、感謝!そしてニグロからBLACKへと、時代を担うアイコン達が次から次へと登場し渾身のパフォーマンスを披露する姿に底知れぬパワーを感じた。50年もの間、埋もれていたフィルムが鮮明に甦り、今、こうして観られた喜びと共に、アメリカにおける黒人差別への根深さが哀しい。 ★★★★☆
「サイの季節」(2012/イラク、トルコ/バフマン・ゴバディ監督/モニカ・ベルッチ、ユルマズ・エルドガン、ベヘローズ・ボスギー、他) 1979年、イラン・イスラム革命の混乱に巻き込まれ投獄された詩人とその妻。30年後、釈放され自由の身となった夫は先に釈放された妻の行方を探し見つけ出すのだが。。。幸福に見えた人生も革命という歴史に翻弄され、やがて狂いだす歯車。観ていて辛くなる作品だけど、ロケーションも映像も、アップ時の顔に刻まれた深い皺や息づかい、静かに灯る蝋燭の火、どれもが美しく間違いなく忘れられぬ1本となるであろう作品。ところどころにメタファーのように挿入される映像も印象的。どこかテオ・アンゲロプロスを彷彿させた。 ★★★★★ |