『放浪記』(1962/日/成瀬巳喜男/高峰秀子、田中絹代、加藤大介、伊藤雄之助、草笛光子、他) 「貧すれば鈍する」という諺もあるが、芙美子の場合その複雑な生い立ちや家庭環境、加えて失恋の痛手を、なりふりかまわぬ文学の鬼と化し才能を発揮させた稀な才女である。高峰秀子いい役者ですね。実際、彼女も複雑な家庭環境に翻弄され子役時代から生きていたが、ご自身と共通する部分もあったのでは。他の役者陣もみないい味を出している。「浮雲」がまた観たくなった。再鑑賞。 ★★★★☆
『乱れる』(1964/日/成瀬己喜男/高峰秀子、加山雄三、三益愛子、草笛光子、白川由美、他) 変わりゆく時代の中で、たくましく店を切り盛りし、ひたむきに生きる戦争未亡人の礼子。実生活で夫の松山善三が余すことなく高峰の魅力を表現した脚本。揺れ動く女心を細かく丁寧に描く成瀬己喜男の演出も見事。う〜ん、時代に翻弄された女の悲劇ですなぁ。再鑑賞。 ★★★★☆
『コックと泥棒、その妻と愛人』(1989/英、仏/ピーター・グリーナウェイ/リシャール・ボーランジェ、マイケル・ガンボン、ヘレン・ミレン、アラン・ハワード、ティム・ロス、他) 大人の人間の持つ醜い欲望を描いた、これまた内容はかなりグロテスクな賛否両論のハッキリ分かれる作品ですな。幼少期から画家を目指し美術学校に通ったというグリーナウェイだけあって、その美しい映像美には感心しかり。ヘレン・ミレンも体当たりの演技でよい。ただ、食事をしながら観る映画ではありません。再鑑賞。 ★★★☆☆
『ハンガリー連続殺人鬼』(2016/ハンガリー/アールパード・ショプシッツ/カーロイ・ハイディク、カーボル・ヤースベレーニー、ジョント・アンガー、他) 1957年〜67年にかけてハンガリーを震撼させた実際に起きた連続殺人事件を元に映画化。当時のハンガリーはまともに街灯もなく、暗い夜道や川沿いを女性一人で歩くのは危険極まりない。そこにつけ込む歪んだ人格の殺人鬼も許せないが、社会主義国における情報の隠蔽(近年は日本も怪しいが)や、自己保身に走る司法官僚の姿も情けない。また、レーティとボグナールがあまりにも似すぎていて初めは双子!?と思ってしまった。全体に画面も暗く冷たい空気感が漂う独特の作品。 ★★★★☆
『ビー・デビル』(2010/韓/チャン・チョルス/ソ・ヨンヒ、チ・ソンウォン、パク・チョンハク、他) 何とも救い難い、閉鎖的な男尊女卑の孤島が舞台の悲惨な復讐劇なのだが、数十年に亘っての虐げと屈辱に爆発する主人公の気持ちも解る。勿論、手を掛けるのは良くないが、見て見ぬ振りは一番悪かろう。ラスト、女性の横たわった被写体が島の外形に重ね合わせた映像は面白かった。 ★★★☆☆ |